( 174660 )  2024/05/27 17:27:21  
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(写真:読売新聞) 

 

 【ニューヨーク=小林泰裕】生成AI(人工知能)開発を手がけるオープンAIとグーグル、マイクロソフト(MS)の米主要3社が5月、そろって新たなAIサービスを発表した。人間とほぼ同じスピードで会話に応答したり、会議の進行役を務めたりと「人間並み」に進化した機能を打ち出しているが、悪用防止対策は後手に回っている。 

 

【図解】一目でわかる…生成AIが文章を作成する仕組み 

 

オープンAIが公表した新機能のデモの様子(オープンAIのウェブサイトより) 

 

 男性「今、少し緊張しています。落ち着くのを手伝ってくれませんか?」 

 

 AI「深呼吸してください。あなたは掃除機ではありませんよ。息を吸って四つ数えましょう」 

 

 オープンAIは13日、新たなAI基盤モデル「GPT―4o(ジーピーティーフォーオー)」を使い、利用者の状態を音声から推測してアドバイスする様子を披露した。 

 

 従来の基盤モデルは音声での回答に3~5秒かかっていたが、新モデルは人間とほぼ同じ0・3秒で応答する。スマートフォンのカメラで撮影した手書きの文章を理解して音声で回答する機能もあり、数週間以内にサービスを始める。 

 

 グーグルも14日、今年後半から提供を開始する新機能「プロジェクト・アストラ」を発表した。スマホの画面に映り込んだモノが何かをAIが説明したり、「メガネはどこに置いたっけ」と尋ねると「リンゴの近くにあるよ」と音声で教えたりする機能がある。 

 

 MSは21日、AIが会議の進行役などを務める新機能「チーム・コパイロット」を公表した。作業の割り当てやスケジュール管理などプロジェクトマネジャーの役割もこなすといい、今年後半から有料会員向けに導入する。 

 

 各社が利便性の向上を打ち出す中、懸念の声も広がっている。例えば、オープンAIの新機能は、声色を様々に変えることができ、悪用されれば詐欺や偽情報の温床となる恐れがある。 

 

 13日のオープンAIのデモでは、AIの音声が米女優スカーレット・ヨハンソンさんに似ているとの指摘がネット上で広がった。ヨハンソンさんは「ショックで怒りを感じた」との声明を公表し、法的措置も示唆している。オープンAIは、ヨハンソンさんの声を模したものではないと否定したが、この音声の利用を当面の間、停止する。 

 

 

 オープンAIでは、悪用防止などの安全対策チームを率いていたヤン・ライカ氏が15日、経営陣との対立を理由に退社を発表した。安全対策チームは事実上、解散状態になっているといい、ライカ氏は17日、「過去数年間、派手な製品の投入を優先し、安全対策を後回しにしている」とSNSで経営陣を批判した。 

 

 AIが「人間並み」の能力を獲得する一方で、AIとどう向き合うかは手探りの状況が続く。ライカ氏は「人間よりはるかに賢いAIをどう制御するか、早急に考えなければならない」とも投稿し、警鐘を鳴らした。 

 

 

 
 

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