( 153188 )  2024/03/26 14:45:50  
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配達中の軽バンイメージ(画像:写真AC) 

 

 宅配便の再配達問題はコロナ禍の巣ごもりで改善されつつあったが、「2024年問題」を目前に控えた今、再考が求められている。 

 

【画像】えっ…! これがトラック運転者の「年収」です(計15枚) 

 

 国土交通省は再配達率のサンプル調査を年2回(4月と10月)実施し、これまでの結果を継続的に把握することで、再配達の削減につなげようとしている。 

 

 2023年10月の再配達率は約11.1%で、前年同月(約11.8%)より約0.7ポイント低下、2024年4月(約11.4%)より約0.3ポイント低下しており、若干の減少はあるがほぼ横ばいとなっている。トラックドライバーの 

 

・不足 

・労働時間短縮 

 

で深刻化するにつれて、業界にはさらなる危機が迫っている。 

 

 業務を委託する物流会社にもよるが、個人事業主の軽貨物ドライバーは荷物1個あたり130円から200円で請け負っている。報酬は 

 

「配達完了」 

 

が条件なので、荷物の未着は1円もない。会社としては1日でも多く荷物を届けてその日の売り上げを伸ばしたいので、再配達の連絡がなくても、受取人の在宅が確認できれば荷物を届けることもある。 

 

 また、受取人が不在でもタイトな時間帯での再配達を避けるため、あえて不在票を残さず、受取人の帰宅時間に合わせて配達するドライバーもいる。 

 

 このように、宅配業界ではデータに残らない 

 

「隠れ再配達」 

 

は再配達率の数字に含まれず、現場で感じる再配達率は国土交通省発表の数字よりも高い。 

 

宅配便ボックスの設置状況(画像:国土交通省) 

 

 国土交通省では、再配達を減らすために次の方法を推奨している。上記の提言はうまく機能しているだろうか。 

 

・時間帯指定の活用 

・各事業者の提供しているコミュニケーション・ツール等(メール・アプリ等)の活用 

・コンビニ受け取りや駅の宅配ロッカー、“置き配”など、多様な受け取り方法の活用 

 

 時間帯指定は時間に縛られるため、受取人にとってもドライバーにとってもストレスになる。また、受取人が急用で不在の場合もあり、確実性も低い。 

 

 Eコマースなどによる荷物の増加に反比例するかのように、ドライバーの数は減少している。扱いきれない荷物の量に加え、時間帯指定の荷物もドライバーを苦しめる要因となっている。今後、2024年問題により、ドライバーは労働時間を短縮せざるを得なくなり、ドライバー不足で時間帯指定ができなくなるケースも出てくるだろう。場合によっては時間帯指定を廃止することもあり得るだろう。 

 

 置き配や宅配ボックスはどうなるのか。すべての荷物が置き配と宅配ボックスの両方に対応しているわけではない。食品、特に生ものやクール便の商品は置き配不可となるだろう。 

 

 また、代金引換の商品や大きな荷物も受け付けられない。置き配に関しては、置き場所の相違や荷物の盗難などトラブルも多く、安心できない。 

 

 

子育てエコホーム支援事業のウェブサイト(画像:国土交通省) 

 

 街中のスーパーマーケットや駅の公共施設などで宅配ボックスを目にする機会が増え、設置の機運が高まっている。住宅地では、マンションやアパートでは宅配ボックスの設置率が高いが、一戸建て住宅ではほとんど設置されていない。 

 

 また、戸数に対して宅配ボックスが設置されているマンションやアパートが圧倒的に少ない状況だ。宅配ボックスを設置したくても、費用や場所の問題で設置できない人もいるだろう。 

 

 そんな人たちのために、国土交通省では「子育てエコホーム支援事業」として、宅配ボックスの設置を含むリフォーム工事に対する補助金を用意している。補助金の募集期間は2024年3月中旬から12月31日までだが、予算枠に達した時点で締め切られる。 

 

 筆者(二階堂運人、物流ライター)自身、前職は宅配ドライバーとして働いており、当時の関係者とのつながりで配送の仕分けを手伝うこともある。 

 

 最近、「セブン―イレブン〇〇店」「ファミリーマート〇〇店」という伝票が貼られた荷物をよく見かける。これはコンビニ受け取りの宅配便である。昼夜を問わず受け取りが可能で、コンビニに保管されるため保管場所にも困らない。 

 

 唯一の欠点は、荷物を取りに行く手間がかかることだ。せっかく送料を払って荷物を届けてもらったのに、取りに行かなければならないのはおかしいと思う人もいるだろう。 

 

 ヤマト運輸では、営業所を受取場所とする場合に限り、通常運賃から60円割引するサービスを行っている。このようなサービスが拡大され、価格やサービスが利用者にとって手頃で受け入れやすいものであれば、店頭受け取りが増えるかもしれない。 

 

宅配便の再配達率のサンプル調査(画像:国土交通省) 

 

 再配達の削減は2024年問題で喫緊の課題である。しかし、推奨されている再配達削減策はどれも一長一短があり、現状ではときと場合に応じて使い分ける必要がある。 

 

 一度配達を完了させるために再配達削減策を講じることも必要だが、再配達が発生した場合の対応策や再配達の有料化についても議論する必要があるのではないだろうか。 

 

二階堂運人(物流ライター) 

 

 

 
 

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