( 168910 )  2024/05/10 16:24:24  
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9日に発表された実質賃金は前年比マイナス2.5%で、リーマンショックを超える24か月連続の減少となりました。「最低賃金じゃ生活できない」非正規労働者の人からも悲痛な声が。私たちの賃金はいつ上がる? 

 

【写真を見る】実質賃金はいつ上がる?「最低賃金にはりついている」非正規で働く人からも悲痛な声【news23】 

 

■「実質賃金」24か月連続減少 過去最長「1社じゃムリ」 

 

物価は上がっているのに、会社が給料を上げない。暮らしは厳しくなる一方です。 

 

給与に物価の影響を反映させた実質賃金がまた減りました。2024年3月は前の年の同じ月と比べてマイナス2.5%。 

 

減少は丸2年におよび、リーマンショック前後の23か月を超え、過去最長です。 

 

厚労省は「物価の上昇に対し、賃金の伸びが追いついていない状況が続いている」としています。 

 

非正規で働く人たちが賃上げを求める“非正規春闘”。107社中48社からは賃上げの回答がなく、59社からは回答があったものの、平均3~4%ほどの賃上げだといいます。 

 

非正規春闘 報告会 

「非正規労働者への賃上げ波及は一部に留まったとみています」 

「もう一切賃上げ要求に対応しない会社もあると」 

 

デモ参加者 

「最低賃金じゃ生活できないぞー!」 

 

都内の倉庫で働く川邉隆さん(57)は、ここ5年ほど常に最低賃金(東京都 時給1113円)。賃金が上がるときは、東京都の最低賃金が上がるときで、自分は「最低賃金にはりついている」といいます。 

 

川邉さん 

「これからダブルワーク先に向かう予定です。とても1個だけじゃ無理なんですね」 

 

大企業の賃金アップが波及して、自分の給料も上がるかもしれない。その期待は裏切られ続けています。 

 

川邉さん 

「全く恩恵はないですね。昼食抜きでやっている職場の人もいます。私たちの本当に苦しい状況を理解してもらえているのかな」 

 

■非正規春闘 満額回答とはいかず… 

 

小川彩佳キャスター: 

大企業からは景気のいい話題もきこえる中、非正規雇用の春闘は今回の回答も厳しいものでした。 

 

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん: 

企業側も苦しいとはいえ、格差を招きかねません。経済全体にも良くない影響がありますし、エッセンシャルワーカーの方もいるはずですから、影響は苦しいものがありそうです。 

 

 

小川キャスター: 

10%の賃上げを求める中、回答は平均3~4%、要求に応じない会社もあったということです。これでは格差が広がっていくばかりですよね。 

 

23ジャーナリスト 片山薫 記者: 

大企業と中小企業で、やはりパートでは格差があるようです。 

 

ただ、今回の春闘で、スーパー「ベイシア」は2年連続で5%の賃上げをパートに対して行い、回転寿司チェーンの「スシロー」でも一部店舗で10%の賃上げがあったということで、非正規春闘は価値があると感じました。賃金を求めていくことはすごく大事だということが、今回、明らかになったと思います。 

 

藤森祥平キャスター: 

全体として生活の厳しい状態が長く続いています。実質賃金は、過去最長の24か月連続で減り続けているということです。 

 

■「実質賃金」いつプラスに? 

 

小川キャスター: 

実質賃金はいつプラスに転じるのでしょうか。 

 

23ジャーナリスト 片山薫 記者: 

今はずっと物価が賃金より高く、上がっている状態ですが、これから春闘の結果が少しずつ波及して、5%のベースアップ分を考慮すると、名目賃金が3%ほどまで上がるとみています。 

 

物価は電気・ガス代などの補助が無くなりますが、どこかで賃上げ分、名目賃金が上回るタイミングがあるのではないかといわれていますので、2024年の夏から秋にかけて、一度はプラスになるのではないかなとみられています。 

 

ただ、これまで24か月連続で下がってきているので、少しプラスに転じるからといって簡単に元に戻るわけではありません。 

 

藤森キャスター: 

ずっと下がっているわけですから、少しでは回復したことになりませんよね。 

 

23ジャーナリスト 片山薫 記者: 

1~2か月良くなっただけではあまり意味がありません。 

 

■貯蓄切り崩し「教育」はマイナス9.8% 

 

藤森キャスター: 

明治安田生命は、家計に関するアンケートを行いました。これまで2年連続で上昇していた世帯の貯蓄額、2024年は2023年から175万円減っていて、みなさん貯金を切り崩して生活しているようです。 

 

 

<世帯の貯蓄額(平均)> 

2023年:1478万円 

2024年:1303万円(175万円減少) 

