( 175215 )  2024/05/29 01:47:38  
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国土交通省=東京都千代田区(鴨川一也撮影) 

 

国土交通省は28日、7月にも路線バスの運行規定を見直し、運賃の支払い方法をICカードなど電子決済のみとする「キャッシュレス限定バス」を解禁する方針であることを明らかにした。厳しい経営環境や深刻な運転手不足によって、各地で路線バスの廃止・減便が相次いでいることから、事業者の経費削減や運転手の業務負担低減を狙う。 

 

【写真】ICカードによるキャッシュレス決済機能付きの路線バス運賃箱 

 

同日の閣議後会見で、斉藤鉄夫国土交通相がバス運送の基本事項を示した国交省の「標準運送約款」を改正し、決済手段をキャッシュレスに限定できることを明記する方向で調整していると明らかにした。 

 

現在は具体的な文言がなく、キャッシュレスに限定すると、現金しか使えない客が乗車できなくなり、事業者には道路運送法の「乗車拒否」にあたらないかという懸念があった。約款見直しでこれを払拭する。 

 

路線バスには車両ごとに現金に対応した運賃箱が設けられているが、キャッシュレス限定になれば、運賃箱の維持更新の費用や現金管理の手間を省き、業務を効率化できる。 

 

国交省は今秋にも複数の路線で実証運行を実施し、普及拡大に向けて効果や課題の検証なども行う。斉藤氏は「バス路線が将来にわたって維持されるよう丁寧に制度設計を進めていきたい」と強調した。 

 

国がバス事業者の支援に動く背景には、利用者減少やマイカー普及などによる慢性的な経営悪化がある。国交省がまとめた全国の主要事業者(保有車両30台以上)の収支状況によると、令和4年度の赤字額は917億円となり、228事業者の85%にあたる194事業者が赤字だった。 

 

4月からのバス運転手への残業規制強化が苦境に追い打ちをかける。日本バス協会は運転手が令和6年度に2万1千人、12年度に3万6千人不足すると試算。バス網が維持できなくなる懸念が強まっている。 

 

 

 
 

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