( 157158 )  2024/04/07 14:26:22  
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 日銀は2024年3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを決定した。外国為替市場では、円安の歯止めになるのではとの事前予想に反して、円売りが勢いを増している。 

 

【ひと目で分かる】日銀が2024年に開く政策決定会合の日程 

 

1ドル=151円台後半の円相場を示すモニター=2024年3月27日、東京都港区 

 

 利上げとはいうものの、足元の金利にさほど変化があったとは言えず、急激な長期金利の上昇があれば、日銀は引き続き国債を購入するスタンスを取る。日銀の植田和男総裁が「当面、緩和的な金融環境が継続する」と会見で改めて強調したこともあり、急激な金融引き締めはなさそうだと市場は受け止めている。対ドルの円相場は、3月27日には1ドル=151円97銭と、1990年7月以来およそ34年ぶりの円安水準に下落した。 

 

円安の加速を受け、財務省と金融庁、日銀が緊急に開いた国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)=2024年3月27日、財務省 

 

 円相場は、22年、23年に1ドル=152円台直前まで円安が進んでは、その手前ではね返されてきた。再び152円台を試す展開が訪れており、「三度目の正直」でこの水準を抜くと、もう一段かなりの円安水準が視野に入ってくる。 

 

 急速な円安の動きをけん制するため、ここ数日、鈴木俊一財務相や神田真人財務官は、より踏み込んだ表現で口先介入を行っている。当局としても152円台突入を警戒しているのは間違いないが、いかんせんその効果は限定的だ。 

 

 そこで3月27日午後6時すぎに、財務省、金融庁、日銀による「情報交換会合」(3者会合)が開催される運びとなったわけだ。円買い・ドル売り介入断行の警戒感が強まり、その日のうちに151円02銭までドルが急落する場面もあった。 

 

 3者会合の中で、個人的に注目したのは、日銀が「為替市場の動向が経済、物価見通しに大きな影響を及ぼす場合には当然、金融政策としての対応を考えていく」との姿勢を示した点だ。 

 

参院財政金融委員会で答弁する日銀の植田和男総裁。右は鈴木俊一財務相=2024年3月22日、国会内 

 

 「実弾」である為替介入を実施しても、市場予想では6月とされている米国の利下げまでにはまだ2カ月近くあり、時間稼ぎとなるのかもいぶかしい。そんな中で、仮に日銀が4月の政策決定会合で「サプライズ」利上げに踏み切った場合はどうだろうか。 

 

 0.2%程度までの利上げであれば、住宅ローン金利の引き上げにはつながるものの、設備投資などへの影響は限定的で、実体経済上、許容範囲ではなかろうか。市場がまだ織り込んでない分、円安に歯止めをかける効果は大きいはずだ。 

 

スイス中央銀行の建物=2023年6月、スイス・チューリヒ(EPA時事) 

 

 スイス国立銀行(中央銀行)は3月21日に、他の主要中銀に先駆けて9年ぶりの利下げに踏み切った。この決定を受け、海外の資金運用会社などでは、金利が低い通貨を借り入れて高金利国の資産で運用する「キャリートレード」において、対象通貨を円からスイス・フランに乗り換える動きが散見される。一部報道によれば、円の過小評価、日銀の為替介入の可能性、投機筋による大規模な円の売り持ちなどを踏まえた判断とのことだ。 

 

 152円はまさに攻防の分岐点であり、日本の金融当局にとって胆力が求められるフェーズなのは間違いない。しかし、過去数十年そうだったように、今回も各国当局と連携して巧みに切り抜けるのではなかろうか。 

 

 

 
 

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