( 152613 )  2024/03/24 23:52:27  
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給与会議に先立ち、美容室の来期の売り上げ目標について話し合うエコノワ社員=2024年2月、岐阜市、同社提供 

 

 決算書類を見せるから、給与は自分たちで決めて――。化粧品販売と美容室経営を手がける「エコノワ」(岐阜市)は、社員全員が参加する「給与会議」で、給与と経営目標を決めるユニークな働き方改革を進めている。社員の定着率が上がり、「働きがい」にもつながっているという。 

 

【写真】会社の将来像について課題を洗い出しながら話し合うエコノワ社員=同社提供 

 

 エコノワは、会長の武藤花緒理さん(53)がヘアカラーの輸入販売の会社として2008年に立ち上げた。「ほぼ個人経営だった」という会社が大きく変化したのは17年。母親の美容室を引き継ぐことになった。母親時代のスタッフは全員店を去り、10人の美容師を新たに雇った。 

 

 「人事管理なんてできない」と手探りの中で、早速起きたのが「もっと給料を上げてほしい」との不満の声。「だったら自分で決めてよ」と言うのが、「給与会議」の始まりだった。 

 

 会議は3月と10月の年2回。社員全員が参加する。損益計算書や貸借対照表を提示。来期の目標を立てて、売り上げから人件費にさける費用を逆算して、給与をどう分配するかを決める。 

 

 「周りと比較するから不満が出る。すべてオープンにして話し合った方がいい」と武藤さん。給与会議では、美容師の数が多い中で、事務職の給与引き上げも決まった。 

 

 まだまだ試行錯誤というが、確実に変わったのは社員の意識だという。美容室で販売するシャンプーの予約販売を強化したり、2店舗ある美容室で客層に応じて対応を変えてみる提案があったり……。給与の「原資」を増やそうと、美容師からの発案が増えた。 

 

 化粧品の受注担当の事務員からは、新商品のパッケージデザインのアイデアが出た。自らカメラマンを見つけ、コストを計算し、採用された。 

 

 離職率が高いとされる業界の中で、エコノワでは立ち上げ当時の10人の美容師のうち8人が今も残る。 

 

 今年3月に社長に就いた幸村龍さん(42)もその1人。「美容師がSNSで自ら発信できるようになり、美容室は『箱』で、どこでも構わないという意識が強くなっている」。そんな中で8割の定着率の背景について「学校の文化祭に近いノリです。自ら決めることは経営知識も必要で、大変だけど、楽しい」と話す。 

 

 エコノワでは、美容室の経営を疑似体験するボードゲームなどを使って、社員の経営マインドを育てている。武藤さんが目指すのは「指示ゼロの経営」。「不満の中で働くのではなく、お客様も社員も楽しく幸せになるための実験です」と話す。 

 

     ◇ 

 

 エコノワの取り組みは、朝日新聞社と転職支援サービスなどを運営するミイダスが共催する「はたらく人ファーストアワード2023」で、1009団体の応募の中から大賞にあたるゴールドを受賞した。(池田孝昭) 

 

朝日新聞社 

 

 

 
 

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