( 163494 ) 2024/04/25 15:43:40 0 00 Photo by gettyimages
「伝家の宝刀」とも呼ばれる解散権。しかし扱い方を間違えば、その刃は総理自身も傷つけることになる。多少議席が減ろうが構わない─そんな身勝手な解散戦略が、「自民党崩壊」の引き金になる。
【当落予想】落選する議員の全実名(東日本編)はこちら…!
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〈経済再生実感をあなたに。〉
4月15日に自民党が発表した新しいポスターには、岸田文雄の顔とともにこんなキャッチフレーズが躍った。AIを活用して作ったという。
春闘での「賃金上昇」と、「4万円定額減税」をテコに、6月の国会会期末に解散総選挙に打って出る。周囲は岸田の戦略をそう見てきた。それだけに「経済再生」を前面に押し出したポスターは党内でも憶測を呼んだ。
――国民は物価高の実感しかないというのに、まさか岸田は解散をあきらめていないのか? 4月16日に共同通信社が発表した世論調査によると、岸田内閣の支持率は23・8%。過去最低だった前回調査から3・7ポイントほど上昇したものの、訪米効果も虚しく6回連続の20%台に沈み込んだままだ。
さらに28日に投開票を控える3補選では、東京15区と長崎3区で候補者を立てられず、自民党は「2敗」が確定している。
「残る島根1区でも最新調査で、立憲民主党の候補に20ポイントも差をつけられていることが判明しました。巻き返しは絶望的です」(自民党関係者)
本来であれば、解散などできるはずがない。しかし、米国でバイデン大統領に厚遇を受け、スピーチがバカウケ。舞い上がった岸田は、先行きを楽観視しているようだ。
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「ある議員が『補選で3敗したらどうするのか』と問いただしたら、岸田さんは『国民の不満をすべて吐き出させてリセットできるから、それでも構わない』と開き直ったそうです。
このまま9月の総裁選を迎えれば、『岸田では選挙に勝てない』と引きずり降ろされることは目に見えている。それならば多少議席を減らそうとも解散しようという魂胆です」(自民党幹部)
もちろん岸田が解散の気配を見せれば、与党議員が全力で止めにかかるだろう。公明党も「信頼回復が当面重要だ」(山口那津男代表)と岸田を牽制している。しかし、自民党閣僚経験者はある可能性を懸念する。
「外遊時の記者会見で解散を匂わせたら、誰も流れは止められない。5月にはパリでの経済協力開発機構閣僚理事会(2、3日)が、6月13~15日にはイタリアでのG7サミットが控えています。サプライズが好きな総理ならやりかねません」
では岸田が解散を強行したらどのような結果が出るのか。今回、政治ジャーナリストの角谷浩一氏と青山和弘氏に全国289の選挙区と比例代表の当落予測を依頼した。
さらに本誌は自民党が前回選挙から得票数を10%減らすシミュレーションを行った。これは決していい加減な数字ではない。政権交代が起きた'09年の総選挙では、自民党は小選挙区で9・09%、比例で11・45%も得票数を減らしている。
一部世論調査では、岸田政権の支持率は、すでにこのときの麻生太郎政権を下回っている。「10%減」は十分にありうる数字なのだ。
さらに「裏ガネ議員」についてはより厳しい戦いになると見て、15%減(不記載額500万円未満)、20%減(不記載額500万円以上)とした。
データをもとに取材を進めると、自民党を崩壊へと導く驚きの結果が浮かび上がってきた。ここからは各選挙区の内情を順番に見ていこう。
北海道7~9区
北海道では早速、裏ガネ議員に厳しい風が吹きつけている。9区の元スピードスケート選手・堀井学の不記載額は2196万円と、党内で5番目に高額だった。
「地元では候補の差し替えを求める声が根強く、まともに戦うこともできません。トレードマークのスキンヘッドからカツラを着用するなどしてイメージ刷新を図っていますが、無意味でしょう」(地元政界関係者)
自民党全体に逆風が吹いている今、総理の身内である元岸田派の面々にも災厄が降りかかろうとしている。福島2区の根本匠は岸田派の事務総長も務めた重鎮だが、区割り変更の影響もあって苦戦を強いられそうだ。
「旧福島3区の立憲現職・玄葉光一郎と初対戦となりますが、玄葉は佐藤栄佐久元福島県知事の娘婿で、県南地域で絶大な支持を受けており、根本は劣勢です。党の『73歳衆院比例定年制』もあり、今年73歳の根本は重複立候補ができないため、このまま引退となるのでは」(元岸田派議員)
埼玉1区の村井英樹は元財務官僚で、岸田の懐刀・木原誠二の後輩だ。43歳の若さで内閣官房副長官に抜擢されたホープだが、黄色信号が灯る。
「立憲候補の武正公一は、'12年に村井に敗れるまで12年間、議席を守ってきた。裏ガネ問題が尾を引く中、元職の武正に票が流れる可能性は高い。村井が落選すれば、岸田官邸にとっても大ダメージです」(官邸担当記者)
派閥のキックバックを主導したとされる「安倍派幹部」は、明暗が分かれそうだ。
「東京24区の萩生田光一は『党役職停止1年』で済んだので、党の公認が得られます。選挙はそれなりに優位に進められるでしょう。一方で、東京11区の下村博文は『党員資格停止1年』のため、無所属で出なければならない。すでに駅頭で朝立ちをするなどドブ板選挙の覚悟ですが、かなり厳しい」(元安倍派議員)
千葉1~3区
千葉3区の松野博一は、萩生田と同じく、「党役職停止1年」の軽い処分で済んだが、選挙では苦戦を強いられそうだ。
「公明党は今回、裏ガネ問題に巻き込まれた形で怒り心頭です。安倍派5人衆には推薦を出さないとの話もある。松野は公明票がないと、当落線上の戦いとなる」(同前)
パーティ券収入の不記載があった元二階派幹部にも逆風が吹く。千葉10区には、二階俊博の右腕・林幹雄がいるが、二階と同じく代替わりするとの噂がある。
「ただし林の長男は、3年前、『週刊文春』に不倫疑惑が報じられた。本人は否定したが、支持は広がりづらい」(地元関係者)
神奈川18~20区
自民党が苦境に立たされている原因は、裏ガネ問題だけではない。旧統一教会のイベントに複数回参加したとして、大臣を辞任した山際大志郎(神奈川18区)は身内からも反感を買っている。
「地元の自民党県議が、山際の支部長就任に反対して党員資格停止処分になるなど混乱が続いています。強権的な山際の態度に反感を持っている市議もおり、苦戦が予想されます」(地元関係者)
愛知5区の神田憲次は、税金滞納で財務副大臣を辞任した問題が尾を引いている。
「相手の立憲候補・西川厚志は衆院副議長を務めた赤松広隆の秘書で、赤松が持っていた運輸労連などの票が回るため、逆風の神田は勝てないだろう」(自民党関係者)
後編記事『【6月解散総選挙】与党過半数割れ! 落選する「裏ガネ議員」全実名を大公開…サヨナラ岸田総理、そして「あの男」が帰ってくる【西日本編】』につづく。
「週刊現代」2024年4月27日・5月4日合併号より
週刊現代(講談社)
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