( 165673 )  2024/05/01 02:44:47  
00

【お金は知っている】 

 

拙論は23日付の産経新聞コラム「経済正解」で、「日銀利上げで円安阻止は無理だ」と論じたが、日銀は25、26日に開かれる金融政策決定会合で円安加速の影響について議論する。 

 

植田和男日銀総裁は18日、米ワシントンで開かれた主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で、円安進行について「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更もありえる」と述べ、追加利上げを辞さない構えを示していた。 

 

前日に開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は「為替の過度な変動は経済に悪影響を与える」との認識を再確認した。神田真人財務官の説明では、7年前の声明に明記された「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に対して悪影響を与え得る」との認識が「肝となる」というが、「古証文」にすがるとは、苦心のほどがしのばれる。肝心の米当局は堅調な需要の拡大から、物価上昇圧力が去らない。ドル高はその点、インフレの鎮静効果があるので放置するのだ。 

 

焦る日本側はG7に先立って開かれた会合でウォン安に動揺する韓国を抱き込んで、米側に泣きついた。イエレン米財務長官が日韓両国の懸念に一応耳を傾け、日米韓財務相声明では「最近の急速な円安およびウォン安に関する日韓の深刻な懸念を認識しつつ、既存のG20のコミットメントに沿って、外為市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」となった。 

 

財務省の焦りを目の当たりにした植田総裁は、自身の重なる利上げ発言もあって、円安問題を政策決定会合の俎上に乗せざるを得ないのだろう。植田氏に関しては、東大経済学部宇沢弘文ゼミの仲間でエコノミストの森永卓郎さんが「植田さんは経済学者というよりも政商といったところ」と評する。要は空気を読むのにたけており、要人に深く取り入る術を心得ているというわけだ。 

 

それにしても、需要が低迷を続ける実体経済を無視してまで、ドル高・円安進行を止められるはずのない利上げにまで日銀が前のめりにならなければならないほど、政策に窮しているというのはヘンである。 

 

何しろ、日本は世界最大の対外債権国であり、昨年末で約1500兆円に上る海外金融資産を保有している。グラフを見れば、円安の進行と並行して膨れ上がっている。その海外資産の一部は、外貨準備高で183兆円だが財務省は自省の利権がからむために取り崩そうとはしない。 

 

 

ならば、残る民間資産の一部でも還流させるようにすれば、大規模な円買い、ドル売りが起きる。還流策の代表例が「リパトリ減税」で、海外資産を本国に送金する企業の法人税を減税する。米国では2005年の1年間に限り、当時のブッシュ政権が「本国投資法」に基づき実施し、ドル相場を上昇させた。 

 

日本のリパトリ導入に後ろ向きなのは減税を嫌う財務省なのだが、岸田文雄首相が決断すれば済むはずだ。 (産経新聞特別記者 田村秀男) 

 

 

 
 

IMAGE