( 169365 ) 2024/05/12 00:56:43 0 00 福岡県議が参加した海外視察の日程
福岡県議会の主要会派代表らが4月にアフリカや中東を公費で訪問したことをきっかけに、県議会の海外視察のあり方が疑問視されている。視察後の報告義務がなく、視察に関する情報や成果が広く県民に公表されていないためだ。他県ではホームページ(HP)で報告書を公開するほか、費用の上限を決めている議会もあり、識者は「公費を使う以上、目的を明確にして成果を公表すべきだ」と指摘する。(手嶋由梨、山本光慶)
【一覧表】各議会の海外視察のルール
県議会の香原勝司議長は今月7日、4月11~19日の視察報告書について“異例”の開示を行った。派遣を議決した2月定例会では、視察先を南アフリカとケニアの2か国としていたが、実際はドバイも訪れたことが明らかになり、報道機関から要請があったためだ。ただ、報告書のHP公開については「未定」とした。
報告書では「危険レベルが高い」とされるケニアなどに長期滞在できず、治安が良くイスラム圏の慣習も学べるドバイを追加したと説明。訪問した県議16人のうち公費派遣は5人で、国家公務員の出張費などの基準を定める旅費法に準じて航空機はビジネスクラスを利用した。費用の総額は「精査中」として見積もりも含めて明らかにしなかった。
県議会では、議員に対して視察後の報告書作成の義務はない。同行した議会事務局の職員が上司に報告する「復命書」はあるが、開示請求が必要という。
福岡を除く九州と山口の各県議会は、報告書をHPなどで公開している。大分県議会では議員は帰国後、60日以内に議長に報告書を提出することが定められている。佐賀県議会は、各議員の個別の報告書を掲載しているほか、2022年度のフィンランドの視察では報告会も開いたという。
費用に関してルールを明確化している議会もある。福岡市議会は、任期中の旅費や通訳料の上限を1人80万円に設定。熊本県議会は100万円で、議会事務局の担当者は「議会内部の申し合わせに『経費節減に努める』との記載がある」と説明する。18年のスペイン視察で昼間の飲酒が問題になった北九州市議会は、事前に外部の有識者を加えた公開審査会を開くなど、より厳格な運用としている。
九州大の出水薫教授(政治学)は「政策形成のために海外の先行事例を視察すること自体は意義がある」とした上で、▽地域にどのような課題があるか▽視察で確認すべき論点や情報は何か▽政策づくりにどう生かすか――といった点を明確にする必要があると指摘。「公費を使った『公務』であり、こうした情報は議会として当然公表すべきだ」と話す。
費用については「限られた財政の中で、いかに効率よく予算を配分するかは政策能力の基礎。議会が青天井で公費を使うようでは、行政を適切に監督できるのか疑われても仕方がない」とし、一定のルールは必要との考えを示した。
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