( 166447 )  2024/05/03 15:04:57  
00

日本維新の会の和歌山県支部の林隆一県議が、党の方針に従わなかったことを理由に離党勧告を受けて離党したことが報道された。

林県議は寄付についての誤解が生じたと主張し、離党に至った。

これに続いて、和歌山市の市議も除名や離党勧告の措置を受けた。

さらに、離党した県議の妻は衆議院議員として維新に所属しており、その状況も複雑さを見せる。

維新の会の組織に不満を持つ議員もおり、総支部代表に不満を抱く声も上がっている。

これらの辞任や離党を受けて党の地方組織が弱まる状況で、党勢の拡大は難しいと指摘されている。

(要約)

( 166449 )  2024/05/03 15:04:57  
00

3月4日、万博会場を視察した日本維新の会の馬場伸幸代表(写真:共同通信社) 

 

 前回記事で、長崎県の日本維新の会に所属していた地方議員が相次ぎ離党した事例を紹介したが、今回は和歌山県での同様の事案を振り返ってみよう。 

 

【写真】大阪・関西万博のシンボルである、建設中の木製の大屋根「リング」を上空から望む=4月13日撮影 

 

 (前回記事)「立憲全勝」の衆院補選、「惨敗」自民党と並んで大ダメージを受けた維新の会 

 

■ 寝耳に水の「離党勧告」 

 

 日本維新の会は、「身を切る改革」として、所属議員に対し、議員報酬の一定割合を被災地などへ寄付することを求めている。昨年10月10日、この党の方針に従わなかったとして、日本維新の会の和歌山県総支部は、林隆一県議(和歌山市選出、2期目)に対し、離党勧告することを決めた。 

 

 同月25日、林隆一県議が和歌山市で「反論」の記者会見を開いた。 

 

 1期目の任期中には寄付が難しかった林議員は、2期目を狙う昨年4月の選挙前の公認申請時に、当時の総支部幹事長に対して寄付が2期目の選挙後になることを報告し、了解を得ていたという。その結果、党の公認を受け、県議選でも勝利。そして約束通り、再選後の6月に前任期分として、和歌山県内で台風の被害を受けた紀美野町に支援金として500万円を寄付したという。 

 

 ところが、総支部は11月10日に開いた「党紀委員会」において、1期目の任期中に寄付していなかったことを問題視し、林議員の離職勧告処分を決めてしまった。林議員は異議を申し立てたが、退けられたという。 

 

 林議員は会見で、決められた割合を寄付していない議員が他にいるのに処分対象にはなっていないともいい「平等性に欠ける」と指摘。「特定の党員を狙い撃ちにした処分で、相当性が欠け無効だ。邪魔だから処分するというのは到底納得できる話ではない」と訴えた。 

 

 だが党が方針を変えることはなく、結局林議員は、11月27日までに離党しない場合は除名すると党から通告されていたため、関係者と協議の末、離党に至った。 

 

■ 市議に対しても除名・離党勧告 

 

 これに続いて和歌山県総支部は、12月5日、和歌山市議会議員の2人に対し除名と離党勧告の処分を下した。 

 

 除名処分を受けたのは、和歌山市の志賀弘明市議。議員報酬の一部寄付について適切な実施報告を行わなかったなどというのがその理由だ。また離党勧告を受けたのは、同じく和歌山市の新古祐子市議だ。新古議員は、和歌山県総支部の許可を得ることなく、前述の林隆一県議の記者会見に同席し発言したことが理由だ。 

 

 新古議員は現在は日本維新の会を離党し、別の会派に属している。 

 

 「新人議員が記者会見に出る場合には事前に党の了解を得なければならないということで処分を食らってしまいましたが、正当なことを言っているのに、その発言内容には全く触れず、ただ党に報告しないで了解を得ていなかったというだけで『離党勧告』というのは呆れるしかありません。 

 

 林さんの主張は誰が見ても理路整然としていますから、それに同調するのは当然のことだと思っていますが、こんなことでイチャモンをつけてきた党に対してはこちらから願い下げです。離党してサバサバしました」(新古議員) 

 

 

■ 離党した県議の妻は維新所属の衆院議員 

 

 維新を離れてさっぱりした人もいれば、複雑な状況の人もいる。前出の林隆一県議がそうだろう。 

 

 林県議の妻・林佑美氏は、維新所属で和歌山一区選出の衆議院議員なのだ。 

 