 

20代学生 

「ライブにすごく行くので、服とかは安いところで買います。(Q.ライブのグッズを控える?)めっちゃ控えています」 

 

40代会社員 

「息子たちで学費がかかるので、私と妻の買いたいものをできる限り我慢しています」 

 

10代高校生(アルバイト) 

「スターバックスコーヒーに行き過ぎない。1日に2回みたいなことがあったので、それはさすがにやめておこうかなって」 

 

30代会社員 

「貯金はもう底をつきそうですね。給料もなかなか上がらないので、減っていく一方」 

 

60代パート勤務 

「時給は上がっても働ける時間は短い。(物価が)昔みたいに戻るとは思わないけど、もうちょっと下がってくれるか、賃金が上がるか。一番は賃金が上がればいいですよね」 

 

藤森キャスター: 

2023年の家計調査によると、2人以上世帯で月に消費に回した金額は前年比2.6%減っていて、3年ぶりのマイナスです。 

 

そのうち、塾や補習教育など「教育」は9.8%のマイナスです。また、支出の約3割を占める「食料」も2.2%マイナスとなっています。 

 

<月平均消費支出(2人以上の世帯)> 

29万3997円 

実質-2.6%(3年ぶりの減少) 

 

<教育> 

1万448円 -9.8% 

 

<食料> 

8万6554円 -2.2% 

 

小川キャスター: 

教育の部分で削られていくのはどう思いますか。 

 

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん: 

全世帯でマイナス9.8%ではなく、削らなくていい家庭は削っていないし、削っている家庭はもっともっと削っている状況なのではないかと思います。 

 

教育というのは将来的に格差を埋める役割も持っているはずですが、これでは格差が広がってしまいかねませんし、むしろ、教育が階級の拡大再生産に繋がってしまうことにもなりかねません。 

 

最近は“体験価値”を評価する仕組みや、非認知能力を問うような入試制度に変わっていたりしますが、そうしたものは「課金」をしないと得られないものも多いです。 

 

制度の面でも、お金の差が大きくなってしまっていることがこの国にとっても逆風ですし、お金がないことが教育を受けられないポイントになってしまうのは、将来の日本を考えると不安な点です。 

 

 

■円安に奥の手?「リパトリ減税」とは 

 

藤森キャスター: 

円安も逆風といえるかもしれません。現在、1ドル=155円台半ばを過ぎ、156円も見えてきそうな状況です(9日午後11時すぎ)。 

 

このまま円安が進めば、物価高になるリスクがありますので、実質賃金はますます上がりにくくなりそうですね。 

 

23ジャーナリスト 片山薫 記者: 

1ドル=160円台であれば何とか賃金が物価を超えるタイミングがあるのではないかといわれていますが、1ドル=170円台になると、一度も物価を超えないまま、物価も上がってしまう可能性がありまして、円安は懸念されます。 

 

「リパトリ減税」とは、海外の資産を本国に送金する際、法人税を減税するというものです。政府も対策として、「リパトリ減税」を検討しているのではないかといわれています。 

 

円安の根本的な原因のひとつに、日本企業が輸出などで海外で儲けたお金をドルで持っていて、ドルで投資などをするという状況があります。 

 

藤森キャスター: 

優遇措置で円を買ってもらおうという流れですね。 

 

小川キャスター: 

検討段階ではありますが、「リパトリ減税」の実効性はどんなものなのでしょう。 

 

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん: 

円に変えて日本国内で投資に回せる状況なのかが大事ですよね。 

 

円に変えるだけではなく、しっかりと国内需要が呼び込めるような環境なのかというのが鍵を握りそうです。 

 

小川キャスター: 

日本の底力が改めて問われています。 

 

■「みんなの声」は 

 

NEWS DIGアプリでは『実質賃金』などについて「みんなの声」を募集しました。 

Q.「実質賃金」いつ上昇に転じると思う? 

「春闘反映した4月分から」…1.8% 

「6月の定額減税後」…2.5% 

「物価高が落ち着いてから」…22.1% 

「当分上昇しない」…70.1% 

「その他・わからない」…3.5% 

 

※5月9日午後11時10分時点 

※統計学的手法に基づく世論調査ではありません 

※動画内で紹介したアンケートは10日午前8時で終了しました。 

 

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<プロフィール> 

 

伊沢拓司さん 

株式会社QuizKnock CEO 

東京大学経済学部卒 クイズプレーヤーとして活躍中 

 

片山薫 記者 

23ジャーナリスト 元経済部筆頭デスク 

財務省や経産省・農水省などを担当 

コロナ禍では政府のコロナ対策取材を指揮 

 

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