( 156543 )  2024/04/05 14:53:15  
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Bloomberg 

 

(ブルームバーグ): 円相場はまたしても米国の経済動向に振り回されている。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測の後退で売られやすくなった円を支えようと、日本の通貨当局は時間稼ぎに努める。 

 

為替介入の準備は整っていると市場へのけん制を強めてきた日本当局にとって、次の試金石は5日夜に発表される米雇用統計だ。米経済が2001年以来の高水準にある政策金利の影響を乗り越えつつあることが改めて示されれば、円は対ドルで、アナリストの一部が日本の防衛ラインとみている1ドル=152円を突破する可能性がある。 

 

雇用統計に続き、10日には消費者物価指数(CPI)が発表される。この日は岸田文雄首相がバイデン大統領とワシントンで首脳会談が行われる。岸田首相には日米の結束をアピールする狙いがあるだけに、日本にとって介入のタイミングは難しい判断となる。円が152円を超え、これまでの姿勢を行動で示すことができなければ、円は下落し続けるリスクにさらされる。 

 

中東情勢の緊迫化を受けて4日の外国為替市場では逃避需要から円買いが強まったが、円は約34年ぶりの安値付近にとどまっている。日本銀行は17年ぶりの利上げに動いたものの、米金融政策の影響が大きいマーケットの流れは変わらなかった。供給管理協会(ISM)製造業総合景況指数が市場予想に反して米経済の活動拡大を示す中、金利スワップ市場では今週、FRBによる6月の利下げ開始確率が一時50%を下回った。円安が進み、鈴木俊一財務相は口先介入で市場をけん制した。 

 

米経済指標やFRB当局者の発言を受けて円安が進み、これに対し日本の通貨当局が時間を稼ごうと口先介入するというパターンが増えている。問題は、日本はどれだけこの不安定な状況に耐えられるのかということだ。多くのエコノミストは、想定よりも早く日銀が追加利上げを迫られる可能性があるとみている。 

 

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、「長期戦を強いられるのは仕方がない」と指摘。「日銀が利上げを早期にできるのか、よりマーケットの注目が集まるだろう」と語った。 

 

 

日本政府は22年、152円を前に総額9兆円規模の円買い介入を実施し、円安阻止に断固たる姿勢を示した。通貨当局は、特定の水準を維持するためではなく、過度の変動を抑えるためと介入を正当化したが、これは国際社会の為替政策の考え方において許容されるとの認識だ。 

 

円安は、日本の大手輸出企業やグローバルに事業を展開する企業の収益を過去最高水準に押し上げる要因となり、外国人にとって日本を手頃な旅行先に変えた。一方、原材料コストやエネルギー価格を押し上げることで、インフレ率はここ数十年で最も高い水準になっており、輸入業者や内需企業、家計は圧迫されている。 

 

わずか12年で円の価値は約半分になった。ドルベースの1人当たり国内総生産(GDP)がこの20年余りで最低水準となる中、政策当局者は円安がさらに進まないことを望んでいるだろう。 

 

日銀の利上げにより円安圧力がある程度弱まることが期待されたものの、植田和男総裁が緩和的な金融環境が当面続くとの見通しを示したことで、追加利上げはまだ先だとの見方が投資家の間で広がった。 

 

アナリストらは日米の金利差に着目している。日銀は政策金利の誘導目標レンジ上限を0.1%に設定したが、FRBの5.5%を大きく下回る水準だ。 

 

歴史的利上げでも円を救えぬ4つの理由、金利や変動率の低空飛行響く 

 

次回の日銀会合を数週間後に控え、日本の通貨政策の司令塔である神田真人財務官は投機的な動きを抑えるために最前線に立つだろう。神田氏は22年の為替介入を指揮した。日本のソーシャルメディアでは「神田シーリング(天井)」として152円水準に注目が集まっている。 

 

神田財務官は3月29日のインタビューで、日米のインフレ率の動向や見通し、金融政策、金利の方向性といったファンダメンタルズに照らすと、足元の急速な円安には「強い違和感を覚えざるを得ない」と指摘。「今の円安の動きというのは逆方向だろうと思っている人が恐らくほとんどだと思う」と語っていた。 

 

 

今の円安の動きは「反対方向という意味で強い違和感」-神田財務官 

 

日本の外貨準備高のうち外貨は2月末時点で1兆1500億ドル(約174兆円)と、円買い介入の原資は十分にある。ゴールドマン・サックス・グループの推計によると、このうち約1750億ドルが米長期債などを売却せずに介入に使えるドル資金だという。ただ、円買い介入をする際の原資の確保は、円売り介入の時ほど容易ではない。 

 

元財務官の山崎達雄国際医療福祉大学特任教授は今週、最近の通貨当局者からの円安けん制発言を踏まえると、足元の取引レンジを超えてドル高・円安が進んだ場合、政府がいつ円買い介入に踏み切ってもおかしくないとの認識を示した。同氏は22年9月に介入に踏み切る2日前にも、介入のリスクに言及していた。 

 

為替レンジをドル高方向に突破すれば介入あり得る-山崎元財務官 

 

ブルームバーグが3月のマイナス金利解除決定後に実施した調査によると、エコノミストの54%は円安を理由に日銀が追加利上げを行うリスクがあるとみている。ただ、景気の足取りがしっかりしていない中では難しい判断になるだろう。多くのエコノミストは、日本経済が1-3月期にマイナス成長に陥ると予想している。 

 

みずほ銀の唐鎌氏は、「日本経済は脆弱(ぜいじゃく)で連続利上げに耐えられる耐性はない」と指摘。ただ、「足元の為替からすると、早期の利上げの可能性を全くゼロということも難しい」との見方を示した。 

 

原題:Japan’s Yen Intervention Strategy Faces Big Test From US Data(抜粋) 

 

(c)2024 Bloomberg L.P. 

 

Toru Fujioka 

 

 

 
 

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