( 162408 )  2024/04/22 17:34:30  
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 昨週末の4月19日の日経平均は、1000円以上暴落した。 

 

 イランの攻撃やイスラエルの報復など地政学的リスクが露わになり、米ハイテク株の大幅な下落など、昨年以来、上昇をつづけてきた日本株も混迷を来してきた。 

 

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 そうした中で、注目されるのが日本銀行の政策決定会合だ。さらなる利上げを占う上でも重要な会合となる。 

 

 そこで、4月25日、26日に行われる会合を前に、前回3月の会合で金融政策を変更した日銀がどのような動きを見せるのか、注目点を整理したい。 

 

 そのために、まずは3月の決定会合を振り返ろう。 

 

 歴史的な政策転換を行った日銀・植田和男総裁はいま何を思うのか――。それを知るカギは、3月の決定会合にある。 

 

 日銀は3月18、19日の金融政策決定会合で「金融政策の枠組み見直し」を発表し、金融政策を変更した。しかし、我々はこの「見直し」という言葉に惑わされてはならないだろう。 

 

 そもそも、17年ぶりの利上げという歴史的な金融政策の転換となった金融政策決定会合の内容は、事前に報道されていた内容そのままで“歴史的な茶番劇”と言えるものだった。 

 

 おそらく、日銀は政策転換を事前に関係省庁や政治家へ根回ししたのだろう。そのため報道機関に内容がダダ漏れとなった。言うまでもなく、金融政策は日銀の専管事項だ。安易にマスコミに情報を漏らす政治家も節操がないが、いかに日銀の独立性が脆弱であるかを物語っている。 

 

 それはさておき、では日銀はどのように政策転換をしたのだろうか。 

 

 日銀が発表した「政策転換」の中身は次の内容だった。 

 

 1.金融政策手段を短期金利の操作に戻し、これまでマイナス0.1%としていた短期金利の誘導目標を0~0.1%に引き上げる。 

 

 2.長期金利(10年国債利回り)を0%程度に抑え込むための長短金利操作(YCC:イールドカーブ・コントロール)を終了する。 

 

 3.ETF(上場投資信託)などリスク資産の買い入れも終了。 

 

 

日銀は、金融緩和をやめたわけではない Photo/gettyimages 

 

 各メディアはこぞって「17年ぶりの利上げ」「金融緩和策の終了」「金融政策の転換」などと大袈裟な表現で取り上げたが、金融引締めに政策を転換したと言えるほどのものなのではなかった。利上げ幅はわずか0.1%でしかないのだから。 

 

 その上、日銀の「金融政策の枠組み見直し」の発表文では、先行きの見通しとして、「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と述べている。 

 

 さらに、同時に発表された「参考」では、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等で対応する」と書かれており、会合後の植田和男総裁も、会見で「長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することとします」と発言している。 

 

 つまり、実態は日銀の発表やマスコミの報道とは真逆で金融緩和は続行中なのだ。 

 

 「大規模な金融緩和はその役割を果たした」と言いながら、緩和的な金融環境が継続し、もし長期金利が急激に上昇する場合には、それを抑え込むという。 

 

 記者会見でも、「長期金利の急激な上昇とは、どのようなものを指すのか」「どの程度の期間で、どの程度の水準まで長期金利が上昇した場合に急激と判断するのか」「緩やかな上昇が続く場合には、日銀は長期金利の上昇を許容していくのか」など、この部分に対する質問が多く出されたが、植田総裁から明確な回答はなかった。 

 

 唯一得られた回答は、「金利水準は市場が決めるものというふうに考えております」という杓子定規なものだった。 

 

 しかし、「当面、緩和的な金融環境が継続する」という見通しと、「長期金利が急上昇した場合の対応」は、「日銀の本格的な利上げが相当先になる」という予想を想起させるには十分だった。 

 

 そのため、進んでしまったのが「円安」である。 

 

 米国の消費者物価指数が高止まりしていることで、米国の利下げも遅れるとの観測と相まって、日米金利差の縮小が遠退いたとの見方が強まった。よって、為替は円安に向かって進み始め4月16日には34年ぶりに1ドル=154円台後半まで円安が進行した。 

 

 さて、このような状況のなか、4月25日、26日に開かれる日銀政策決定会合では、何に注目すればよいのだろうか。後編「日銀「株価下落」と「イラン攻撃」に打つ手なし…! 植田総裁はつぎの一手を示せるか? 日銀「4・26会合」に備えよ!」で、じっくりと説明していこう。 

 

鷲尾 香一(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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