( 151722 )  2024/03/22 13:27:34  
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参院政治倫理審査会で質問に答える自民党の世耕弘成前参院幹事長=3月14日、国会内(酒巻俊介撮影) 

 

自民党派閥のパーティー収入不記載事件に関連し、国会で追及を受けた安倍派(清和政策研究会)幹部らが「記憶にない」との発言を多用した。国会の歴史を振り返ると、「記憶にない」は、追及や刑事訴追から逃れるための常套(じょうとう)句として使われたケースが多い。古くは終戦直後から使われ、昭和51年のロッキード事件を巡る証人喚問の際は「昭和の政商」と呼ばれた国際興業社主の小佐野賢治氏が同様の言葉を連呼し、流行語にもなっている。 

 

【写真】ロッキード事件の証人喚問で証言に立つ小佐野賢治氏 

 

■立民議員が集計 

 

「肝心なことの記憶はなくして、それ以外を雄弁に語るのはそれだけで信用ができない」 

 

立憲民主党の蓮舫参院議員は3月14日の参院政治倫理審査会(政倫審)で、安倍派の世耕弘成前参院幹事長にこう指摘した。不記載事件の経緯を追及する蓮舫氏に対し、世耕氏は「記憶にない」といった答弁を10回近く繰り返していたためだ。 

 

今国会では、安倍派幹部以外でも「記憶にない」と口にするパターンが目立っている。 

 

盛山正仁文部科学相は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との過去の接点について、国会で質問された際に「記憶にない」を連発した。 

 

立民の梅谷守衆院議員は2月15日の衆院予算委員会で、盛山氏が「記憶にない」を計32回発言していたと指摘。梅谷氏が独自に調べたという。梅谷氏は教団側と政策協定書にサインしたかどうかについて「記憶にない」を繰り返す盛山氏に対して、「断定もされない。逃げの答弁としてさすが」と皮肉った。 

 

■竹下登元首相も 

 

国会での「記憶にない」答弁の乱発は小佐野氏以外にも、平成4~5年に行われた東京佐川急便事件を巡る証人喚問での自民の竹下登元首相ら、枚挙にいとまがない。こうした傾向を皮肉り、令和元年9月には俳優の中井貴一さんが本当に記憶をなくした首相を演じる映画「記憶にございません!」(三谷幸喜監督)も公開された。 

 

「記憶にない」と答弁するときは、実際に記憶をなくしている場合だけとは限らない。嘘をつくと偽証罪に問われる証人喚問などの場で、事実と違う発言をしても、答弁の当時は「記憶がなかった」と切り抜けることもできるからだ。 

 

国会会議録では、終戦直後から「記憶にない」と答弁された形跡が確認できる。 

 

 

昭和22年8月、戦時中に本土決戦に備えた旧陸海軍の備蓄品が不正に隠匿されるなどした「隠退蔵物資」の摘発を巡って、公職追放(26年に解除)されていたのちの首相、石橋湛山氏が特別委員会に証人として出席した際、「記憶にない」「記憶がはっきりしていない」と発言している。 

 

自民党政調会長室長などを務めた政治評論家の田村重信氏は、政治家が連呼する「記憶にない」について、「逃げの答弁だ。そういえば問題が解決すると思っているのではないか。批判されないためのごまかしだ」と指摘した。 

 

最近では、不記載事件を巡る衆参の政倫審で、複数の安倍派幹部が「記憶にない」を連発している。田村氏は「安倍派幹部に『記憶にない』は通用しない。(同派の会長を務めた)森喜朗、小泉純一郎両元首相らに(不記載事件の経緯を)聞き、国民に報告するのが幹部の役割だ。それをやらずして『記憶にない』は通用しない」と強調した。(奥原慎平) 

 

 

 
 

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