( 158894 )  2024/04/12 13:02:17  
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 竹中平蔵氏は自民党の不記載問題について一貫して「日本に政党法がない」ことを根本原因に挙げてきた。今回の自民党内での処分は厳しいものであったが、それでは何の解決にもならない。岸田首相は今回の処分で自身の支持率回復をはかったのであろうが、竹中氏は「それでは国民の信頼は回復しない」と話す。むしろ、派閥がなくしたからこそ「ドリーム内閣をつくるべきだ」と主張する。その河野官房長官、小泉幹事長などが名を連ねるその最強布陣の中身とはーー。 

 

 自民党は派閥の政治資金問題を巡り、39人の処分を決定しました。安倍派の座長だった塩谷立元文部科学省と安倍派参院トップだった世耕弘成氏などを「離党勧告」、下村博文氏、西村康稔氏、高木毅氏らを「党員資格停止」という厳しい処分を下しました。 

 

 これに関して、私はかねてからこの問題は「日本に政党法がない」ことに起因すると指摘してきました。日本には政党のガバナンスを効かせる仕組みがないのです。政治資金の問題にしても、自分たちで自分たちのことを決めているからこそ、穴がたくさん生まれるのです。 

 

 政党法を作って、それによってガバナンスがちゃんと効くようにする。そのガバナンスを効かせる一つの手段として現金を配ってはいけない、デジタル決済にしないといけない、といった議論が出てくるわけです。つまり政党法がないという根本原因を解決しないと、この問題は議論してもあまり意味がないのです。 

 

 政党法があって、その下で党員の選挙で党の代表を決めるということになっていれば、党員も増えるでしょう。自民党の党員は総裁選で党員票をもっていますが、1票の重みが非常に低いですし、過去には党員投票なしで行われた総裁選もありました。 

 

 アメリカでは、党員たちが自分たちで党代表を選んだと実感を持てる仕組みになっています。だから多くの国民が党員になるのです。 

 

また社会に対してはリダンダンシー(冗長性)を持つべきだと主張してきました。川の水が清すぎると魚は住まないのです。悪でもなければ善でもない。そんなグレーゾーンの部分については、ある程度許容することが健全な社会には必要です。 

 

 松下幸之助は「心に縁側を持て」という風に言いました。縁側とは外か内か曖昧な部分です。 

 

 先日のダボス会議でも日本での裏金について海外の要人に大変驚かれました。例えば、松野博一前官房長官は自ら派閥から還流された分の政治資金収支報告書への不記載額が2018年から5年間で計1051万円だったと文書で発表しました。5年間で1000万円、1年間だと200万円です。年間200万円の不記載だけで、大臣クラスが辞めるというのは海外ではビックリされるのです。当然、不記載は好ましいことではありませんが、政党法がないという問題もふまえれば、社会のリダンダンシーの中で「それは起こり得るな」とある程度予測できる話ではないでしょうか。 

 

 

 そんな中で、岸田首相による「激しい処分」には私は驚きました。年間200万円の松野前官房長官も党役職停止1年の処分を受けていました。 

 

 岸田首相は9月の党総裁任期までの間にどこかで解散総選挙に打って出る必要があるでしょう。ここまで支持率が低迷している中で9月総裁選の再任を狙うのであれば、どこかで国民のお墨付きがないと党内が納得しません。 

 

 しかしこのままでは、総裁選で厳しい結果になることが分かっている岸田首相としては不記載問題を巡り大胆な処分を実施することで支持率の回復を狙っているとみられます。ただ、それだけで、国民から支持を得られるとも思えません。 

 

 それでも、私は岸田首相が解散総選挙で勝つ方法があると思っています。それは「ドリーム内閣」をつくることです。派閥の制約がなくなった以上できるはずです。 

 

 たとえば、官房長官を河野太郎氏、幹事長を小泉進次郎氏、政調会長を木原誠二氏など、ベタベタに国民受けする内閣改造をするのです。次の選挙に関するアンケートで上位に登場する石破茂氏を始め実力のある平将明氏、小林史明氏のような方もよい候補になるでしょう。ただ問題として今の状況で議員が閣僚就任を引き受けてもらえるかどうかはあります。しかしそれは岸田首相の最後の腕の見せどころではないでしょうか。 

 

竹中 平蔵 

 

 

 
 

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