( 171905 ) 2024/05/19 01:13:04 0 00 市街地を一望する回転レストラン「ロンド」で食事を楽しむ人たち(4月19日、札幌市中央区で)=大石健登撮影
高層ビルの最上階などで移ろう景色を眺めながら食事を楽しむ「回転レストラン」が姿を消しつつある。1980年代には全国のホテルやデパートなどで50店舗ほど営業していたとされるが、今では数店舗のみ。再開発や建物の老朽化といった時代の波に押され、風前のともしびとなっている。
【地図】現在も回転展望のレストランやカフェがある施設
5月で営業を終了する回転レストラン「ロンド」(4月19日、札幌市中央区で)=大石健登撮影
4月中旬の昼下がり。JR札幌駅近くのセンチュリーロイヤルホテル23階にある回転レストラン「ロンド」は、大勢の客でにぎわっていた。ホテルの閉鎖に伴い5月末で51年の歴史に幕を下ろすことが決まり、連日予約で満席という。
約40年前に同ホテルで結婚式を挙げた札幌市北区の女性(66)は「閉店前にもう一度訪れたいと予約した。札幌に新幹線が延伸したら、また違う景色を見られただろうなと思うとさびしい」と惜しんだ。
大衆文化史が専門の永井良和・関西大教授によると、回転しながら展望を楽しむ施設は、1957年に開業した神戸市の六甲山上の「回る十国展望台」(2002年営業終了)が国内初という。東京五輪のあった64年には、東京・紀尾井町のホテルニューオータニが開業と同時に回転レストランをオープン。その後、80年代に最盛期を迎えた。永井教授は「バブル期の雰囲気も相まって『座っているだけで360度の景色を見せてくれる』というぜいたくさが受けた」と解説する。
90年代のバブル崩壊後は、回転を止める店が増えた。2020年に東京交通会館(東京都千代田区)の「銀座スカイラウンジ」が老朽化で回転を停止し、首都圏から回転レストランがなくなった。
回転停止や閉店が相次ぐ理由は、周囲に超高層ビルが建設されて眺望が損なわれたことや、機械の部品交換が容易でないことだ。ロンドの保守点検を開業当時から担う「三精テクノロジーズ」(大阪市)の札幌営業所によると、床下に敷かれた回転用レールは構造上、交換できないためグリース(潤滑剤)を塗ったり、清掃したりして使っている。
「リーガロイヤルホテル京都」(京都市)のレストランは14年にメンテナンス会社が事業から撤退し、業者の確保に苦労したという。
一方、珍しさを前面に出し、新たに開業する店もある。神戸ポートタワー(神戸市)で4月26日にオープンしたカフェ兼バー「Ready go round」は、60年前から回転レストランなどとして営業していた店を2年半かけて改装した。大型連休中も客の入りは好調で、運営会社「フェリシモ」(神戸市)の担当者は「若い人には新鮮で、年配の人には懐かしさを感じてもらえる魅力がある」と手応えを感じている。
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