( 172865 ) 2024/05/22 01:35:14 0 00 「鰻の成瀬」のうな重
いま外食業界で注目の的となっているのが、全国で急速に店舗を増やしているウナギ専門チェーン店「鰻の成瀬」です。取材を進めると「業界が抱える課題」をチャンスに変えようという戦略が見えてきました。
千葉市中央区の住宅街。連日行列ができているのがウナギ専門店「鰻の成瀬」です。人気の理由は重箱を覆いつくすウナギ。一尾が丸々入った松の値段は2600円。半尾の梅は1600円です。一般的なウナギ専門店の半額ほどで本格的なウナギが食べられると、ランチタイムは常に満席です。
こうした価格と品質を武器に「鰻の成瀬」は2022年9月に1号店をオープンしてから、2年足らずで165店舗と急拡大しているのです。
埼玉・白岡市。車に乗っていたのは「鰻の成瀬」創業者の山本昌弘社長です。飲食業界は未経験ながら、様々な業種のフランチャイズビジネスの経験を生かし「鰻の成瀬」のチェーン展開を進めています。
「きょうは4店舗オープンして、来週は5店舗」(山本社長)
この日もオープンする新店舗にやってきました。山本社長は低価格で鰻を提供できる理由を明かしてくれました。
「鰻の成瀬」が導入する職人の代わりにウナギを焼く装置
店で出すウナギは中国で養殖したニホンウナギ。現地で一次加工して冷凍されたものを使います。最大の特徴が店の奥にある装置です。
「素人でもボタン一つでおいしくウナギが焼ける機械」(山本社長)
ウナギは「串打ち3年、焼き一生」と言われますが、「鰻の成瀬」は職人の代わりにわずか5分でおいしく焼き上げる装置を導入。最近の飲食店にとって大きな課題である高騰する人件費を抑えることができているのです。
低価格の理由がもう一つあります。
「普通の飲食店ならかなり厳しい立地だと思う」(山本社長)
成瀬が出店するのは基本的に駅から離れた住宅街やロードサイド。これで家賃を削減できます。そんな不利な場所でも客を呼べるというウナギの店ならではの強みがあるといいます。
「他の飲食店と違って、ウナギを食べようと目的を持って来店する人が多いので、一等地にこだわらない」(山本社長)
さらに、飲食業界の苦しい事情が「鰻の成瀬」にとっては追い風になっています。円安による原材料費の高騰や人手不足などが要因で、昨年度倒産した飲食店は全国で802店と過去最多を記録。そんな閉店した物件を狙って「鰻の成瀬」は出店攻勢をかけているのです。
千葉・印西市でオープンに向けて工事を進める店も、実はもともと焼き肉店でした。前の店の厨房機器や家具を利用することで出店コストも抑えられます。
「鰻の成瀬 千葉ニュータウン店」のフランチャイズオーナーである菰岡翼さんは印西市で3つの焼肉店を運営していますが、円安による外国産の肉の価格高騰が、ウナギの店の新規出店を後押ししたといいます。
「(肉は)仕入れている金額が高くなってもそれを客に転嫁できないが、そもそもウナギは(単価が)高い。焼き肉屋からウナギ屋になってしまおうかな」(菰岡さん)
「鰻の成瀬」が新たにメニューに取り入れようとしているアメリカウナギ
16日、東京・六本木。「鰻の成瀬」創業者の山本社長が新メニューを試食していました。
「これが現行で、こっちが新しいアメリカ種のウナギです」(山本社長)
ニホンウナギとは別種のアメリカウナギで、中国で養殖しています。身が肉厚なのが特徴です。ニホンウナギより安く仕入れられるといいますが、その味は?
「工夫したらおいしくなりそうな気もする」「1000円ちょっとで出したい」(山本社長)
6月には一部の店舗でこの手頃な値段のアメリカウナギと、高級な国産のニホンウナギをメニューに加え、消費者のニーズを見極めようと考えています。
流行り廃りの激しい飲食チェーン。例えば130店以上あった「東京チカラめし」は現在2店舗まで縮小し、500店近くまで拡大した「いきなりステーキ」は現在181店と半分以下になっています。
「鰻の成瀬」は急拡大の先を見据え、消費者のニーズを把握することに力を入れています。
「急成長して失敗した例もたくさん見てきている。そこを見越して、先手先手を打っている。日常的にウナギを食べられる世の中にしていきたい」
※ワールドビジネスサテライト
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