( 151577 )  2024/03/22 00:06:06  
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 2024年秋のアメリカ大統領選挙で、民主・共和両党の候補者に、バイデン大統領とトランプ前大統領がそれぞれ指名されることが固まった。今回の選挙は、一体どちらに転ぶのか、あるいは、転ぶべきなのか。 

 

 2016年のアメリカ大統領選挙前に、トランプ大統領の当選を予測し、見事に的中させたこともある国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は、「トランプの政策の方向性は正しい」というーー。みんかぶプレミアム特集「日本・世界経済こう変わる」第1回。 

 

 「もしトラ」「ほぼトラ」という言葉が現実味を帯びてきた。筆者はトランプ前大統領の副大統領人事やバイデン大統領の差し替え可能性など、大統領選挙の予測にはまだ無数に注視すべき要素が残っていると思うが、来るべきトランプ政権再来を予測・分析することは良いことだ。 

 

 リベラルなメディアではトランプ大統領の返り咲きを恐れるヒステリックな識者の言説が溢れている。しかし、トランプ前大統領が掲げる政策はそれほどおかしなものなのだろうか。むしろ、筆者はトランプ前大統領の政策の方向性は正しいと確信している。 

 

 まず経済政策について概観してみよう。 

 

 バイデン大統領の巨額の財政支出及びバイ・アメリカン政策は過剰にタイトな雇用状況を創り出すことに繋がり、自国民を苦しめる強烈なインフレを引き起こした。また、バイデン大統領はトランプ政権が定めた規制廃止を義務付ける大統領令を就任初日に覆した。 

 

 さらに、気候変動対策の一環として、新たな環境規制を強化するとともに、自国のエネルギー開発を阻害することも行った。 

 

 そのため、FRBはバイデン政権によって人為的に引き起こされたインフレに対処するために金利を引き上げ続けざるを得なかった。現在、米国経済はソフトランディングの様相を見せているが、商業用不動産の状況などに鑑み一歩間違えれば経済に多大な被害が発生する可能性も依然として残っている。 

 

 

 トランプ新政権が発足する来年1月には、インフレもある程度抑制されていることが予測される。その上、トランプ前大統領の公約は、官僚機構の腐敗を一掃し、政府の規制を徹底的に排除し、経済活動の生産性を向上させることを打ち出している。 

 

 また、エネルギー規制を緩和することで、物流コスト・生産コストを引き下げることにも言及している。 

 

 一方、関税や移民規制の強化はインフレ要因となるとともに経済成長にマイナスの影響を与えることになる。それらの負の影響を打ち消すために、トランプ前大統領は新たな追加減税政策が用意している旨を示唆しているが、同政権が政策を適切なタイミングで組み合わせられるかが問われていると言えよう。 

 

 経済政策全体を概観する限り、トランプ前大統領はバイデン大統領よりも経済成長を促すプロ・ビジネス寄りであることは明らかだ。したがって、今後、バイデン政権が4年間継続するよりも、トランプ新政権が誕生したほうが米国経済にとってはプラスになることは間違いない。 

 

 次に、外交・安全保障に関して概観しよう。 

 

 直近の一般教書演説において、バイデン大統領は自らを「自由と民主主義」を守る戦時大統領であるという趣旨の演説を行った。しかし、現実にはバイデン政権は世界中の独裁政権に舐められており、同政権がそれらの国から深刻な挑戦や挑発を受けただけのことだ。 

 

 米国の外交安全保障を支える根幹は軍事力である。しかし、バイデン政権下においてインフレ率を加味した軍事費は停滞を続けており、米国は世界の一正面しか対応できない状況に陥ったままだ。また、アフガニスタンからの稚拙な撤退模様は、米軍の権威を著しく毀損し、世界中の反米勢力を鼓舞するのに十分なものだった。その上、米国民主党内の左派勢力に必要以上に土下座姿勢を取り、米兵の対外派兵という選択肢を自ら否定する姿はあまりに滑稽だ。 

 

 その結果として、ロシアのウクライナ侵攻を招き、イランとの再核合意はとん挫、イスラエル・ハマスの戦いは止められず、ベネズエラは隣国への侵攻を企図し、中国は軍事力を強化して台湾への挑発を強めている。BRICsへの参加国・参加希望国は増加する一方であるのに対し、バイデン政権肝いりの民主主義サミットやIPEFは仏作って魂入れずの状態だ。仮にバイデン大統領が戦時大統領だとしたら、かなり無能な司令官だと言えよう。欧州諸国は御しやすいバイデン大統領を好んでいるようだが、それ以上にバイデン大統領は、ならずもの国家やテロリストにとって好ましい存在だと言える。 

 

渡瀬裕哉 

 

 

 
 

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