 和歌山県知事選に出馬するため衆議院議員を辞職した岸本周平氏の議席を争う補欠選挙に市議会議員を辞職して立候補し、昨年4月に当選している。夫婦そろって維新の会の公認を受けて、妻が衆院議員、夫は県議会議員になっていたのである。 

 

 ところが、昨年10月の騒動で夫の隆一氏は離党せざるを得なくなった。一方、妻の佑美氏は現在も維新の会所属の衆院議員として国会で活躍中だ。 

 

 「夫婦仲はいたって良好です。私としては処分について全く不満がありますが、仮に県総支部の執行部を訴えても、妻が和歌山維新の会の代表になる可能性もあり、そうなると結果的には夫婦で裁判を争うことになりかねないので、ここは訴えをやめることにしています」(林隆一県議) 

 

 夫である林隆一県議は胸中を次のように明らかにした。 

 

 「私としては維新の会への賛同者を増やす気持ちで活動を頑張ってきたつもりでした。妻も昨年春の補欠選挙で市議から衆院議員になって議席を確保しています。さあ、これからと思っていたのに、些細なことで離党勧告というのは全く寝耳に水で、私の事を狙い撃ちにしたとしか思えません。党の執行部でも寄付をしていない者がいるのにその責任は追及されず、私一人が狙い撃ちにされたのです。考えられる理由は、私が維新の会に対し堂々と意見を言っていたのが煙たかったのではないかということです。私は党にとって有益な意見と信じて発言してきましたが、執行部は私の存在が邪魔だったのかも知れません。 

 

 維新の会の馬場代表とは旧知の仲ですので、今回の件を善処して欲しいとも連絡をしましたが、『処分に関しては総支部に一任しているので口出しができない組織となっているから』と断られました」 

 

 

■ 長崎と和歌山の総支部トップは同じ人物 

 

 実は維新の会の長崎県と和歌山県の総支部の代表は同じ人物が務めている。一般的には維新の会の国会議員が総支部代表になるのが恒例となっているが、当時は長崎・和歌山ともに国会議員がいなかった。そのため大阪1区選出の衆院議員・井上英孝氏がその座を任されていたという。井上議員が総支部代表を務める長崎と和歌山から相次いで離党者が出たということになる。 

 

 長崎・和歌山両県で維新の会を離れた議員たちからは、井上議員に対する不満の声が上がっている。 

 

 前回記事で触れた、長崎市で離反した梅本圭介市議が言う。 

 

 「これは総支部代表である井上さんの統治能力の問題と言えます。意見をくみ上げることをせず、『文句を言う奴は切れ』とばかりの処分ですから、党に対して意見を言う者は出なくなります。和歌山でも同じようなことをしていたと聞いて、維新の会に将来はないと感じています。ケチの付き始めはなんといっても万博開催ではないでしょうか。最初の予算を遥かに超える予算を計上して批判を浴びましたが、維新の会が先頭を切って誘致を成功させたのに、今では万博誘致の実績について口をつぐんでいる有様です」 

 

 和歌山の林県議もこう語る。 

 

 「昨年春すぎごろから万博予算が膨れ上がっていることやパビリオン建設に遅れが出ていることが報道されはじめました。春の統一地方選までは『万博は維新が誘致してきました』と選挙戦で強調していたのに、ネガティブな報道が出て来てからは会の内部でも万博に関する会話が一切出なくなっていました。なぜこのような状況になってしまったのかの議論は一切なく、あえて触れないような雰囲気を作ったのは執行部の責任ですし、総支部代表を任されている井上さんの統治能力にも疑問があります。 

 

 健全な議論があるから良い政治ができるはずなのに『臭い物には蓋』的な運営をしているのは情けないし、私としてはこのような言論統制をする状態の維新の会から離れて気分的にはさっぱりとしていますが、妻には国会議員として頑張って欲しいという気持ちは変わっていません。3人の子供がおりますが、国会中は東京で暮らしているので私が世話を引き受けていますし、妻の母親も毎週のように京都から来てくれて世話を手伝ってくれています。大変ですが有権者のために良い政治を行う目標に向けて頑張るつもりです」 

 

 4月28日に行われた東京・島根・長崎の衆議院補選で、「叩き潰す」はずだった立憲民主党に惨敗した日本維新の会。選挙で勝つためには強力な地方組織が必要なのに、肝心の地方議員がボロボロと党を離れていくような状況のままでは党勢拡大は望むべくもない。 

 

神宮寺 慎之介 

 

 

 
 

IMAGE