( 166554 ) 2024/05/03 17:04:02 0 00 写真:iStock
『2050年には全5261万世帯の44.3%に当たる2330万世帯が1人暮らしとなり、うち65歳以上の高齢者が半数近くを占める』
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先月に厚労省の国立社会保障・人口問題研究所が公表したこの数字は一時Xでトレンドにランクインするなど、衝撃の波紋が広がっている。
“人生100年時代”と言われる一方で、歯止めの効かない少子高齢化が進む日本。先行きの見えない状況下で老後を迎えるにあたり、私たちはどう備え対処していけばよいのか。
お金、健康、法律など、各専門分野のスペシャリスト8人が老後を解説する『死に方のダンドリ』ではそんな備えと対処について詳細に明かした一冊だ。本稿でその一部を抜粋・編集。「老後困らないためのヒント」をお伝えする。
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「20万時間」――。
これは、あなたが定年退職してから過ごすことになる、老後の人生の長さです。
この永遠のようにも思える時間を、多くの日本人はお金の不安を抱きながら生きていくことになりそうだ、と聞いたら、あなたは驚くでしょうか。
厚生労働省が公表した第23回生命表(2020年版)によると、65歳時点の平均余命(平均してその後何年生きられるか)は、男性は約20年、女性は約25年です。
仮に、あなたが65歳で退職して25年生きるとしましょう。25年間は時間に換算すると 21万9000時間です。つまり、およそ20万時間があなたの”老後”ということになります。
この膨大な時間を、お金の心配なく楽しく暮らせれば万事OK、何の問題もないでしょう。しかし、現実は少し違うようです。
総務省の家計調査報告書を過去10年にわたって追っていくと、高齢世帯の赤字額の平均値は、夫婦世帯で月5万円、単身世帯で月3.5万円です(実収入から支出を引いた不足分の2010~2019年における平均値。2020年以降はコロナの影響により支出が急速に落ち込んだため、平均値の計算からは除外)。
つまり、夫婦世帯なら5万円×12カ月で年間60万円、単身世帯なら3.5万円×12カ月で年間42万円ものお金が不足することになります。
老後生活を仮に25年間とすると、年金をもらっていても夫婦で1500万円(60万円×25 年)、単身でも1050万円(42万円×25年)が不足することになります。
この数字が何を意味するか、もうおわかりでしょう。
退職した時点でこれだけのお金がなければ、寿命が尽きる前に生活資金のほうが底をついてしまうのです。
これは、現在の高齢世帯の赤字額から推計した数字です。そのため、将来の高齢世帯はもっと苦しくなる可能性が高いと思われます。なぜなら、私たちが将来もらえる年金は今より少ない可能性が極めて高いからです。
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厚労省の「2019(令和元)年財政検証結果レポート」によると、現役時代の所得の何割を年金でカバーできるかを表した年金の所得代替率は、2019年時点では61.7%でした。2052年(令和34年)には、それが36(現状の61.7%の6割弱)~52%(同8割程度)まで減少すると推定されています。
つまり、将来の年金は、今の高齢者が受け取っている水準の6~8割に減ってしまうということです。
しかも、日本人の寿命は今もなお延び続けています。内閣府によると、1950年の日本人女性の平均寿命は62歳、男性は58歳でした。1990年には82歳、76歳になり、2021年には88歳、82歳になりました。内閣府の予測では、2040年には90歳、84歳になります(図1)。
この30年間で日本人の平均寿命は6年も延び、65歳を迎えた女性の2人に1人、男性の場合は4人に1人が90歳まで生きることが予想されています。
実際のところ、高齢世帯は少ない収入でやりくりしている人が過半を占めています。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯の平均所得金額は332.9万円で、高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯(689.5万円)の約半分です。
内閣府の「2019年度 全国家計構造調査」によれば、65歳以上の単身者の3割は貧困状態にあります。つまり、一人暮らしの高齢者が3人集まると、そのうち1人は貧困に苦しんでいるという状況になります。
「こんなに苦しいんだから、国がなんとかしてくれるに違いない!」と思うかもしれません。
けれども、国はすでに高齢者を支え切れなくなっています。
さらに<【後編】医療はぜいたく品、国も支え切れない…これから日本を襲う「お金が尽きて死ぬ時代」に備える“ダンドリ”の正しい知識>でも、日本の現在から眺めた未来の状況を明かします。
冨島 佑允(クオンツ、データサイエンティスト)
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