( 157303 ) 2024/04/07 23:16:17 0 00 密漁者に狙われることもある高級貝類のサザエ=4月2日、東京都江東区の豊洲市場
漁業法など関係法令に違反して魚介類や海藻類などを捕る密漁が、後を絶たない。近年は、漁業者以外が捕ることを禁止されている高級魚介を持ち去るケースが増え、資源への影響も懸念されている。海上では、特に夜間は人の目が届きにくく、貴重な貝類などが狙われるケースが頻発。春の行楽シーズンを迎え、国や自治体は海洋レジャーの利用に伴う水産物の密漁にも警戒を強めている。(時事通信水産部長 川本大吾)
【写真】レジャー利用者などに魚介類を捕る際のルールを周知する看板
◆漁業者以外の密漁が増加
水産庁によると、全国の密漁による検挙数は20年ほど前から増加傾向を示している。密漁を抑止するため、2020年12月施行された改正漁業法では、「特定水産動植物の採捕」に関する規定を新設。原則として、アワビやナマコを捕ることを禁止し、違反者には3年以下の懲役または3000万円以下の罰金を科すことにした。
さらに、漁業権の対象となるイセエビ、サザエなどを一般の人が捕ることについては、「漁業権または組合員行使権の侵害」として罰金が従来の20万円以下から100万円以下に引き上げられた。
しかし、罰則が強化されても密漁は多発している。水産庁によると、海の密漁に関する2022年の検挙は全国で1500件を超えた。このうち漁業者以外の検挙が9割近くを占め、むしろ増加傾向にある。検挙数は氷山の一角との見方が多く、水産資源はもちろん漁業者にも悪影響を及ぼしている。
密漁はかつて漁業者によるものが大多数で、大半がルールを知り尽くした「確信犯」の仕業だったが、状況は一変。漁業者以外による高級魚介の組織的な密漁は、巧妙化、悪質化している。関係機関によると「改造したエンジンを搭載した船で、取締船を振り切って逃げたり、取締船のパトロールを察知したりしてアワビなどを捕っていく」という。貝類のほか、コンブやワカメ、ヒジキといった海藻類も狙われている。
◆磯遊びや潮干狩り、釣りも要注意
海のレジャーで密漁に該当する行為が行われるケースも多いという。磯遊びや潮干狩りなどで、その地区の海辺のルールをよく知らずに貝類などを捕ってしまう人がいるほか、ルール違反に気付いても無視して行ってしまうことが多いようだ。関東の自治体の関係者は「浜辺でベーバキューなどをしながら、海に入ってアワビやサザエなどを捕って、焼いて食べたり、潮干狩りで禁止されている漁具を使ってアサリやハマグリなどを大量に捕る例があった」と打ち明ける。
国や自治体では、海辺の監視を強化する一方、連携してルールの周知などを進めている。水産庁は「都道府県ごとにルールが定められているため、確認してから楽しんでもらいたい」と呼び掛けている。
「黒いダイヤ」とも言われるクロマグロについては、漁業者だけでなく、遊漁船やプレジャーボートなどの釣りについてもルールがある。国の広域漁業調整委員会の指示により、30キログラム未満の小型は採捕禁止とされ、仮に他の魚種を狙って釣れた場合は即放流となる。
30キログラム以上の大型は、1人1日1匹まで釣って持ち帰ってもOKだが、4月6日から5月31日までいったん禁止となった。クロマグロ遊漁の採捕量が、規制の上限に迫ったことによる。
6月1日からは再び、30キログラム以上のクロマグロを釣ることが可能だが、国への報告が必要となっている。4月1日から、報告期間がこれまでの陸揚げ後5日以内から3日以内に短縮され、指示に従わない場合は、「農林水産大臣名で指示に従うべき旨の命令が発出され、従わない場合は罰則が適用される」(水産庁)ため、注意が必要だ。
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