( 150305 )  2024/03/18 12:47:41  
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 2010年以降、半グレが社会問題となった。当時の半グレは、暴走族のOBであり、比較的若い構成員によって組織されていた。「市川海老蔵暴行事件」や「フラワー事件」などを起こしたことで有名である。 

 

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 この時、首都圏で活動していた半グレは、2013年に「準暴力団」と警察庁に位置づけられた。それは、関東連合、打越スペクター、大田連合、怒羅権の4グループであり、何れも暴走族のOBであった。 

 

 筆者は、2003年から裏社会の学術的調査に従事していたことから、こうした半グレから準暴力団に変質していく過程をリアルに見てきた。本稿では、2023年7月に、当局によって使用されるようになったトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の実態を解説する。 

 

 トクリュウというと、ルフィ事件を想起し、特殊詐欺や強盗といった闇バイトの元締めのような存在と思われている。 

 

 確かに、トクリュウは、闇バイトを応募し、各種犯罪を行っている反社会的集団を指している。他にも闇金、取り立て、悪質ホスト経営、各種犯罪の道具屋、薬物密売など、様々な犯罪に手を染めている。 

 

 2023年7月、警察は、こうした暴力団以外の半グレ等が組織する犯罪グループを「匿名犯罪グループ」と位置付け、警察の垣根を越えた活動により取締りを強化した。 

 

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 実は、これまで、半グレも反社会的集団も定義というものが為されていなかった。 

 

 安倍晋三内閣では、「反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁」において、「『反社会的勢力』については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難であると考えている」と答弁している(内閣衆質二〇〇第一一二号)。 

 

 反社会的集団に関しては、平成19年6月19日に、「犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ」において、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針=政府指針」を示し、反社会的勢力との関係遮断を推進している。 

 

 しかし、この政府指針は暴力団を想定しており、匿名流動型犯罪グループまで想定したものではなかった。暴力団は、高齢化に加えて、政府指針で排除対象とされた。加えて、2010年以降に全国で施行された暴力団排除条例により資金獲得活動が制約されたことから、衰退に拍車が掛かった。 

 

 暴力団の衰退を機に、勢力を増したのが半グレである。そして、現在では、暴力団が半グレ化しているのだ。 

 

 

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 半グレや準暴力団は警察白書の中で詳しく解説されており、次のように位置づけられている。 

 

 警察の準暴力団の解説をみると、「暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行している例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。 

 

 こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付けている」とある。 

 

 準暴力団は、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が準暴力団と共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような準暴力団の中には、暴力団と準暴力団との結節点の役割を果たす者が存在するとみられる(『令和2年版警察白書』トピックスIII準暴力団の動向と警察の取組)。 

 

 この前半部分「暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行している例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている」のは、半グレのことである。 

 

 半グレ集団であり、かつ「こうした集団の中で暴力団と持ちつ持たれつの関係」にあり、「違法に獲得した資金が暴力団に流れている」場合、「準暴力団」と位置付けられる。 

 

 つまり、流動的なメンバーが、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行し、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を行うのが「半グレ」であり、資金の一部を暴力団に上納したり、暴力団と共謀して犯罪を行うなど、暴力団と密接な関係が認められるものは「準暴力団」である。 

 

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 令和5年7月、警察庁は警察白書の中でトクリュウの位置づけにつき次のように述べている。 

 

 暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の事件を起こしている例がみられるところ、こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、暴力団等の犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付け、取締りの強化等に努めてきた。 

 

 こうした中、近年、準暴力団として位置付けられる集団以外に、SNSや求人サイト等を利用して実行犯を募集する手口により特殊詐欺等を広域的に敢行するなどの集団もみられ、治安対策上の脅威となっている。 

 

 これらの集団は、SNSを通じるなどした緩やかな結び付きで離合集散を繰り返すなど、そのつながりが流動的であり、また、匿名性の高い通信手段等を活用しながら役割を細分化したり、特殊詐欺や強盗等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を基に、更なる違法活動や風俗営業等の事業活動に進出したりするなど、その活動実態を匿名化・秘匿化する状況がみられる。こうした情勢を踏まえ、警察では、準暴力団を含むこうした集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と位置付け、実態解明を進めている。 

 

 また、匿名・流動型犯罪グループの中には、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が匿名・流動型犯罪グループと共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような集団の中には、暴力団と匿名・流動型犯罪グループとの結節点の役割を果たす者が存在するとみられる。 

 

 一読すると、トクリュウは、半グレや準暴力団以外にも、特殊詐欺等を広域的に敢行する集団、資金の一部を暴力団に上納したり、共謀して犯罪を行うなど、暴力団と関係を持つ犯罪集団をも含む位置づけとなっている。 

 

 後編記事『新しい犯罪者集団「トクリュウ」を「オール警察」が本格的に取り締まり始めた…「やりたい放題」の犯罪のツケ』ヘ続く。 

 

廣末 登(ノンフィクション作家) 

 

 

 
 

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