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NHKの職員でありながら長者番付の常連だった鈴木健二さん(写真は1984年) 

 

 NHKのアナウンサーとして人気を博した鈴木健二さんが3月29日、老衰のため福岡市内の病院で死去した。95歳だった。テレビの本放送開始前年の1952年、NHKに入局した鈴木さんは『こんにちは奥さん』『歴史への招待』『クイズ面白ゼミナール』などの司会を務め、高視聴率番組に押し上げた。 

 

【表】鈴木健二さんが納税額2億6219万円で2位となった「1983年の長者番付(文化人部門)」ベスト10。漫画家が3人ランクイン 

 

「『クイズ面白ゼミナール』では鈴木さん自身も問題を作成していました。1問を作成するために文庫本20冊分に当たる資料を読んでいたそうです。当時、鈴木さんは半年分で50問担当していたので、1000冊も読んでいた計算になります。こうした下準備が番組の質を高めたのでしょう」(芸能記者。以下同) 

 

『クイズ面白ゼミナール』は1982年9月12日に視聴率42.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)を記録。これは歴代のクイズ番組最高の数字で、今も破られていない。読書家の鈴木さんは37歳の1966年、初めての著書『話術の科学 うまい話し方と説得の秘訣』を出版。その後も毎年のように著作を発売し、53歳の1982年には著書『気くばりのすすめ』が大ベストセラーになった。 

 

「鈴木さんはNHK職員にもかかわらず、長者番付(高額納税者公示制度)にも名を連ねました。それほど本の印税が大きかった。公示された納税額を見ると、1983年から2億6219万円、1億4310万円、1億815万円と3年連続で1億円を超えています」 

 

 鈴木さんは1983年から3年連続で『NHK紅白歌合戦』の白組司会に抜擢され、1984年には歴代4位タイの78.1%という驚異の視聴率に貢献した。 

 

「1983年の長者番付で公示された納税額は、文化人部門の2位です。1位は茶道家元の千宗室さんの3億1753万円でした。ちなみに同年、『Dr.スランプ』をヒットさせていた漫画家の鳥山明さんは9698万円、歌手部門1位の松任谷由実さんは6935万円。まさに桁違いに稼いでいました。この年の鈴木さんの年収を3億7000万円と推定する雑誌もありました」 

 

『気くばりのすすめ』は文庫本を含め、400万部以上売れた。ただ、昭和の頃は最高税率が今以上に高く、鈴木さん自身「80~90%が税金」と話しており、手元に残るお金がべらぼうに多かったわけではない。 

 

「印税のみならず、講演会の依頼も絶えなかった。『気くばりのすすめ』の頃で年間1500件くらいあったそうです。でも、NHKの職員ですから、そんな時間は取れないですし、ほとんど断っていた。中には、『印税を全額寄付すべき』という声もあったそうです」 

 

 当時、税金党の党首だった野末陳平・参議院議員との対談でこう語っている。 

 

〈鈴木(中略)これはものの考え方で、寄付してもいいんですけど、寄付すると、寄付されたその部分の人にしか役にたたない。 

陳平 なるほど。 

鈴木 税金ならば、みなさんの役にたつ。 

陳平 まあ、役にたっているかどうかは別にして。 

鈴木 軍事費だけはごめんこうむりますが。税金ならば、国民ぜんたい一億一千七百万で頭割りすれば、みなさんに何円かずつお返ししたことになる。〉(『週刊文春』1983年10月6日号) 

 

 

 鈴木さんは1988年1月にNHKを定年退職すると、細川護熙・熊本県知事(当時)に招請され、熊本県立劇場の館長になり、熊本県立劇場文化振興基金を創設した。 

 

「NHKを退職した後の1990年代は上位にはならなかったものの、高額納税者として公示されていました。例えば、1991年の納税額は3600万円、1994年は2996万円、1999年は1531万円です。NHK時代と変わらず、著作の出版や講演会の依頼がたくさんありましたから、収入は多かった。鈴木さんはそのお金を振興基金に注ぎ込んだそうです」 

 

 そもそも高額納税者公示制度は、第三者のチェックを受けることで脱税を防止するという目的で導入された。個人情報保護のため2005年に廃止されたが、それまでは毎年春の風物詩であり、一般人がどうしたらお金持ちになれるかを考える際の1つのヒントにもなっていた。 

 

「鈴木さんの納税額が最も多かった1983年、俳優部門1位は黒柳徹子さんの1億5833万円でした。1981年に発売した『窓ぎわのトットちゃん』がベストセラーになっていました。 

 

 徹子さんも鈴木さんと同じく相当な読書家で、回答者として出演していたクイズ番組『世界ふしぎ発見!』のために、出題テーマに関する本を毎週平均5冊読んでいた。長者番付の上位に名を連ねていた2人とも大変な読書家なんですね」 

 

 生涯で200冊以上の本を出版し、3500万部以上を売り上げ、青森県立図書館の館長も務めた鈴木さん。巨額の収入の源となったのは、その類まれなる読書量だったのではないだろうか。 

 

 

 
 

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