( 150365 ) 2024/03/18 13:55:22 0 00 高級寿司の特徴は?
寿司は今やバリエーションも豊かになりました。1食何万円もする高級な寿司もあれば、1食1000円以内で済んでしまう回転寿司のような安い寿司もあります。
【画像】おいしそう! 高級寿司のネタを見る(全5枚)
同じ寿司であるのに、なぜここまで差が生じてしまうのでしょうか。高級寿司と回転寿司は何が違うのかを話しながら、寿司という料理の性質について述べていきます。
高級寿司と回転寿司の違いは、他のもので例えるなら、靴の世界における「オーダーメイドでつくる革靴」と、「量販店で売られているスニーカー」の違いのようなものです。前者は数十万円以上、一方で後者は数千円という値段の差があります。
前者は1人ひとりに合わせて上質な素材を使い丁寧に作られる一方、後者は安価な材料を使って大量生産されるため値段に差が生じます。ただ、どちらが良い悪いではなく、使う用途やシーンによって両方に存在価値があると言えます。寿司の場合も、ほぼこれと同じです。
高級寿司の場合、まずネタはその日の入荷状況によって最高のネタが仕入れられます。それを職人があれこれと処理をし、場合によっては何日もかけて最高の味を引き出します。シャリや海苔、ワサビといったものもベストなものにこだわり、その価格は私たちの日常からは想像もできないくらいに高価な場合もあります。
それらの食材を、その日その日、その人その人の状況に合わせて最高の状態で提供してくれるのが高級寿司なのです。
こうして作られる高級寿司は、高品質を通り越して芸術的でもあります。素材と手間、そして技術のすべてにおいて突き詰めているからこそ、高い値段となるのです。
一方で回転寿司の場合は、その日その日の入荷状況に極力左右されないように仕入れを行います。冷凍魚や養殖魚も駆使しながら、味が良いネタをまとめて安く買い付け、その時々で出していきます。
また、調理は機械やマニュアルを使って誰でもできるようにし、いつも同じ味を出せるようにします。シャリや海苔、ワサビといったものも大量に安く仕入れて使います。これらを合わせ、なるべく同じ品質の寿司を広範囲に提供し、多売でビジネスを成り立たせるのが回転寿司です。
こうして作る回転寿司なので、価格を抑えることができます。ただ、安いといっても決して不味くはないはずです。むしろ、美味しく、コストパフォーマンスの良い食べ物だと思っている人が多いから、人気になっているのでしょう。
以上のように、高級寿司と回転寿司はまったく違う性質のものを提供しています。前者は特別な日の食事や芸術性を楽しむものとして、後者は日々の生活の中で食事を楽しむものとして、人々に満足感を与えていることでしょう。
寿司は、さまざまな形に変わることができ、さまざまなニーズやシーンにも溶け込める素晴らしい食べ物です。世界各地の老若男女すべての人に向けて、それぞれに合わせた形で、魚を使って満足を提供できるのが寿司という食べ物です。寿司って本当に素晴らしいですね。
回転寿司は、私たちが普段の生活の中で、最も魚を手軽に食べられる場所のひとつであり、伸び悩む外食産業の中でも年々伸び続けてきた花形です。
ここでは回転寿司の歴史さぐっていきましょう。
初めての回転寿司が誕生したのは1958年。東大阪市にオープンした「廻る元禄寿司」が、回転寿司1号店と言われています。独特の回る台は、ビール工場のベルトコンベアをヒントに開発されました。
これにより、提供スピードが上がり、高級だった寿司は大衆食としても楽しめるようになりました。
その後、同じく大阪府を拠点に創業したのが「くら寿司」(1977年、堺市)と「スシロー」(1984年、豊中市、当時「すし太郎」)です。栃木県宇都宮市では「廻る元禄寿司」のFC(フランチャイズ)として出発した「元気寿司」が、1990年に商号を変えて始動します。そして、元気寿司は、1993年に海外(ハワイ)にも出店を開始します。
2000年代になると回転寿司大手の全国チェーン化が進んできます。すき家などを運営するゼンショーグループは、2002年から子会社を設置して「はま寿司」を展開。「かっぱ寿司」も2000年前後には大型店舗を展開し始めます。
この頃になると、「1皿100円」というスタイルを取る全国チェーンも多くなりました。さらには、回転寿司の業務効率化の流れが加速化します。今ではお馴染みのタッチパネルによる注文方式は、くら寿司で2002年に登場します。
そして、2009年に元気寿司が新たに展開した新ブランド「魚べい」が業界に衝撃を与えます。なんと全店で寿司を回転させるのを止めたのです。今でこそ、「回らない回転寿司」は当たり前ですが、当時この発想は画期的でした。
その後も回転寿司は拡大し続けています。帝国データバンクの調べによると、「回転すし」市場は、2021年度に過去最高水準の7400億円規模となりました。回転寿司は、魚ビジネスにおいて、これからも重要な位置を占めていくことは間違いないでしょう。
この記事は、『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』(ながさき一生/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
(ながさき一生)
ITmedia ビジネスオンライン
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