( 159427 )  2024/04/13 22:06:14  
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自民党の派閥における裏金事件に関連して、報道陣からの質問に答えた岸田総理について報じられた。

一連の問題には捜査が終了し、処分も下されたが、問題は本当に解決したのか疑問が残る。

報道陣は税金の面からもさらなる責任追及が必要ではないかという課題を取り上げ、政治資金の課税について専門家らに意見を求めた。

政治資金として記載されなかった資金は非課税になり、議員個人が受け取った場合は課税対象となる。

国税当局は不透明な資金流れに対して反面調査を行うことが難しく、個人と政治団体の線引きが曖昧で捜査の難しさが浮き彫りになる。

政治家の選挙費用の問題や、公益活動と個人活動の線引きについても議論が起きている。

最終的な判断は国民に委ねられるべきだと岸田総理がコメントしている。

(要約)

( 159429 )  2024/04/13 22:06:14  
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自民党派閥の裏金事件に対する自身の責任について記者からの質問に答える岸田総理=今月4日 

 

自民党の派閥の政治資金を巡る収支報告書への不記載事件は、国会議員3人と会計責任者ら7人を立件したことで、捜査は終結した。 

 

“裏金”が脱税にならないワケ 

 

自民党も“裏金”作りが常態化し、不透明なキックバックを受けていた39人に対し、「離党勧告」や「党員資格停止」などの処分を下した。 

 

しかし、これで一連の問題は、決着が着いたと言ってしまって良いのだろうか。 

 

(社会部司法担当 織田妃美) 

 

税務関係を取材している私は、普段から多くの納税者から、疑問や不満の声を耳にしてきた。 

 

その声を最初に意識したのは、2月16日。確定申告の初日、税務署に申告のため訪れた人たちに話を聞いたときだった。 

 

「私は正直に書類に記載してきた。だから、裏金が処分されないのは納得できない」 

 

「議員は裏金を自由に使えてやりたい放題なのに、どうして私たちは確定申告しないといけないのか」 

 

確定申告が必要な人は、収入や経費などを自分で把握して申告を行っている。もし誤った申告をして、それが国税当局に疑義を持たれると税務調査に発展する場合もある。しかし、今回の問題で国会議員に税務調査が行われたとは耳にしない。 

 

  

 

税金の面からもっと追及すべき責任はないのだろうか。疑問に思った私は、税法の専門家や国税、検察の関係者らに話を聞いた。 

 

そもそも、政治資金として適正に記載してこなかった資金は、税法上どのような扱いになるのだろうか。 

 

政府税制調査会専門家委員会の委員や青山学院大学の学長も務めた租税法の専門家である、三木義一氏に問いを投げかけてみた。 

 

―――実際は“裏金”は課税されていない。なぜ「非課税」なのか 

 

三木義一氏 

政治団体にお金が直接入ったのであれば、非課税となる。ただし収支報告書に記載する必要がある 

 

―――“裏金”と呼ばれる資金は、課税対象となる可能性はあるのか 

 

もし政治家個人として受け取っていたら、個人の所得に該当するので課税の対象となる。 

 

大前提として、政治団体に入ったのであれば、その時点で政治活動に使われる資金だとみなされるので非課税となる。 

 

今回、問題となっている派閥からキックバックされた資金については、政治団体への寄付として各議員が収支報告書を訂正した。そのため非課税になっているというわけだ。 

 

  

 

しかし、この事件では派閥からキックバックされたお金がそもそも隠され、 どこにも記録がなされずに不透明なままになっていたことが常態化していた。 

 

三木義一氏 

政治団体が寄付を受け取ったときは、政治資金として明記しておかないといけない。それがないのであれば、政治家個人に渡ったのだろうと推測される。政治団体の資金として証明すらせず、不透明なままだから国民は自分たちとは違うと怒りがこみあげてくるのだろう。 

 

裏金が政治資金であるなら、本来であればその証明を国会議員がするべきなのだ。 

 

さらにその証明が本当に正しいのかどうか、三木氏は「国税当局が判断すべきだ」と指摘する。 

 

ただし、個人収入と判断された場合でも、それを政治活動に使っているのであれば「経費」となり、全額が課税対象となるわけではない。 

 

  

 

例えば、5000万円を個人の所得として受け取っていても、4000万円を政治活動に使った場合、課税対象となるのは1000万円のみとなる。 

 

納税者のひとりである国会議員個人も、納税の必要があれば確定申告で自身の収支の内訳を示して、その年に納める税金の額を明らかにするのがルールだ。 

 

