( 160584 )  2024/04/17 12:19:07  
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ECサイトの運営企業がクレジットカードの不正利用で代金を得られず、商品も取り戻せない問題が増えている。

被害額は2023年に過去最大の541億円に達し、専門家は対策強化を求めている。

ある50代男性経営者は、ECサイトでの取引が不正利用され、商品代金を返すだけでなく、商品も奪われた経験を明かしている。

被害者は取引を取り消されるとチャージバックを行われ、代金の返金を求められる。

男性は悔いを残しつつも、対策の不足を実感している。

(要約)

( 160586 )  2024/04/17 12:19:07  
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カード決済代行会社から送られたメールの写し(画像を一部加工しています) 

 

 インターネットで商品を販売するEC(電子商取引)サイトの運営企業が、クレジットカードの不正利用で代金を得られず、商品も取り戻せない事例が相次いでいる。不正利用があるとカード会社が取引を取り消し、代金をカード名義人に返す「チャージバック」を行う一方、不正利用者から商品を取り戻すのは困難だからだ。不正利用の被害額は2023年に過去最大の約541億円に達した。専門家は対策強化を求めている。 

 

【図で解説】クレジットカードが不正利用されたらどうなる? 

 

 「商品も失って泣き寝入りだ」。長野県の南信地方で酒類販売店を営む50代男性経営者が被害実態を明かした。男性はクレジットカード不正利用で商品代金をカード会社に返した上、商品も奪われた。 

 

 カードの決済代行会社からメールが届いたのは昨年2月末のこと。2022年末にECサイトで行った取引の取り消しを求める通達だった。メールには「過去不正利用で使用された住所との一致がみられました。不正利用の可能性が非常に高いかと存じます」とあった。カード会社の規約に基づく「チャージバック」で、代金計8万6千円余の返金を求められた。取り消し対象となったのは22年11、12月の2件の取引。いずれもオリジナル商品の日本酒の販売だった。 

 

 11月は埼玉県深谷市の「エノシマ」という人物から日本酒24本計3万3600円分の注文があった。エノシマは、この2日前にもウイスキーと日本酒を計3万4千円分購入。無事に決済が完了していたため、追加注文に応じた。12月の取引は日本酒で計5万2800円分だった。今度は、埼玉県川口市の「カネオ」と名乗る人物。男性は「当時は新型コロナ禍で売り上げはぼろぼろ。わらにもすがる思いだった」と振り返る。 

 

 男性はエノシマらと連絡を取ろうとした。受注伝票に書かれた携帯電話番号にかけても音信不通。配送業者からは「商品の受け取りは対面ではなかった」と返答があった。送り先はいずれも一般住宅とみられる。男性は転売目的だった可能性も疑い、しばらくはフリマアプリを検索したり、通販サイトを調べたりしたが、奪われた商品を見つけることはできなかった。 

 

 

 販路拡大を目指してECサイトを設けたのは20年ほど前。コロナ禍以降、個人需要が取り込めるECサイトの役割は増し、全体の1割ほどの売り上げを占めるようになった。都内の飲食店からも問い合わせがあり「地元の名産を世界に売り出せる」と思った。 

 

 ただ、被害に遭うまでカード決済はカード番号と有効期限などの入力にとどめており、カード会社のチャージバックの仕組みも知らなかった。男性は悔やむ。「もっと早く対策をしておけば良かった」 

(神頭和希、川上詩織) 

 

 

 
 

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