( 150035 )  2024/03/17 13:19:40  
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正和君の写真に手を合わせる母の万九風さん(11日、東京都内で) 

 

 川崎市の施設「中央療育センター」で2016年、知的障害があり短期入所中だった清水正和君(当時9歳)が職員に添い寝されていて死亡した事故を巡り、運営する横浜市の社会福祉法人「同愛会」と職員に計約1億2800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、横浜地裁川崎支部であった。桜井佐英裁判長は「窒息死に至る蓋然性が高いと予見し得た」と指摘。法人などの過失を認め、計約2690万円の支払いを命じた。(松岡妙佳) 

 

【図】判決はどういう見解を示したか 

 

 判決などによると、夜勤の女性職員は同年12月26日未明、自らを傷つける行為をしていた正和君を布団の上から押さえつける状態で寝かしつけ、自分も寝入った。午前6時頃、息をしていないと気づいたが、正和君は搬送先の病院で死亡が確認された。 

 

 両親ら原告側は、職員の身体拘束により窒息死したと主張。被告側は、窒息死の予見は不可能だったと主張していた。判決は、厚生労働省の「障害者虐待の防止と対応の手引き」に基づき争点を整理=表=。行動制限は不法行為に当たらないとした一方、体格で勝る職員が寝入ってしまえば顔面が敷布団で塞がれる予見はあったと認め、同法人も使用者責任があると認めた。 

 

 だが川崎市の児童福祉審議会は21年11月、事故発生時の添い寝は身体拘束で虐待にあたると認定している。判決を不服として、原告側は近く控訴する方針だ。取材に対し、同法人は「命を支えることができなかった痛恨の思いは消えることはない」、川崎市は「当事者ではないのでコメントしない」と回答した。 

 

 障害者福祉に詳しい日本社会事業大学の曽根直樹教授は「自傷行為には要因があり、それを突き止めて対応するのが基本。身体拘束以外の方法を検討し尽くしたのか疑問だ」と指摘。「市の指定管理施設で起きた事故は市に責任がないとは言えない。再発防止策を真剣に話し合うべきだ」とした。 

 

 「逃げないでマサに対してやったことを説明してほしい」。正和君の母、万九風さん(52)は判決を受けて川崎市役所で開いた記者会見で涙を浮かべ、声を詰まらせた。 

 

 

 万さんは中国で正和君を出産後、来日したが離婚。正和君は発語は難しいが活発に動き回る子で、会えたときには一緒にボール遊びをしたり、「マッマ」と呼んでくれたりしたという。障害を抱えながらも「マサのペースでできることが増えている」と感じ、成長が楽しみだった。 

 

 正和君の兄の村上力さん(29)は「責任を取って謝罪してほしい」と口調を強めた。原告側弁護団によると、職員からの謝罪はなく、法廷にも姿を見せていないという。 

 

 

 
 

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