( 171010 ) 2024/05/16 16:51:12 0 00 補選に三戦三勝、それでも政権交代は遠い。立憲民主党には何が足りないのか Photo:JIJI
● 岸田政権が末期的状態でも 政権交代はまず起きない
岸田政権の支持率は極めて低く、政権交替すべきだというアンケート結果が48%を超えて(JNN調査)、俄然「自民党崩壊」「大きな変革の時代がくる」と期待が大きくなっています。
しかし、自民党への信頼は落ちているものの、野党の支持率も全然上がっていません。日経新聞が行った次期衆議院の投票先の調査結果では、自民26% 、立憲12% 、維新11%、公明7%となっています。また選挙結果については、みらい予想研のシナリオでは自民235、公明27と議席は減らすものの与党が過半数を大きく上回りました。立民は13減の83、維新が56増の97で、野党第1党が交代するという結果でしかありません。もう少し過激な予想をするNEWSポストセブンの予測でも、自民202 、公明20 、立憲131 、維新83 、国民10、 共産10 、その他8 と、立憲中心の政権交替は不可能です。
先日の補選で立憲民主党は三戦三勝して、勢いに乗っているのですが、野党が結束して政権交替に挑む姿勢がなく、立憲にもその意志がないようでは、自民・公明がなんとか過半数を確保することはできるでしょう。それが無理でも、国民民主か日本維新と結べば政権は存続し、大きな改革など起こらないという結果になります。
私は、日本社会党に先祖帰りしたかのように、政権攻撃は得意でも具体策のない立憲民主党の現在の状態に、国民が政権を任せる気持ちがあるとは思いません。しかし、日本を大きく変えるためには、自民党が一度下野する必要、いや一度解党するくらいの大変革が必要であり、そのためには、群小の保守系と自民の連立では不十分だと考えています。
そのため、別の角度から考えてみました。実は、政党支持率を元にした予測では、半数近い浮動票を計算できないからです。しかし、浮動票は私にも予測はできません。ならば、歴史に学びましょう。
日本と違い中国では、歴史上、何度も政権(王朝)が交替しました。その度に使われてきた指標が「天の時、地の利、人の和」という孟子の言葉です。この3つがそろっていれば、その王朝が天下をとる。たとえば、三国志の時代は魏の国が「天の時」を持ち、南方の呉の国が「地の利」を持ち、弱小で狭隘な蜀の国は「人の和」で勝負していました。
この観点から、立憲民主が主体となる大きな政権交替が起こる可能性について考えてみました。
● 日本の全政党を 中国の王朝になぞらえて評価すると?
・自民党……「天の時 最悪」「地の利 安心な選挙区なし」「人の和 派閥解消でバラバラ」 立憲民主党……「天の時 絶好機」「地の利 リベラル系野党の大きなライバルなし(これは不利にもなりうる)」「人の和 野党連合の総理候補が不在」
・日本維新の会……「天の時 保守派の自民離れ」「地の利 大阪のみ絶対(関東に友党を作るべき)」「人の和 人材の質の悪さが目立つ」
・公明党……「天の時 逆風」「地の利・人の和 いつもブレなし」
・国民民主党……「天の時 自民党の補完勢力としての期待」「地の利 維新ほど過激でない」「人の和 党首に信頼感なし」
・共産党……「天の時 自民党のウラガネを追及した功労者」「地の利 自民党候補次第で候補者調整ができる」「人の和 内部に不和が保守党・れいわなど小党……「天の時 自民党自壊」「地の利 重要自民党候補の落選に集中できる」「人の和 個人党首の魅力のみ」
・都民ファーストの会……「天の時 自民党に愛想を尽かしたが維新は信用できない自民寄りには、小池人気がまだ有効」「地の利 東京都知事選を控え、都民ファの活動さかんに」「人の和 都知事の後継者として橋下徹か前川喜平を選べば、後継者ができ、国政に小池が出馬できる」
● 立憲民主党が政権を奪取する ための「政策のススメ」
いかがでしょうか。どの政党も決め手を欠きます。だからこそ、立憲民主はリベラル政党として、過去を捨てるくらいの斬新でしかも保守層も安心できる政策を打ち出し、政権奪取に真剣になるべきなのです。具体的には以下のような政策が考えられます。
(1) 外交
「 非武装中立」「自衛隊の存在を認めない」といった建前の寝言をやめ、対ロ中の安全保障策について日米安保を肯定した上で、横田空域からの米軍撤去、日米地位協定の破棄を踏まえた日米安保の再構築。
(2) 憲法緊急事態条項の成立
先進国OECD加盟国38国中、30カ国はこの制度を持っています。大災害が起きたとき、私権を優先していては緊急事態対応ができません。今でも能登半島は、地震で倒壊した家の持ち主がわからず、復興のための工事ができない場所が続出しています。緊急事態条項があれば、まず復興に全力を注げるのです。立憲は憲法9条にこだわり、戒厳令的な法案に常に後ろ向きでした。党のイメージを変えるためにも、災害時の緊急事態条項を定めるべきです。(いまだに立憲民主は、この条項には反対です)。
(3) 地方分権に注力
すでに新卒の地方学生は、東京に就職しても親の援助がないと東京に住めない状況です(私の地方大学勤務時代のゼミ生徒の半分が、親からの支援を受けて東京に出ています)。地方を重視し、核家族化を抑止するコミュニティー社会確立のための列島改造を行うべきです。これは、少子高齢化対策としても重要です。
