( 173705 ) 2024/05/24 17:44:04 0 00 Shutterstock.com
米国経済には現在、「K字型」の力学が働いている。つまり、富裕層が資産価値の上昇によって恩恵を得ている一方で、中・低所得層はコストと経済的負担の増加に直面している。
「K」という文字の上側のラインは、現在の経済環境で大きな利益を上げている少数の人々を、下側のラインは家計の急速な悪化を感じている他のすべての人々を表している。
株式、不動産、その他投資資産を保有する富裕層は、純資産と自己資本が増加し続け、インフレの影響からしっかり守られている。これに対し、低・中所得層は食料品、ガソリン、家賃といった生活必需品のコスト上昇に家計が圧迫され、しかも賃金の上昇がインフレに追いついていない。
■投資資金がない
このところ株式市場は史上最高値の更新を続け、裕福な投資家にとっては力強い成長を示している。しかし、多くの中・低賃金労働者の賃金の伸びは物価上昇率を下回っており、購買力の低下を招いている。
若いうちから継続的に投資を行えば、複利効果で資産を増やせる。投資で得た利益が将来の利益を生み、何もしなくても雪だるま式に資産が大きく膨らんでいくのだ。
物理学者アルベルト・アインシュタインは、「複利は世界8番目の不思議だ。理解した者はそれを手に入れ、理解しない者はそれを支払う」と言ったとされる。この名言は複利がもつ強力な影響力を浮き彫りにしている。複利投資では元本だけでなく、時間の経過とともに累積する利息も増えていく。投資する資金を持たない人は、経済的に後塵を拝するしかなくなる。
■雇用市場で遅れをとる
米国では富裕層と貧困層の所得格差が数十年にわたって拡大の一途をたどっている。2021年には所得上位1%の超富裕層が全米の富の32.3%を占め、下位50%が保有する資産は全体のわずか2.6%にすぎなかった。
せっかく大学を卒業しても、多額の学生ローンを抱えていれば経済的な理由で学位を必要としない職に就くほかないかもしれない。仕事と労働者の未来についてデータに基づいた研究と実践を行っているシンクタンクのバーニング・グラス・インスティテュートが最近行った分析によると、大卒者の52%が学位を取得した翌年に不完全雇用状態となっていた。さらに、卒業直後に不完全雇用だった労働者の45%は、キャリアを積んだ10年後も不完全雇用のままだった。
ウーバー、インスタカート、ドアダッシュなどテック企業が牽引するギグエコノミーの急増は、キャリアアップや上昇志向を実現する道を狭めている。企業は経費を節減し人件費を抑制するため、ギグワーカー、契約社員、派遣労働者を雇用する。専門的なスキルや資格を有する労働者は、臨時雇用に頼らざるを得ず、いつ契約が打ち切られて再び仕事探しに追われることになるかと常に心配している。
節約して貯めたわずかなお金も、購買力の低下によって食いつぶされてしまう。加えて、人工知能(AI)の急速な台頭と普及は、やがて自分の労働力がテクノロジーに取って代わられるかもしれないという憂鬱な不安を呼び起こす。
■所得格差の傾向
インフレは「隠れた税金」であり、家庭の購買力に直に影響する。だが、その負担はさまざまな所得や富の階層に不均等に分布している。
この傾向が続けば、貧富の差が大幅に拡大しかねない。経済協力開発機構(OECD)によれば、これは社会不安、政情不安、経済全体の生産性低下につながる恐れがある。しかし、最低賃金の引き上げ、中間層を対象とした減税、教育や職業訓練への投資といった政策を政府が導入すれば、格差縮小の一助となるだろう。
テクノロジーが仕事に及ぼす影響は、諸刃の剣だ。自動化は一部の労働者の職を奪うかもしれないが、新しい機会を生み出す可能性もある。再教育プログラムを立案し投資することで、誰もが技術の進歩から恩恵を受けられるようにできるはずだ。
■家庭が経済的な負のスパイラルに陥る理由
米国の家庭は、インフレ、商品・サービスの価格高騰、高額な医療費、政府債務の増大と社会事業への支出削減などの要因により、経済的苦境に立たされている。
収入が低ければ、貯蓄で資産を築くのは難しい。住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、高金利のクレジットカードから生じる借金のため、毎月高額な返済に追われる羽目になる。失業すると、なけなしの貯蓄をすぐに食いつぶしてしまうため、状況はさらに悪化する。
経済基盤を構築できない限り、多くの人々は投資も蓄財もやりようがないのだ。緊急時資金を使い果たしてしまうと、蓄えを再建するのが難しくなる。大掛かりな治療を必要とする予期せぬ入院・通院などが発生すれば、家計は破綻し、自己破産を申請せざるを得なくなることもある。
Jack Kelly
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