( 150875 )  2024/03/19 23:29:42  
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Bloomberg 

 

(ブルームバーグ): 岸田文雄首相は19日夕、17年ぶりの利上げを決定した日本銀行の判断について、異次元の金融緩和政策から新たな段階へ踏み出すと同時に、緩和的な金融環境が維持されたことは適切だと述べた。官邸で植田和男総裁と会談後、記者団に語った。 

 

岸田首相は、会談で植田総裁から同日の決定会合での政策変更について説明を受けたとした上で、「引き続き緊密に連携していかなければならない」と語った。植田総裁も記者団に対し、今後も連絡を密にして、協力して機動的な政策運営をしていくと述べた。両氏の会談は昨年12月以来。 

 

日銀は同日の会合で、マイナス金利を解除するとともに、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決定。2013年4月以来の大規模な金融緩和政策は転換点を迎えた。 

 

日銀が17年ぶり利上げ決定、世界最後のマイナス金利に幕-YCC廃止 

 

日本は1990年代後半にデフレに陥り、政府は2001年3月の月例経済報告でデフレと認定した。政府と日銀は13年1月に共同声明を発出して以降、デフレからの早期脱却と2%の物価安定目標の実現に向けて連携を強化して取り組んできた。日銀が金融政策の正常化にかじを切り、政府がいつデフレ脱却を宣言するのかに注目が集まる。 

 

デフレ脱却宣言 

 

岸田首相は日本経済の現状について、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げ、企業の設備投資増などで前向きな動きが見られると指摘した。ただ、デフレ脱却宣言に関しては「消費者物価、GDP(国内総生産)ギャップといった指標、賃金上昇、企業の価格転嫁の動向、物価上昇の広がりなど幅広い角度から総合的に判断する」と述べるにとどめた。日銀との共同声明を現時点で見直す考えはないとも語った。 

 

デフレ脱却宣言のタイミングについて、鈴木俊一財務相は「今回の政策変更があったことで脱却ということにはならない。デフレ脱却かどうかはいろいろな指標を総合的に判断して決めなければならない」と発言。今後の対応に関して「経済、金融市場、為替市場についてよく注視していく必要がある」とも述べた。同日午後、国会内で記者団に語った。 

 

 

林芳正官房長官は午後の記者会見で、デフレ脱却について「物価の基調や背景を考慮して慎重に判断する必要がある」として、金融政策の変更そのものと連動するものではないと指摘した。 

 

デフレ脱却宣言は政府の月例経済報告に明記される見通しだ。2月報告は景気判断を3カ月ぶりに下方修正したばかり。内閣府は、修正理由として賃金上昇が物価高に追い付いていないことなどによる個人消費の弱さに言及した。 

 

新藤義孝経済再生担当相は同日夜、内閣府で記者団に対し、消費の弱さに懸念があるとし、「社会全体の経済の動きの中でどのような流れになっているか、また再び戻ることがないのか」を見極めながら、さまざまな指標を検討していくべきだとの見解を示した。 

 

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--取材協力:広川高史、横山恵利香. 

 

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Emi Urabe, Momoka Yokoyama 

 

 

 
 

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