( 151065 ) 2024/03/20 14:13:26 0 00 写真提供: 現代ビジネス
コロナ禍で注目を集めたUber Eatsや出前館などのフードデリバリーサービスだが、最近は配達員の報酬単価が激減しているという。基本報酬の引き下げや、時間ロスをしたときの補償金である“調整金”が付きづらくなったことなどにより、デリバリーを専門に生計を立てることを不安視する現役配達員の声も聞かれる。
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コロナ禍によって特需だったフードデリバリーだが、現状は厳しい状態に陥っているのだろうか。
記事前編は「実はいまウーバー配達員の収入が激減していた、現役配達員が明かした“不安”」から。
配達員の単価が下がり続けている背景にはどんな事情があるのだろう。ここからは飲食店の経営サポートなどを行う外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏に話を伺っていこう。(以下「」内は、堀部氏のコメント)
「現在の国内フードデリバリーのシェアとしては、Uber Eatsと出前館が半々くらいの割合となっています。Uberは情報開示されていないのですが、出前館の2023年9~11月期の流通総額(注文の商品代金や配達料など含んだ総額)は466億円で、前年同期比でマイナス8%となっています。
その内訳を見てみると注文数は一層減少しており、前年同期比マイナス11%。また1年以内に1回以上購入したアクティブユーザー数は618万人で、こちらは前年同期比がマイナス27%とかなり減少していることがわかります。コロナ禍最盛期と比べると現在ではデリバリーサービスを使う人が少なくなっていること、それに伴って配達員が余剰となり、稼働効率が落ちていることは間違いないでしょう。
そして、直近の2024年8月期第1四半期決算では、売上高が121億700万円で、前年同期比マイナス0.7%、営業損失は12億5600万円となっていますが、売上高に対して配達員へ支払っている報酬額の割合はなんと84.5%も占めているのです。このデータからわかるのは、デリバリー事業者側も決して配達員から搾取しているというわけでなく、企業も大変苦境に立たされているという苦しい現状でしょう」
出前館の業績からデリバリー業界全体の売り上げが落ちていることが推察できるため、配達員への報酬の引き下げも苦渋の決断だったのだろう。
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一方でコロナ禍最盛期のように配達員が月収100万円を達成するなどの状況のほうが、異常だったのだと堀部氏は指摘する。
「そもそも事業者側が想定しているデリバリー配達員の働き方は、空いた時間で自由に働けるという副業としての形です。それがコロナ禍ではデリバリー需要が激増したことで、配達員を専業にして稼ぐ人も少なくありませんでした。デリバリー業界からすればコロナ禍が異常な状況であり、本来配達員を専業にして働くようなビジネスモデルの設計にはなっていなかったのです」
次にデリバリーサービスを活用する飲食店側の変化についても教えていただこう。
「まずコロナ禍が始まった2020年当時は、イートイン客がいなくなったことで飲食店はこぞってデリバリーサービスを利用し始め、デリバリーの需要が大きく伸びました。しかしコロナ禍が落ち着いた現在、イートイン客が徐々に戻り始め、その分デリバリーの需要が減ったのです。飲食店の8割が人手不足と言われていますので、イートイン客への対応で手一杯となった結果、デリバリーの受注をストップしてしまう飲食店が増えつつあります。Uberや出前館に登録はしているけれど現在は利用していないということです。
大手のファストフード店などは自社でデリバリーにも対応できるような仕組みづくりがされているので別として、こうした傾向は人気店であるほど強くなり、逆に不人気店は現在もデリバリーサービスをフル活用している印象です。このようにデリバリーの出店数が減少してきていることもユーザーが減っている一因だと考えられます」
堀部氏は、今後も配達員の単価は下がり続けるのではないかと予想する。
「“異常な状況”だったコロナ禍が落ち着いて通常時に戻ったことで、赤字経営になっているというのがデリバリー業界の現状です。デリバリーの需要が減っている以上、今後も配達員への単価を下げ、人員の削減も進めていくという流れは避けられないでしょう。
配達員を減らしてコストを下げる施策として、Uber Eatsではロボットによる配達を一部ではすでに始めておりますので、今後は人件費削減のためにロボット導入が進むのではないかと予想しています。またフード配達だけでは限界を迎えている状況から、例えばドラッグストアから医薬部外品を配達するといったように、フード以外のデリバリーにも間口を広げて何とか経営を維持していくのではないでしょうか」
――ほんの数年前に隆盛を極めていたデリバリーサービスだが、コロナ禍という“異常な状況”が落ち着いたいま、このビジネスモデルの本来の真価が問われているということだろう。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
A4studio(編集プロダクション)
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