(4) 少子化政策
子育て給付金程度では、少子化は止まりません。少々の金銭的援助では住宅、教育、通勤時間など制約が多すぎる大都会での子育ては困難がありすぎます。子育て世代のテレワーク促進やサテライト勤務などによる、地方移転によるのびのび教育とのびのび子育て策を強化し、何よりも子育てもコミュニティーが行うという前提の社会建設を目標にすべきです。
(5)円高の防止とアベノミクスの後始末のための日銀頭取の更迭
(6)男女平等を進展させるための法律改正
すでに会社勤務の女性のほとんどは、旧姓のまま仕事をしています。男女別姓を主張し続ける妙な原理主義を捨て、現実に合わせることも大事ではないでしょうか。
(7)マイナンバーカード制度導入の延期と再設計
これは、私が何度も主張していることです。先日もダイヤモンド・オンラインに次のような記事を寄稿しました。
「マイナンバーの「肥大化」が止まらない!みずほ銀行どころではない巨大システムへの不安」(https://diamond.jp/articles/-/343304)
● 政治家が政治をせずに 優秀な官僚や民間人に任せる法
さて、これだけ保守寄りの公約を掲げても、国民は立憲民主を信用しないでしょう。立憲民主には蓮舫氏や辻元清美氏、長妻昭氏など攻撃型の政治家はそろっていても、政策実行力が高い政治家がいないからです。そこで政治家が政治をするのではなく、優秀な官僚や民間人が大きなプロジェクトの長となり、省庁横断のプロジェクトとして実行するという、新型の政権交替案を打ち出してはどうでしょうか。
安倍、菅政権の10年間は、優秀な官僚を潰し、首相のために公文書を改竄したり、書類を廃棄したりするようなゴマスリ官僚ばかりを登用したため、霞が関は全く機能しませんでした。ですから、その時代にパージされた優秀な役人らを復活登用し、次官としてではなく、プロジェクトの長として全力を出させるのです。
● 立憲民主党が政策を任せるべき 「鉄壁の人選」はこれだ
たとえば私が思いつくだけで、こんなメンバーにこんな政策を担当してもらったら面白いと思います。
●日銀頭取を交代させ、代わりに就任するのは山口廣秀氏。白川頭取時代、学者系の氏に代わって実際の指揮をとり、頭取候補の一番手であった山口氏は、アベノミクスに反対したため安倍元首相に嫌われ、一時は記事のコメントに山口氏を起用した新聞にまで安倍氏が文句を言うほど干されていました。しかし、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の経営委員長になり、年金の株式投資の黒字化のサポートにも成功しています。
●能登半島地震で明らかになった不備な災害対策への対応に、徳山日出男元国土交通省次官を充てる。彼は東日本大震災時の東北地方整備局長として、震災当日から復興計画を立案、「櫛の葉」作戦と呼ばれる中心部から海岸への道路啓開を、3日で完成しました。これは、以前から震災対応を準備していた賜物です。翻って、能登半島で同じような計画ができたのは地発生から10日後。能力の差は歴然としています。
●治安世界一国家の復活を目指し、高橋清孝元警視総監を起用。日本は治安がいい国として世界有数ですが、その神話はトクリュウと呼ばれる反グレ組織や中国からの投資詐欺などのせいで、崩壊しかけています。高橋氏は本来ならば日本版CIAである国家安全保障局長に就くべきでしたが、安倍・菅氏におもねらない人だったため早退。沖縄サミット、北海道洞爺湖サミットと重要イベントでは必ず本部長を歴任。重信房子や尖閣列島に上陸した中国人の逮捕という実績もあり、何よりも警察庁ノンキャリの絶大な支持があります。
●教育復活に前川喜平元文部次官。平気で自民党政権に逆らい、堂々と批判を重ねた彼には、本来の文部科学省の守備範囲に留まるのではなく、一度霞が関を離れたからこそ得た知見をもとに、ICTや生成AIなどの新しく重要な教育の基盤をつくってほしいです。まずは、時代遅れの老教師たちの気持ちから改革をしてほしいと思います。
●過疎地対策に石破茂。地方創世大臣として、地方の活性化に尽くしてきた石破氏。自民党議員だからといって、別の政権の行政に参画することは悪いことではありません。その地方創世の知識を大いに使ってプロジェクトを成功させてほしいものです。また自民党には、実務に通じる議員は大勢いるので、立憲民主からプロジェクトの長として使命し、自民党内を揺さぶることもできそうです。
●子育て対策に菅野志桜里 (旧姓山尾)。不倫問題で政治家の道を断念しました。託児所問題など、自民党女性政治家のような男に媚びて出世する気配のない仕事人として、もう一度子育て支援に全力を尽くしてほしいものです。
これだけ思い切った政策転換をし、日本に残った数少ない優秀な人材を携えて選挙に望めば、「悪夢の民主党政権」などという安倍総理のキャッチフレーズをぶちこわす成果を上げられるはずです。
そして最後に、野党統一政権の総理候補は泉健太代表ではなく、野田佳彦元総理にすべきです。総理経験者であり、国民から嫌われるとわかっている消費税の導入を決めた人物こそ、今回のような危機の舵取り役にはふさわしいと思うのです。
木俣正剛
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