( 158385 )  2024/04/10 23:50:21  
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京都市は春の観光シーズンに入り、観光客で混雑しており、市民の我慢も限界に達している。

特に京都駅周辺や清水寺、嵐山など人気観光地では混雑が続いており、訪日客の増加によるバス乗り場の列やゴミ問題、迷惑行為が目立つ。

観光客対応のために観光特急バスの運行や増便などの対策が進められているが、現時点で効果が見えにくい状況だ。

市民や観光客のマナー啓発と共に、より効果的な対策が求められている。

(要約)

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京都市営バス(画像:写真AC) 

 

 春の観光シーズンを迎えた京都市が訪日外国人観光客であふれ、大混雑している。これまでの対策は十分な効果を上げられず、市民の我慢も限界に達しようとしている。 

 

【画像】「えっ…!」 これが京都駅の大混雑が続く「バス乗り場」です(計12枚) 

 

 ホームから烏丸口の中央改札へ向かう通路は大勢の訪日客でいっぱい。改札を出ればバスやタクシー乗り場、切符売り場に訪日客の長い列ができている。京都市の桜が満開になった4月7日の日曜日、下京区のJR京都駅は大混雑が続いた。 

 

 清水寺や祇園など訪日客に人気の東山方面へ向かうバス乗り場は、行列が乗り場を越えて地下街の入り口付近まで続く。最後尾では案内板を持つ係員が列の整理に汗だくだが、バスが到着しても積み残しが出て、列がなかなか動かない。 

 

 母国のオーストラリアから来日した友人と新幹線でやってきた東京都の女性英会話教師(27歳)は 

 

「シドニーでこんな経験はないから、イライラする」 

 

と重いキャリーケースを引きずりながら、流ちょうな日本語で話してくれた。 

 

狭い坂道が観光客で埋まった清水坂(画像:高田泰) 

 

 混雑は市内の人気観光地でも続いた。東山区の清水坂は狭い坂道が人で埋まっていた。その下の五条坂では観光バスやタクシーが渋滞に巻き込まれ、立ち往生している。清水坂にある土産物店の店員は 

 

「4月に入って連日こんな感じ。店は繁盛してうれしいけど、忙しくて大変」 

 

と苦笑いする。 

 

 右京区と西京区にまたがる嵐山は人の波が車道にあふれた。京都駅と嵯峨嵐山駅を結ぶJR嵯峨野線は通勤ラッシュを思わせる混雑ぶり。左京区の哲学の道や北区の金閣寺も人でごった返していた。 

 

 混雑の影響を最も被っているのはバスで移動する高齢者や学生だ。特に多くの観光地を抱える東山や繁華街の四条河原町を通る路線は混雑がひどい。 

 

 7日も東山区清水五条のバス停留所で市バスと京阪バスが続けてやってきたのに、バスが去った後も10人以上が停留所に残されていた。 

 

通行禁止となる祇園の小袖小路(画像:高田泰) 

 

 観光客の迷惑行為も目立つ。 

 

 茶屋が並ぶ古い街並みが風情を感じさせる東山区祇園の花見小路周辺では、私道のなかに入り込み、禁止されている写真撮影をする訪日客が後を絶たない。 

 

 舞妓(まいこ)さんが取り囲まれて動けなくなったり、勝手に家のなかに入られたりすることも過去に度々あった。 

 

 住民の厚意でこれまで通り抜けを認めてきたが、地元の協議会はやむなく、私道のうち奥に舞妓さんの置き屋を兼ねた茶屋がある小袖小路を観光客立ち入り禁止にする方針。近くの飲食店で働く40代の女性は 

 

「テーマパークと勘違いした観光客がいる」 

 

と憤っていた。 

 

 

外国人観光客が大和大路通に投棄したごみ(画像:高田泰) 

 

 東山区の大和大路通では、中国語を話すグループが駐車場に設置された自動販売機の回収ボックスに無理やりごみをねじ込んでいた。ボックス内が満杯で入りきらないとわかると、カフェの袋にごみを詰めて回収ボックスの横へ。声をかけると男性が何か叫んで鴨川の方向へ走り去った。 

 

 清掃員の男性に聞くと、コロナ禍が一段落して訪日客数が戻ってから、朝になると大量のごみが捨てられていることが珍しくないという。 

 

「市民の我慢も限界がある。役所にきちんと取り締まってもらわないとどうしようもない」 

 

と不満を口にする。 

 

 市は渋滞対策のため、自家用車での観光自粛を呼び掛けているが、五条坂を歩くと他の都道府県ナンバーの車に多数出くわした。大阪や滋賀、奈良など近くの府県ナンバーが多いが、練馬、品川、熊本、浜松ナンバーなど遠くから来た車も。 

 

 熊本ナンバーの乗用車に乗った大学生のカップルは渋滞でイライラが募ったのか、 

 

「京都はバスに乗れないと聞いたので、車で来た。何が悪いの」 

 

と切れたような口ぶりで答えた。 

 

タクシーが渋滞に巻き込まれた五条坂(画像:高田泰) 

 

 市は混雑緩和に向け、バス1日券を廃止して地下鉄・バス1日券での地下鉄利用を推奨する一方、春の混雑対策として 

 

・市バスと地下鉄の臨時増便 

・臨時手荷物預かり所の開設 

・京都駅一極集中を回避するための混雑情報発信 

 

など多くの対策を進めている。だが、十分な効果を上げているようには見えない。 

 

 6月からはダイヤ改正に合わせ、土休日に一般バスと別運賃の観光特急バスを運行する。最も混雑がひどい東山方面2ルートで観光客を搬送、市民のバスに乗れない悩みを解消するのが狙いだ。料金は一般バス運賃の約2.2倍となる大人500円。市民利用とのすみ分けを図るため、地下鉄・バス1日券は使えるが、定期券や敬老乗車券は利用できない。 

 

 さらに、観光利用が多い金閣寺や上京区の北野天満宮などへ向かう4ルートに路線を新設するほか、市内循環系統に1日8~21.5便という大幅な増便を予定している。市交通局は 

 

「すぐにでも実施したいが、運転士の確保など準備が必要で、6月スタートとなった。これで混雑が緩和してくれれば」 

 

と期待する。 

 

 迷惑行為に対しては、祇園の花見小路周辺に市観光協会から交通整理の警備員が配置されているが、市も地元協議会と協議して警備員を出す方針。マナー啓発のチラシも作製しており、併せて活用してもらうことにしている。 

 

 市観光MICE推進室は 

 

「特に花見小路周辺は市民の生活の場で、観光客向けの施設がある場所でない。市民の声を真摯(しんし)に受け止め、対応したい」 

 

と話した。 

 

 松井孝治市長は3月末の記者会見で部局を横断して観光課題の解決に当たる新組織設置の考えを明らかにした。しかし、観光公害は小手先の対応ではどうしようもない状態に達している。 

 

「観光客数に上限を設ける」 

 

など抜本的な対策を検討する時期に来ているのかもしれない。 

 

高田泰(フリージャーナリスト) 

 

 

 
 

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