( 169315 )  2024/05/11 23:59:24  
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和久井学容疑者(本人のFacebookより) 

 

 5月8日、警視庁新宿署は殺人未遂容疑で1人の男を現行犯逮捕した。川崎市在住で自称配送業の和久井学容疑者(51)は同日午前3時ごろ、無職の平澤俊乃さん(25)が住む西新宿のタワーマンションの敷地内で待ち伏せし、腹部や首など数十箇所をナイフで突き刺したのだ。 

 

【画像】亡くなった平澤俊乃さん 

 

「平澤さんは約1時間後、搬送先の病院で死亡が確認された。和久井は前日の夜から平澤さんを待ち伏せしていたと供述。マンション1階のコンビニから出てきた平澤さんに声をかけ、犯行に及んだ。刺し傷は背中にもあり、逃げる平澤さんを追いかけて刺したものとみられる」(社会部記者) 

 

  待ち伏せした理由として「お金を取り返すために行った」と和久井は話すが、もともとガールズバーのキャストと客の関係だった2人の間では、以前から金銭トラブルが燻っていた。 

 

「和久井は平澤さんが出したお店の常連として知られ、オープン時には和久井の名前で花を出したりもしていた。平澤さんに恋愛感情を抱いた和久井は結婚を迫り、自身の車やバイクを売却して約1000万円以上の金を平澤さんに渡している。警察は殺人に容疑を切り替えて捜査を進めています」(同前) 

 

 実は和久井は、約2年前にも平澤さんに対してストーカー行為を行い、警察沙汰になっていた。和久井は警視庁人身安全対策課からストーカーの文書警告が出た同日、神奈川県警川崎署に訪れ、こう訴えた。 

 

「お金を返してもらいたくて女性を待ち伏せしていたら、警察から注意を受けた。被害に遭った自分がなぜストーカーと言われなければいけないのか」 

 

 警告を無視して平澤さんの自宅を待ち伏せしていた和久井を、同課はストーカー規制法違反で逮捕している。 

 

 そうした和久井の執拗なストーカー行為に悩まされていた平澤さんは、和久井の申し出を拒絶。逆上した和久井は果物ナイフ2本を所持し、平澤さんのもとに向かったのである。 

 

 25年の生涯を突然奪われた平澤さんはどんな人物だったのか。新潟県上越市出身の彼女は、18歳のころにはすでに銀座のキャバクラで働いていたという。源氏名名義で作成された自身のSNSでは、当時の奮闘ぶりをこう振り返っている。 

 

〈毎日出勤して指名のお客さん被ってたとしてもフリーが来店したら必ず席付いてお客様ノートと来客、売上を毎日欠かさず手帳に書いてお客さんゼロスタートから4ヶ月目でやっとNo.1になれて辞めるまでずっとその地位を貫いて今の私がいる〉 

 

 若くして、キャバクラに関する持論を長文で投稿することもあった。 

 

〈お客様だけ飲んで自分は何も飲まず会話する場所 それはキャバクラではない〉 

 

〈アンジェラベイビーでもあるまいし 黙っててもアルマンドは降ってこない〉 

 

 そんなプロ意識を持つ平澤さんは、早々に自分の店を持つことになる。上野・仲町通り。下町ならではの喧騒の中、キャバクラ「C」がグランドオープンしたのは、2021年の暮れだった。近隣の飲食店関係者が明かす。 

 

「開店当時、お店はすごく繁盛していた。コロナの時期だったからドアは開けっぱなしで、中からポン、ポンとシャンパンボトルを開ける音がひっきりなしに聞こえてきました。業者の車も来ていたので、シャンパンタワーをやっていたのだと思います。ママさんはすごく細くて、海外のモデルさんみたいにスタイルが良かった。いつも白いドレスを着ていて、着物を着ている日もありました」 

 

 ところが――。 

 

 

「その翌年の夏前、警察がお店に来ているのを偶然見てしまったんです。黒服のスタッフと警察官が話していて、『ストーカーについて新宿署に相談してます』と漏れ聞こえてきた。その前後くらいからお店は休みがちになって、しまいにはお店のインスタグラムで『ストーカーがいるためしばらくお休みします』と告知をしていました」(同前) 

 

「C」はあえなく2023年1月に閉店。それから約1年半後、平澤さんは件のストーカーにより、その生涯を閉じることになる。 

 

 事件後、小誌記者は上越市内に住む平澤さんの祖父のもとを訪れた。平澤さんの祖父母はかつて園芸店を営んでおり、彼女が「C」をオープンさせた時にも店の名義で開店祝いの花を贈っている。 

 

――こちらに俊乃さんのお祖父様が住んでいると。 

 

「それでね、僕の方は、何も言うことも、ノーコメントでしてね」 

 

――俊乃さんに以前お花を贈られている? 

 

「それはね、昔なもんでちょっと記憶がないですね」 

 

 憔悴しきった様子の祖父に「俊乃さんの人柄をしっかり伝えたい」と小誌記者が伝えると、俯き、絞り出すようにこう答えた。 

 

「それはね……。可愛い孫でしたよ……。それ以外にはないですね」 

 

 身勝手すぎる言い分で命を奪った男の罪は重い。 

 

「週刊文春」編集部/週刊文春 

 

 

 
 

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