( 154193 )  2024/03/29 14:14:01  
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日銀の植田和男総裁は動いたが(C)共同通信社 

 

【経済ニュースの核心】 

 

 不景気だと「黒」がはやる。いまも、街を歩くと高校生から高齢の男女まで黒の服装ばかりが目立ち、中にはマスクまで黒の人がいる。市中を走る車も役員送迎車でもないのに黒が多い。いまや「黒一色」の日常か。 

 

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 この不景気のような世相の中、日銀は19日の金融政策決定会合で2016年1月に導入した「マイナス金利政策」を解除し、金利引き上げを決めた。日銀による利上げは07年2月以来およそ17年ぶりで、日銀当座預金に適用する金利を0.1%とし短期市場で資金をやりとりする際の「無担保コールレート」を0%から0.1%程度で推移するよう促すとした。この小数点以下の変更で、金融政策は正常化に向け転換というが、金利水準は1%以下。不景気を暗に示唆していよう。 

 

 これを受けて、三菱UFJ銀行は普通預金金利を0.001%から20倍の0.02%に引き上げた。普通預金金利の引き上げも07年2月以来17年ぶり。定期預金も引き上げ、期間3年は0.002%から0.15%、同10年は0.2%から0.3%になる。当然、他行も利上げに踏み切ろう。 

 

「72の法則」は金融商品に投資する際に金利の複利効果により元本を2倍にする投資期間を概算で求めるための法則(計算式は72÷金利<%>=投資期間<年数>)で、普通預金0.02%で元本が2倍になるのに3600年、0.15%の3年定期預金では480年かかる。生活者視点では、ゼロ金利の継続だろう。 

 

 日銀の植田総裁は21日、参院財政金融委員会で1993年から2022年までの間に低金利のために家計や企業が手にできなかった「逸失金利収入」は総額600兆円に上ると述べていた。 

 

 日経平均株価がバブル景気で1989年に史上最高値を更新したころ、定期預金の平均金利は3~6%、普通預金は平均2%超で「利子で食べていける」と言われていた。2024年3月に日経平均は史上最高値を更新したが、預金金利は小数点以下のまま。四捨五入したら0%だ。 

 

■大企業にも無風か 

 

 企業にも金利上昇は無風だろう。財務省の四半期別法人企業統計調査(23年10~12月)によれば、企業(金融・保険業を除く)の手元流動性比率18.1%(手元流動性279兆円と潤沢で自己資本比率も43.0%)と高く、大手企業には銀行との付き合いの借入金はあるが、実質無借金も多く、日銀の政策変更は無風だろう。 

 

(中西文行/「ロータス投資研究所」代表) 

 

 

 
 

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