( 156483 )  2024/04/05 13:45:24  
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 就任3年目を迎えた新庄剛志監督(52)の采配に期待が集まる北海道日本ハムファイターズ。開幕戦にも勝利し、幸先の良いスタートを切った。 

 

 その一方で苦境を迎えているのが、日ハムに出ていかれてしまい、経営状況が悪化している札幌ドームだ。起死回生の策としてネーミングライツを募集したものの、やはり上手くいかなかったーー。札幌事情に詳しいライターの小林英介氏がレポートする。 

 

 札幌ドームは新しい名称、いわゆる命名権(ネーミングライツ)を募集していたが、命名権の応募が2月29日の応募締切までに一つもなかったことから、札幌ドーム側が応募期間を当面の間延長することになった。締切は設けず、契約締結まで募集するという。 

 

 札幌ドームとしては、新しい名称を冠して4月1日から心機一転、頑張ろうと考えていたに違いない。しかし、残念なことに応募する企業等は一つもなかった。これが現実だろう。 

 

 では、募集条件は一体どのようなものだったのだろうか。あまりにも条件が厳しく、金額等も高ければ応募する企業は皆無に等しく、お金を出し渋る可能性は否定できないはずだ。札幌ドームのホームページには、ネーミングライツの募集を行うにあたって公表した「札幌ドームにおけるネーミングライツ(命名権)協賛企業の募集要項」という資料が掲載されている。まずはそれを見ていこう。 

 

 ドーム側が提示している条件のうち、希望金額は年額2億5000万円(税抜)以上で、期間は2~4年。金額については、「高い」との批判が多かった。応募は今年1月9日から2月29日17時まで受け付けた。冒頭でも触れたとおり、今年4月頃から愛称を使用する予定だったが、ご覧の通りの結果である。 

 

 ネーミングライツの応募がなかったことに対するメディアの反応は様々だ。北海道文化放送(UHB、フジテレビ系列)は、2月29日配信の「『札幌ドーム』命名権ネーミングライツ 応募件数ゼロ…希望金額 年間 "2億5千万円以上" で高すぎたか? 札幌ドーム『契約成立まで募集期間延長』」と題する記事を配信。札幌市の秋元克広市長の会見の模様を「心配な表情の秋元市長。会見から3日経った29日、応募は締め切られました」と伝えた。 

 

 3月に入っても、札幌ドームを扱う記事の配信は続いた。週刊誌・FLASHは3月3日、「『オワコンフィールド』札幌ドーム、命名権半額ディスカウントでも応募ゼロ『自業自得』『殿様商売』ファンも冷淡」という記事を配信。ネット上で「自業自得」「殿様商売だ」等と札幌ドーム側に対して冷ややかな目線が注がれており、札幌ドームで新たに導入した「新モード」が不調なこともあることなどから、市民は厳しい目で見ていると指摘した。 

 

 

 一方、23年4月に開業した北海道北広島市の「エスコンフィールド北海道」は、売上が好調のようだ。エスコンフィールドを含む「北海道ボールパークFビレッジ」を運営する「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」は2月28日に開いた報告会で、エスコンフィールド北海道の開業1年目の売上が251億円となったと発表した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大前となる2019年比では、93億円の増収となる。また1年目は346万人が訪問したが、2年目は2倍以上となる700万人程度の来場者を目指すとしている。 

 

 ただ、懸念材料はある。FビレッジとJR・札幌市営地下鉄新札幌駅・新千歳空港を結ぶバスは今年3月1日から料金を値上げした。その理由としては、燃料費や人件費の高騰など、運行コストの上昇があるという。ちなみに、具体的な料金はFビレッジー新札幌駅のおとな料金は400円から600円へと200円値上げ。子ども料金も200円から100円値上げした300円となる。加えて、Fビレッジー新千歳空港はおとな料金が600円から1000円へと400円値上げ。子ども料金も300円から500円へと200円の値上げを予定する。なお、Fビレッジと北広島を結ぶバスの料金は据え置くとしているため注意が必要だ。加えて、1年目の来場者を再びどれだけ呼び込めるかや、球場内で販売されている飲食物のバリエーション展開も、今後の来場者数を左右する材料になるだろう。 

 

 Fビレッジの人気を受けてか、北広島での再開発を進める動きが活発化している。来年3月開業予定の複合ビルの中には、商業施設「tonarie(トナリエ)北広島」が入居する予定だ。1階にはフードマルシェとフードファクトリーを一つのフロアで展開。北広島市近郊で収穫された農産品等を取り扱うなどする。2階はパブリックビューイングや屋内広場、飲食フロアとして整備。3階は美容室やネイルサロン、クリニック等が入居するフロアとなる。4階以上はホテルが入居し、建物そのものはペデストリアンデッキで駅と直結させる見通しだ。また複合ビルの隣には、地上14階建ての分譲マンションが2026年秋に完成することになっている。そのほかにも再開発が計画されている場所もあり、「北広島バブル」は当面盛り上がりを見せ続けそうだ。 

 

 この「北広島バブル」を見逃していなかった一つの例に、大学がある。当別町の学校法人東日本学園「北海道医療大学」は、2028年4月にFビレッジへの移転をすると決定し、昨年10月、基本合意に達した。移転先はFビレッジの北側にある駐車場。面積は約1万7700㎡で、建設費用は約420億円になるという。昨年9月28日に当別町役場で開かれた大学の移転方針説明会には、大学から鈴木英二理事長ら、町からは後藤正洋町長らが出席。以下のような移転方針を伝えた。 

 

(1)2028年4月、北広島市に新キャンパスを設置 

 

(2)グラウンドや薬草園などは当別町に残す 

 

(3)既存の土地や建物を売却するには、事前に当別町へ知らせる 

 

(4)大学と当別町の協議の場を今後、設ける 

 

(5)移転後も当別町が文化的損失を生じないよう、対応する 

 

 説明の中で、移転する理由に「少子化による学生数減少」「(当別町から移転すれば)札幌市からの通学時間が短くなる」ことを挙げ、「学校の存続をかけて決定した」と胸中を明かしている。 

 

 

 再開発が進むなか、ひそかに期待が集まっているのが「JR北広島新駅」だ。エスコンフィールド北海道から徒歩4分と現在のJR北広島駅ーエスコンフィールド北海道までの所要時間20分より約16分もの短縮を図ることができるとされている。 

 

 ただ、JR北海道が当初に見込んでいた工事費80~90億円は、建設資材や人件費の高騰を受けて増加。昨年2月に115~125億円になる見通しを北広島市に伝えた。新駅は北広島市が要請した「請願駅」であり、市側が費用を負担する必要がある。そのため、市側は工事費の圧縮を要求していた。そのため、JR北海道は工事費について再度検討し、建設場所を従来計画より北広島駅側に約200mずらし、一部の工事を省略することで最終的な工事費は85~90億円に落ち着いた。なお、新駅は2028年夏の完成を予定しているという。 

 

 3月23日には、4人組ロックバンド「King Gnu」のドームツアー「THE GREATEST UNKNOWN」が、4月21日にはラグビーの試合も開催される札幌ドーム。現在、一番多く使用している、サッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌以外の使用状況は芳しくない。一部で盛り上がっている「解体論」は現実的ではないものの、札幌ドームの今後が大変心配な状況となっているのはそのままだ。今後、札幌ドームをどうすべきか。活発な議論が行われることを期待したい。 

 

小林英介 

 

 

 
 

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