( 171635 ) 2024/05/18 02:53:02 0 00 【森永康平の経済闘論】
厚生労働省が発表した3月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動を考慮した1人当たりの賃金である実質賃金は前年同月比2・5%減となり、24カ月連続でマイナスを記録した。これはリーマン・ショック時の記録を超え、比較可能な1991年以降で過去最長となる。
一方で名目賃金は同0・6%増と27カ月連続でプラスとなっていることを考えると、この2年間は額面の賃金は上昇しているものの、それ以上に物価の伸びが加速しており、国民の実感としては貧しくなっている一方であるということだ。
実際に消費のデータを見てみても、総務省が発表した2月の家計調査では2人以上の世帯が消費に使った金額は実質ベースで前年同月比0・5%減と12カ月連続の減少となっている。
5月16日に2024年1~3月期の国内総生産(GDP、1次速報)が発表されるが、GDPの内訳の1つである民間最終消費支出は実質ベースで3四半期連続で前期比マイナスとなっており、仮に2024年1~3月期もマイナスとなれば、4四半期連続のマイナスとなる。これはリーマン・ショック以来のことであるが、今回は世界的な金融危機が起こっているわけではないことを考えると、ある意味では当時よりも深刻に受け止めるべきではなかろうか。
消費の冷え込みの一因が物価高にあることは明白だが、ここで注意したいのは、円安が全ての元凶であるかのように考え、円安を止めるべく日銀に追加利上げを求める空気感が醸成されることだ。
住宅金融支援機構が今年1月に公表した『住宅ローン利用者の実態調査(23年10月調査)』によると、住宅ローン利用者の約75%が変動金利を選択しており、当然、追加利上げを行えば、返済負担は増える。
さらに「再生可能エネルギー賦課金」の単価が24年度に上がることを反映し、5月請求分から電気代が上昇することが予想されるうえに、電気・ガス料金の補助金が6月で終了することが決定していることを考えれば、そもそも日本の家計負担は追加利上げがなくとも厳しい状態が続くことは容易に想像がつく。
足元のデータと既に確定している政策変更を勘案すれば、いますべきことは国民の負担を削減することであり、間違っても負担増の政策ではないことは明らかだ。政府・日銀には賢い選択と行動を求めたい。
■森永康平(もりなが・こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。
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