( 161838 )  2024/04/21 00:22:05  
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 小学校の給食で子どもが食材を喉に詰まらせ、亡くなる事故が後を絶たない。今年2月には福岡県の小学校で給食時に事故が起きた。学校給食では様々な食材が使用され、特に低学年では注意が必要だが、教員の指導や見守りには限界があり、学校現場は対応に苦慮している。(古郡天) 

 

【写真】死亡した男児が食べた、「みそおでん」などの給食メニュー=みやま市教委提供 

 

 「起きてはならない事故が起き、大変重く受け止めている」 

 

新入生のクラスで給食が始まり、担任は「よくかんで食べてね」と児童に注意を促した(16日、東京都杉並区立桃井第二小学校で)=画像は一部修整しています 

 

 2月26日、福岡県みやま市の待鳥博人教育長が記者会見で述べた。 

 

 みやま市では同日、市立小1年の男児(7)が給食の食材を喉につまらせ、搬送先の病院で亡くなった。男児の喉からは、献立のみそおでんに入っていたウズラの卵が見つかったという。事故の再発防止や原因究明に向け、市では4月17日から、外部の識者も交え、詳細な調査を始めた。 

 

 学校給食での死亡事故は、過去にも起きている。2015年9月には大阪市でも、ウズラの卵が入った「鶏肉と野菜のうま煮」などを食べた小1の女児が死亡。栃木県真岡市では10年2月に小1の男児が白玉団子を喉に詰まらせ、その後亡くなった。 

 

 厚生労働省の統計によると、18~22年に食品を喉に詰まらせたことなどにより窒息して死亡した14歳以下は54人に上り、うち9歳以下が49人を占めた。 

 

 事故がなくならない背景には、学校給食での指導や見守りの難しさがある。 

 

 幼稚園や保育園などを対象とした内閣府のガイドライン(指針)では、「給食での使用を避ける食材」にプチトマトやウズラの卵、餅や白玉団子、イカなどを例示する。指針では、食べ物をのみ込む仕組みなどイラスト入りで解説し、年齢に応じた食べ方や注意事項を詳しく記載している。一方、小学校では食材の危険性を示すリストなどはない。 

 

(写真:読売新聞) 

 

 子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフキッズジャパン」理事長で小児科医の山中龍宏さんは「幼稚園や保育園の年長の子どもと小学1年の児童の体に大きな差はない。特に低学年は歯の生え替わり時期を迎え、前の歯がない子どももおり、食べ物を吸い込みやすい」と指摘する。 

 

 

 また、低学年では、食材の危険性について理解が不十分な子どもも多い。 

 

 文部科学省の「食に関する指導の手引」でも窒息事故防止の項目はあるが、「早食いは危険」「よくかんで食べるよう指導」「児童生徒の様子を注意深く観察」などの記載にとどまる。具体的な指導の内容や方法は現場に任されている。 

 

 千葉県の小学校に勤める20歳代の男性教諭は「毎日30人以上の子どもが一斉に給食を食べる。全員に目を配ろうとしても、配膳指導や子ども同士のトラブル対応などもあり、限界がある。給食による事故は、いつ自分の学校で起きてもおかしくない」と不安を漏らす。 

 

 学校給食では食材を制限しにくい面もある。ウズラの卵が入った給食による事故は過去にもあり、危険性が指摘されていたが、「子どもに人気の食材で、鉄分などの栄養価も高い。使用しやすい価格帯で簡単に代替品は見つからない」(関東地方の県教委)との事情もある。 

 

 かつてウズラの卵が入った給食で事故が起きた大阪市も、食材は変更していない。担当者は「喉に詰まりやすい食材は一つではない。その全てを禁止するわけにもいかず、教員への研修や指導で対応している」と話す。新潟県佐渡市でも21年7月に給食の米粉パンを喉に詰まらせた小5の男児が亡くなる事故があり、市は直後に米粉パンの提供を一時中止したが、現在は制限していない。市教委担当者は「主食であり、一切出さないわけにはいかない」と説明する。 

 

 日本栄養士会理事の中田智子栄養教諭は「給食は幅広い食べ物と出会う『食育』の役割も持つ。栄養バランスもあり、食材の提供を中止することが必ずしも正解とは限らない」と指摘。その上で食材を継続して使う場合には、「1学期は食材を小さく切り、新入生が給食に慣れてきた2学期以降は徐々にサイズを変えるなど、各学校で工夫してほしい」と話している。 

 

 

 
 

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