( 171798 ) 2024/05/18 17:08:43 1 00 SUVの人気が高まる中、新たに発売された「ランドクルーザー250」は従来比で130~180万円の値上げがあり、注目を集めている。
250はディーゼルエンジンを搭載し、価格が高騰したが、販売には影響しない状況になっている。 |
( 171800 ) 2024/05/18 17:08:43 0 00 従来比130~180万円アップしたランドクルーザー250
SUV人気が高い今、新車で販売される小型/普通乗用車に占めるその割合は、30%を超える。その販売規模はミニバンを抜いて、コンパクトカーと同等だ。
【写真】従来比130~180万円アップ!ランドクルーザー250はどんなクルマ?内装や外装を見る
人気の車種は、トヨタなら「ヤリスクロス」「カローラクロス」「ハリアー」、ホンダなら「ヴェゼル」や「WR-V」で、いずれも乗用車と共通のプラットフォームを使う。つまり、売れ筋はシティ派だ。
一方、これらシティ派SUVが増えた反動もあり、悪路向けのヘビーデューティーなSUVにも注目が集まる。もともと悪路向けのSUVは優れた走破性能を発揮しづらく、重いボディやそれによる燃費の悪さ、価格の高さといった欠点も多い。
その結果、1990年代に一世を風靡した三菱「パジェロ」や日産「サファリ」「テラノ」、トヨタ「ハイラックスサーフ」などは生産を終え、選べる車種が大幅に減った。
そんな中で、再び注目を集めたものだから、新型車が登場すると過剰に注目される。この人気を急上昇させた悪路向けSUVの代表車種が、トヨタの「ランドクルーザー」シリーズだ。
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■国内でもっとも長い歴史を持つクルマ
ランドクルーザーは、もともと「トヨタジープ」として1951年に発売。この名称が当時のウイリス・オーバーランド社の商標に抵触するため、1954年にランドクルーザーへ改称され、その歴史をスタートする。
初代「クラウン」の発売が1955年だから、国内ではもっとも長い歴史を持つクルマだ。悪路向けの4輪駆動車として世界的に高い支持を得てきており、車名も知れ渡っている。そんな中で、最近は新型車が多い。
2021年に「ランドクルーザー200」が14年ぶりにフルモデルチェンジして、「ランドクルーザー300」になった。2023年には、1984年に誕生したロングセラー「ランドクルーザー70」が、大幅な改良を受けて国内販売を再開した。
そして2024年4月には「ランドクルーザープラド」の新型が、新たに「ランドクルーザー250」の名称となって発売されている。直近でもっとも注目されるのは、この250だ。
エンジンは旧プラドと基本的に同じで、直列4気筒2.7リッターのガソリンと、2.8リッターのディーゼルターボを搭載する。ディーゼルのATは6速から8速に進化したが、エンジン本体に大きな変化はない。ガソリン車は、6速ATのギアを含めてプラドとほぼ同じだ。
それなのに、価格は大幅に上昇した。旧プラドの価格は367万6000円~554万3000円だったが、新しい250は520万円~735万円(特別仕様車を除く)に達している。
ディーゼル/3列シートの中級グレード同士で比べると、プラドTX・Lパッケージの499万7000円に対し、250のVXは630万円。ほかのグレードも含めて、250はプラドに比べて実に130万~180万円も値上げされた。
■300と共通するメカニズム
250が高価格となった背景には、複数の理由がある。昨今の原材料費や輸送費の高騰もあるが、もっとも大きな理由は、シャシーや各種のメカニズムが刷新され300と等しくなったことだ。
250と300のボディサイズを比べると、1980mmの全幅と1925mmの全高、そして2850mmのホイールベースが共通。全長は250のほうが60mmほど短いが、サイズ感としてはほぼ同じだ。
以前のプラドとの比較では、全長で100mm、全幅で95mm、全高で75mm上まわる。ホイールベースも、60mm拡大された。プラドは200/300のコンパクト版ともいえるモデルであったが、250は位置付けが変わり、300の姉妹車的な存在になったのだ。
従って価格も高まったわけだが、それでも250は300よりも割高感が強い。
250のZXディーゼルは4気筒2.8リッターターボで735万円だが、300のZXはV型6気筒3.3リッターツインターボで760万円。価格自体は300のほうが25万円高いが、4気筒2.8リッターと6気筒3.3リッターでは、動力性能や静粛性は大幅に違う。
