( 151050 )  2024/03/20 13:54:11  
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ホームに到着した京葉線(18日午前7時54分、蘇我駅で) 

 

 JR京葉線で16日から新ダイヤの運行が始まり、18日は初の平日を迎えた。朝と夕方以降に走る大半の快速と全ての通勤快速を各駅停車とするもので、通勤時間の変更を余儀なくされた利用客からは不満の声が聞かれた。(石本大河、戸田光法) 

 

【表】一目でわかる…京葉線ダイヤ改正を巡る経緯 

 

 JR東日本千葉支社によると、蘇我駅(千葉市中央区)では快速29本、通勤快速4本の発着がなくなった。通勤快速から各停への変更で、蘇我―東京駅間の所要時間は最大約19分増える。 

 

 「朝の貴重な時間が奪われるのはつらい。車内で立っている時間が長くなるのも困る。JRはもっと住民の声を聞いてほしかった」。東京都内に勤める千葉市中央区の男性(63)は、納得がいかない様子だ。 

 

 各停に乗るため、18日はこれまでより30分早い午前7時10分に蘇我駅に着いた。「実際に運行が始まってしまった。諦めるしかないのかな」とため息をついた。 

 

 京葉線に直通する外房線の上総一ノ宮駅(千葉県一宮町)は、通勤快速なら東京駅までの所要時間は86分だった。一宮町は豊かな自然環境と都心へのアクセスの良さをアピールし、移住者の受け入れを進めてきた。 

 

 「午前7時の通勤快速をなくし、その10分後に新設したのが(追加料金のかかる)特急だ。本当に腹立たしい」。通勤快速で都内に勤務していたという50歳代女性は18日、こう憤った。 

 

 馬淵昌也町長は、「町民からとりわけ、帰りが不便になるという声を多く聞いており、JRに改善を訴えていきたい」と強調する。都内の会社に通う50歳代男性は、「東京駅から座って、乗り継ぎなしで帰ることができなくなるのがつらい」と語った。 

 

 問題は、JR側が昨年12月に発表した新ダイヤに端を発する。朝と夕方以降の列車を全て各停に変更する内容で、沿線自治体は反発。沿線価値が落ちるとして、千葉県内の経済団体も見直しを求めた。 

 

 JR側は今年1月、早朝の上り快速2本を存続させる修正をしたが、通勤快速や快速の復活を求める声は収まっていない。千葉県の熊谷知事は15日、記者団の取材に応じ、「通勤快速の復活を含めた速達性の確保について、早急に検討いただきたい」とJR側に求めた。 

 

 

 JR千葉支社の土沢壇支社長は「ダイヤについては地域の皆様と話を進めながら、時期も内容も柔軟に検討を進めていきたい」との考えを示している。今回のダイヤ改正ではJR側に400を超える意見が寄せられたという。次のダイヤ改正で速達性の改善を打ち出せるか注目される。 

 

 本八幡駅(千葉県市川市)を発着する都営新宿線は、3月のダイヤ改正で急行を増やした。新宿までの所要時間は30分で各駅停車に比べて12分短く、速達性が向上する。 

 

 東京都交通局によると、18日に始まった平日ダイヤでは、午後5~7時台に新宿発本八幡行きの急行を1本から4本に増便。午前9時台には、本八幡発の各停1本を急行に変更した。 

 

 JRは元々、ダイヤ改正の際に地元自治体とコミュニケーションを取ってこなかった。大きな変更をいきなり伝えれば、沿線の反発を招くのは当然のことだ。 

 

 JRが京葉線の各駅停車化を決めた背景には、通勤輸送の利益率が低いことがあると考える。JRは他の私鉄に比べても通勤定期の割引率が大きく、もうけが少ない。特に京葉線の場合、鉄道・運輸機構に年間240億円もの貸付金を支払っている。京葉線は各駅停車の都心寄りで乗客が集中することが課題だった。新たな車両や乗務員を手配せず、快速や通勤快速を廃止して各停にすることで、混雑解消につなげるとともに、少しでもコストを浮かせようとしたのではないか。 

 

 ただ、長さ43キロの区間を各停で乗っていくのは利用者にとって大変だ。都心の地下鉄などと違い、乗客の少ない駅に止まることになり、かえって非効率になる可能性もある。 

 

 今回のダイヤ改正で京葉線から総武線快速に乗客が流れ、総武線が混雑すれば、JRにとっては本末転倒だ。東京メトロ東西線との競争もあり、ラッシュ時の快速の復活や海浜幕張などに停車する通勤快速の新設といったテコ入れが必要な時期が来るはずだ。 

 

 ◆JR京葉線=東京駅(東京都千代田区)と蘇我駅(千葉市中央区)の約43キロを結ぶ。1975年に貨物線として整備された。86年に西船橋―千葉みなと間で旅客向けに開業し、90年に全線開通した。蘇我駅で外房線と内房線が接続しているほか、武蔵野線が一部区間に乗り入れている。 

 

 

 
 

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