( 152978 )  2024/03/25 23:23:53  
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 首都圏でブームとなっているおにぎりが、山形県内でも専門店が続々と誕生するなど人気を集め始めている。コンビニおにぎりよりも価格設定は高めだが、具材などに工夫を凝らし、固定ファンを獲得。中には飲食業以外からの参入もある。(森田純矢) 

 

【写真】エンドーで1番人気の筋子と2番人気の紅鮭 

 

「お結び処」のおにぎり。キッチンカーで販売する(山形市中桜田で) 

 

 キッチンカー「お結び処(どころ)」が山形市中桜田のラーメン店「麺辰(めんたつ)」の駐車場で営業を開始すると、市内外から客が訪れる。同市の会社員(69)は「手軽で昼食にちょうどいい。作りたてで温かく、具の量が多い」と魅力を語る。 

 

 店は昨年7月にラーメン店主の娘・鈴木愛実さん(24)が始めた。米は粒立ちの良い山形県産コシヒカリを使ってふんわり握り、口の中でほろっと崩れる。具材は米に合うようにラーメン店のものより濃いめに味付けされたチャーシューやメンマなど11種類から選べる。 

 

 うち税込み380円以上が8種類。コンビニの商品より値が張るが、40、50歳代を中心に人気を集め、多い時は1日で400個程度売れる。休日にはスーパーやスポーツの試合会場などにも出店。鈴木さんは「想像以上の売れ行きで、おにぎりの人気の高まりを感じている」と話す。 

 

支出額が過去最大 

 

 総務省の家計調査によると、1世帯(2人以上)あたりの「おにぎり・その他」について、山形市の2023年の支出額は6009円(全国平均5909円)で過去最大となった。新型コロナウイルスの影響で一時落ち込んだものの、22年から上昇し、最も多かった16年の4914円を大きく上回った。持ち帰り需要の増加などが要因とされる。 

 

 約15年前から手製のおにぎりを販売する、同市長町のスーパー「エンドー」では、看板商品の「げそ天」人気と相まっておにぎりの売り上げがこの2、3年で3倍程度に増えた。 

 

 こだわりはのりで、歯切れが良く、香りの高い有明産のものを使用。昨年12月により上質なのりに変更したことから、100円以上値上げをしたが、逆に客足は伸びたという。山形県内外から客が訪れ、平日で約100個、休日では約300個が売れる。店主の遠藤英則さん(44)は「客は値段よりも味を重視しているのではないか」と分析する。 

 

 

 山形県内では昨年、少なくとも4店舗のおにぎり店が誕生した。参入障壁が低いことから、異業種からの挑戦もあった。 

 

 白鷹町鮎貝の建設会社「黒沢建設」が運営する、「エリート思米(しまい)」は昨年12月に開店。元々パン屋を始めていた同社は、東京でおにぎりが流行していることを知り、敷地内に専門店のオープンを決めた。 

 

 地元産のつや姫を使い、具材は約30種類用意。卵黄や野沢菜、明太子などが一緒に入ったものなど独自性を打ち出す。黒沢誠社長(44)は「必要な設備が少なく、出店しやすかった。異業種だからこそ、先入観にとらわれずに色んな組み合わせを出せる」と自信を見せる。 

 

 おにぎりの歴史に詳しい法政大の増淵敏之教授(文化地理学)は「コンビニによっておにぎりは家庭で作るものから買うものに変化した。ご当地おにぎりが20年ほど前に登場し、ブームの土壌は地方でもできていた」と背景を説明する。 

 

 今後については「人口減少が続く地方では、県産食材を使った目を引くおにぎりを県外に売り出していかないといずれ市場は頭打ちになる」と指摘した。 

 

 

 
 

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