( 175085 )  2024/05/28 17:50:14  
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iPhone4で撮影したポートレート。画像加工はまったくしていないが、写真には独特の味わいがある(画像=ササキ氏提供) 

 

 これもリバイバルブームの一種なのだろうか。今、Z世代を中心に、あえて「古いiPhone」で写真や動画を撮影するのがはやり始めているという。普段は最新機種を持ち歩きつつ、写真撮影は「古いiPhoneで」などと使い分けるケースもあるようだ。14年前に発売されたiPhone4で撮影してみたという短編動画がインスタで1000万回以上再生されるなど、一部ではブームになりつつある。なぜ今、あえて「古いiPhone」なのか。若者心理を取材した。 

 

【写真】iPhone4で撮影したポートレートをもっと見る 

 

*  *  * 

 

 5月15日、ストリートスナップなどを撮っている写真家のササキタカノブさん(33)は、インスタグラムに「昔のiPhoneの写りがめちゃくちゃエモいと聞いたので、メルカリでiPhone4を買いました!」と題した15秒程度の短い動画を投稿した。すると、瞬く間に拡散され、5月22日時点で1100万回以上も再生されるほどバズった。 

 

 コメント欄にはZ世代と思しき若者たちからの絶賛コメントがあふれ、特に「MV(ミュージックビデオ)みたいで素敵!」など画像の美しさに言及したものが多い。 

 

 実際、X(旧Twitter)では「最近の女子がスマホを2台持ちする理由が古い機種の写真の画質が粗くてエモいかららしい(?)」と題した街頭インタビューの投稿が、1700もの「いいね」をつけて拡散されている。インスタグラムを見ると、「家で眠っていたiPhoneで撮影してみた」「iPhone6で撮った!いい感じ!」など、Z世代と思われるアカウントの投稿もいくつも確認できる。 

 

■メルカリで2000円で手に入る 

 

 都内の大学に通う21歳の女子大生もこう語る。 

 

「昔のiPhoneをあえて持ち歩いて、写真や動画を撮って(インスタグラムの)ストーリーに載せるのはよくしますね。加工しなくても色合いとか良い具合にエモく映るから手軽なんですよ」 

 

 ササキ氏が使用したiPhone4が発売されたのは2010年6月だ。背面にあるカメラの画素数は500万画素と低く、最新機種のiPhone15Proの4800万画素と比べるとはるかに劣る。ササキ氏はなぜiPhone4で撮影した動画を撮ろうと思ったのか。 

 

「ちょうど今の20代が小学生時代に初めて触れたのがiPhone4くらいなんです。だからiPhone4で撮影した映像を見たら懐かしさを感じてくれるかなと思って。今はメルカリなどで2000円くらいで手に入るし、サイズも手ごろ。今のiPhoneよりも小さくて、持ち運びも便利なんです」 

 

 さらにササキ氏は、「撮れる写真や動画もかわいい」とその魅力を語る。 

 

「普通に撮ると手ブレも結構するんですが、そのブレてる感じが、逆にいい味を出します。またiPhone4だと、コントラスト(=明暗の差)が高め設定になっています。自動補正もかからず、影もくっきり出るので、どこか昔のカメラのように写ってエモくなるんです。被写体の情報をきちんと捉えるという点では、最新機種が向いていると思いますが、雰囲気を出したかったり、レトロに撮りたかったりする人は、昔のiPhoneで撮るのはおすすめです」 

 

 

■あえて制限のあるものを好む 

 

 もっとも、若い世代がレトロなものを好む傾向は、いまに始まったことではない。写真でいえば、デジカメ以前の「写ルンです」や「チェキ」などが過去に流行したことがある。だが今回の「古いiPhone」ブームは、これまでとは少し違う面もあるようだ。 

 

 若者の消費行動などに詳しい「博報堂若者研究所」の瀧﨑絵里香氏はこう分析する。 

 

「どの世代にも、昔のモノを懐かしむ文化はあります。自分たちの世代よりもあえて昔のモノを使ってみて、それを共有し合うことに楽しさを感じます。そこまでは前世代と同じですが、今のZ世代には、膨大な情報や技術の進化への”疲れ”があるように思います。デジタル技術が発達しすぎて、最新のiPhoneなら写真も動画もプロ顔負けのものが撮れて編集までできる。それに対して、あえて不完全だったり、制限があったりするものに、どこか安心感を覚えるメンタリティがあるのだと思います」 

 

 iPhone4が発売された当時は、デジカメと同じ写真が撮れることに驚いたものだが……。今の最新携帯も「レトロ」だと言われる日が来るのだろうか。 

 

(AERA dot.編集部・板垣聡旨) 

 

板垣聡旨 

 

 

 
 

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