エンジンスペックも、250の2.8リッターは最高出力204馬力(3000~3400回転)、最大トルク51kgm(1600~2800回転)だが、300の3.3リッターターボは、ツインターボの効果もあって、309馬力(4000回転)と71.4kgm(1600~2600回転)を発揮する。
さらに300はランドクルーザーシリーズの最上級車種だから、内外装も豪華で上質だ。動力性能に加えて、各部をていねいに仕上げている。
もちろん250ならではの美点もあり、300のZXディーゼルには装着されない3列目シート、JBLプレミアムサウンドシステム、さらに悪路走行時にスタビライザー(ボディの傾き方を抑える足まわりのパーツ)の制御を切り替えて走破力を高めるSDMなどが標準装着されるが、25万円の価格差なら300の買い得度が勝るといえるだろう。
VXのガソリン車同士では、250が545万円で300は630万円と、85万の違いがある。しかし、250は4気筒2.7リッターで300は3.5リッターツインターボだ。
250の2.7Lガソリンにはターボが装着されず、最高出力163馬力(5200回転)、最大トルク25.1kgm(3900回転)に留まる。しかもATが6速だから、2240kgの車両重量に対してパワー不足が著しい。推奨しにくいエンジンだ。
そうなると250で選ぶべきエンジンはディーゼルに限られ、一般的な選択はガソリン車と同価格のVXの(630万円)か、ZXは(735万円)となる。250のディーゼルは価格が割高で、買い得度で300に負ける。
■値上げを許した原因は「納期遅れ」に?
また最近は、前述の通りランドクルーザーシリーズの人気が総じて高い。生産が受注に追い付かない状況も生じているから、250の価格が割高になっても、販売に大きな支障はないだろう。これも大幅値上げを許した原因と考えられる。
同様の状況は、新型のレクサス「GX」と「LX」にも当てはまる。GXは、ランドクルーザー250から発展した悪路向けの上級SUVで、エンジンは250とは異なり、V型6気筒3.5リッターのガソリンツインターボを搭載する。このエンジンはランドクルーザー300、これをベースに開発されたレクサスLXと共通だ。
つまりレクサスGXとLXは、ランドクルーザーの250と300以上に、類似性の強い間柄になる。「GX550オーバートレイル+」の価格は1235万円で、「LX600オフロード」は1290万円。この2車種も価格が接近しており、最近のトヨタの悪路向けSUVは、レクサスを含めて価格が割高になったといえる。
■販売店も困っている「ランクルが買えない」状況
ランドクルーザーに話を戻すと、価格が割高なうえに商品の供給状況もよくない。2024年5月上旬時点で複数の販売会社に問い合わせると、「現時点でランドクルーザー250の生産枠は2026年分まで埋まり、受注を停止している」と言う。
しかも「次の受注開始時期は未定で、再開を待つお客様も多いから、250をいつご購入いただけるかはわからない」とのこと。さらに「ランドクルーザー300も、以前から受注を停止しており、この再開時期も不明」としている。
前述のようにランドクルーザー300は、250よりも買い得感がある。そこで250を諦めて300を買おうとしても、今は注文ができない。さらに、ランドクルーザー70も「今は受注を締め切っており、この再開時期も不明」とコメントした。
要は、ランドクルーザーシリーズのすべてが購入できない状態だ。これではユーザーから見れば、車種が存在しないのと同じ。むしろ、存在を知りながら買えないのだから、欲求不満も溜まってしまう。
その一方でランドクルーザー250は、2024年5月上旬時点であれば、サブスクリプション(定額制カーリース)のKINTOを使うと手に入るとのことだった。KINTOによる納期は、ガソリンエンジンが5~8カ月、ディーゼルは6~9カ月という。
KINTOはカーリースだから、販売と別枠になるのは理解できるが、不可解に感じるユーザーもいるだろう。なぜならKINTOでは、リース契約期間満了後の買い取りができず、自分の所有物にする「購入」は不可能だからだ。
KINTOには制約も多く、走行距離が規定以上に伸びたり、ペットや盲導犬の同乗によって車内にニオイが付いたりすれば、原状回復の費用を請求される。喫煙も禁じられ、常に「クルマを借りている」意識で使わねばならない。
このように「購入はできないがKINTOなら使える」状態は、ユーザーにとって悩ましい。販売店からも「KINTOでは1年以内に納車され、購入では受注開始の時期すらわからないのは、お客様にとって不公平だと思う」という意見も聞かれた。
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