しかし納税額に対して疑いが生じた場合、調査に乗り出すのが国税当局となる。 

 

 

このことについて、現場の国税当局はどう考えているのか。 

 

私は国税当局の関係者に「課税できないのか」と率直に尋ねてみた。すると、返ってきた答えは「できない」との一言だった。 

 

なぜなのか。 

 

国税当局 関係者 

(支払い先に対して)いちいち反面調査のしようがない。 

 

反面調査とは、税務調査の対象者にお金を渡したり、逆に受け取ったりした関係者に対して実施する調査のことだ。 

 

隠されていた資金を受け取ったのが、個人なのか、政治団体なのかに加え、その資金を政治家がいつ、何に、いくら使ったのかを確認し、その調査を踏まえた上で、追徴課税などの処分を判断するもので国税当局が必ずおこなう調査のことだ。 

 

  

 

  

 

ただ、現実には領収書など「物的証拠」が残っていない場合も多いという。 

 

新年会や忘年会などの会食代、同僚議員の陣中見舞いなど、政治家の「政治活動」は支払先が多岐にわたる。 

 

さらに、支払先を確認できたとしても「領収書はないが、政治活動として費用を出していた」と説明されたら、実態が違っていたとしても、それを明らかにする調査は困難を極めるという。 

 

限られた人的資源を大量投入して「裏金」議員全員の調査を行うことは、ハードルが相当高いようだ。 

 

ここまで取材すると、私のなかにもう一つの疑問が浮かんできた。 

 

そもそも、東京地検特捜部による捜査の過程で、 議員個人による脱税の疑いというものは浮上しなかったのだろうか。 

 

ある検察幹部は、この疑問に対し、明らかに私的利用の場合は課税対象であるとした上で、次のように打ち明けた。 

 

検察幹部 

政務活動費など、政治で使われるお金はもともとが『ブラックボックス』。どこまで政治活動をオープンとするのか。政治家にとって個人的な活動と政治活動とは何なのか、という話になる。 

 

政治家による政治活動と個人活動の線引きの曖昧さが、「法と証拠に基づいて」行われる捜査でもネックになるということなのだろう。 

 

 

三木氏にも、この問いについて尋ねてみた。 

 

―――政治家の政治活動と個人の活動について。線引きは明確にあるのか 

 

三木義一氏 

政治家にとっては、毎日の生活そのものが政治活動。生活費と政治活動費の区別がほとんどつかないことは確かで、ひとつの大きな問題です。 

 

―――そもそも、なぜ「政治活動」は非課税なのか。 

 

税法では、公益活動をすることが『確実なもの』は非課税としている。つまり政治活動は公益活動だというのが現在のきまりです。政治家個人の利益のための活動ではない。 

 

三木氏と話す中で、私自身が 「政治家は政治活動の中で儲けている」という先入観を持っていることに気づかされた。しかし、政治家は本来、公共の利益を目的とする職業であり、“儲ける職業”ではない。 だからこそ政治活動に対する費用は非課税と考えられているのだ。 

 

ただ、現実には政治の世界で膨大な資金が飛び交っていて、「公益」のための資金が政治家個人のために使われるようなケースも次々と明らかになってきている。 

 

こうした政治腐敗の防止を進めていくために政治資金規正法が作られたはずで、リクルート事件など政治腐敗が露見するたびに再発防止のための改正が繰り返されてきた。 

 

それでも政治家にとって抜け穴が多すぎる「ザル法」との批判は後を絶たないのはなぜなのだろうか。 

 

三木義一氏 

政治資金に関する法律は議員自身を取り締まる法律だが、議員も自分が大事だから、自らを規制するような改正は避け、抜け道を作りたがる。 

 

だから、利害関係のない第三者が公正公平な立場で考え、それを立法府として国会が承認するような仕組みにしないと、実効性がある法律にはならない。 

 

さらに、三木氏は「選挙のあり方自体も問われる」とも指摘した。 

 

政治家からすると、選挙には多額の費用が必要で、そのために色々な方法で資金を確保するのは当然だと主張したいのかもしれない。 

 

しかし、そのことが不透明で不公平な資金の流れを容認する理由にはならない。 

 

そもそもお金がかかりすぎる選挙自体に問題はないのか。「政治を取り巻くカネ」について、政治家だけなく国民を巻き込んだ議論の必要があるだろう。 

 

岸田総理は5日、一連の問題について、「自民党総裁」の立場で、こう言った。 

 

「最後は国民のみなさんにご判断いただく」 

 

いま問われているのは、国民の“厳しい監視の目”かもしれない。 

 

テレビ朝日 

 

 

 
 

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