( 170300 )  2024/05/14 17:20:05  
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 妻に頭が上がらず、マイカーやマイホームの購入に失敗して生活設計に狂いが生じ、72歳まで家のローンを返し続けなければいけない…。そんなプレッシャーのもと現在再雇用で働く63歳・男性会社員の酒井さん(仮名、以下同)を〈定年前は「年収1000万円」あったけど…72歳まで家のローンを返すはめになった63歳大企業社員の後悔〉で紹介した。 

本稿では引き続き、気になる再雇用のおカネの話を中心に疑問をぶつけていく。 

 

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 聞き手:佐藤大輝(33歳・逃げ切れない世代) 

 

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 ーー酒井さんは大企業で40年間以上も勤めたわけですが、年金はどれくらい入る予定なんですか?  

 年金は夫婦合わせて25万円くらいになるはずです。国民年金が13万円、厚生年金が12万円。ここに個人年金が月6万円ほど入るので、老後は月30万円くらい入ってくる計算です。 

 

 ーーすごい…。逃げ切り世代って強いですね 笑。個人年金を抜きにしても、まったく働かないで年収300万円も入ってくるんですね。 

 

 仕事は大変でしたけど、時代的にラッキーでした。給料も、50歳を超えたくらいで頭打ちになったんですけど、それでも1000万弱は頂いていたので…。もし自分があと20歳くらい若かったら、たぶん定年まで働かずに転職してるんじゃないかな。今後ウチの会社がどうなるかはわかりませんが、私たちの世代と同じくらいの給料は出せないでしょうし。ちなみにウチの会社は早期退職すると退職金が1.5倍くらい割増で貰えるんです。それを貰って、自分が輝ける会社を探しに行く人が、私の周りで少しずつ増えてる印象があります。 

 

 ーー年収1000万円ってどういう内訳だったんですか?  

 基本給が40万円で、ここに役職手当が20万円乗ります。賞与は年間で200万円くらいで、あとは手当ですね。単身赴任だったので、家賃は会社持ちで0円。これとは別に、単身赴任手当が7~8万円くらい出てました。 

 

 ーーこれが再雇用後はどのように変化するのですか?  

 基本給と役職手当は20%カット。賞与が30%くらいカットされます。年収だと25%減くらいになるのかな。 

 

 ーーあ、でも思ってたよりマシな感じですね。 

 

 私もそう思ってたんですけど、実は、ここからもう一段下がります。定年後は1年更新で、労働者の希望があれば65歳までは働けるんですけど、最終年までには元の給料の半分以下になるんです。具体的には基本給が40~50%カット。役職手当は全滅。賞与は60~70%カット。年収だと300~400万円くらいまで落ちます。 

 

 ーーかなりエグイ減らされ方でした。大変失礼しました。 

 

 

 ーー月々の生活費について教えてください。 

 

 毎月のローンが15万円、だったのが退職金で1200万円を返済。残りのローンが800万円になったので、今は月6万円の返済で済んでます。マンションの管理費は4万円くらい。生命保険1万円。火災保険5千円。固定資産税は月で割ると1万5千円。これで全部13万円。昨年マイカーは売却したので、月々の駐車場代2万円と車検代はカットできました。 

 

 ここまでが私が把握している出費で、これとは別に、妻に毎月20万円を渡してます。このお金は食費、水光熱費、医療費、携帯代、雑費、愛犬にかかるお金の分らしいんですが、酒井家のブラックボックス。妻の絶対領域なので、詳細は不明です。 

 

 まとめると、定年前は月50万円くらい。再雇用の今は月35万円くらいの生活費です。あ、だけど若い頃は学費もあるのか。今の一人暮らしのお金もそうだし、んー、よくわからないですね。 

 

 ーー旅行とかにもお金を使ったりするんですか?  

 いえ、家族旅行は20年以上してないです。どうしてもお金の問題があって…。それから、ウチの家族はみんなゴーイングマイウェイ。5人家族なんですが、たぶん全員で顔を合わせたのは3年前、私の父が亡くなった葬式が最後なんじゃないかな。旅行しようって言っても、たぶん集まらない気がします。今年のお正月なんて、長男は帰省していたのに実家には寄らず、地元の友達と飲んでそのまま帰ってしまいました。理由を聞いたら、「この前(半年前)友達の結婚式で帰ったとき会ったでしょ」って言われちゃいましたよ。 

 

 ーーなるほど 笑。ところで給料カットなど、再雇用の知識ってどのタイミングで学んだんですか?  

 自分で勉強を始めたのは58歳とか、だいぶ直前になってからです。仕事が忙しくて、とてもとても手が回らなくて。一応、会社としてシルバー研修はしてくれてたんですが。55歳くらいだったかな。老後に向けて備えましょう、みたいな内容で、そんなことはどうでもいいから職場の人手不足を解消しろと。こちとら土日関係なく毎日仕事漬けなんだから、総務はこっちの問題をなんとかしてくれよと。 

 

 

 ーー再雇用の契約終了後、生活費はどうされる予定なんですか。酒井さんの場合、年金だけだと少し足りなさそうですが。 

 

 マンションの管理人とか、アルバイトで月10万円くらい稼げればいいなって。完全に自業自得ですけど、ローンを返し終わるまではリタイアではなく、セミリタイアを目指す感じになりそうです。 

 

 ただ、チャンスかなと思う部分もあります。再雇用が終了する65歳以降は、今みたいに妻と別居を続けることは経済的にできなくなるので。ここを交渉材料に…、はい。購入者本人は全部で5年間くらいしか住んだことのないマイホームで、妻にガミガミ言われながら暮らすのが私のささやかな夢です。 

 

 ーーまとめると…、サラリーマンが60歳以降も働く理由の一つに、家庭の平和を守る父としての責務があると。全国のお父さんを代表して、夢と希望に満ち溢れた定年後のライフプランついて、また改めてお話聞かせてください。本日はありがとうございました!  

 

佐藤 大輝(ライター) 

 

 

 
 

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