( 176413 )  2024/06/01 15:07:24  
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蓮舫参議院議員が、東京都知事選挙に出馬する決断をし、強敵である小池百合子知事に対して怖さを感じていることが明らかになっている。

立憲民主党内でも出馬要請があり、蓮舫は都政改革から国政までを視野に入れた挑戦を決意。

蓮舫は野田元首相との関係や党内の問題を乗り越え、都知事選への出馬を表明。

ただし、現職知事の実績や二重国籍問題がネックになる可能性も指摘されており、具体的なビジョンや選挙戦の展開が注目されている。

(要約)

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都知事選氏への出馬を表明した蓮舫氏 

 

「小池さんは強いですよ。今でも怖い」 

 

 そう明かすのは、7月の東京都知事選挙に出馬を表明した立憲民主党の蓮舫参議院議員。出馬を決めた今でも、4年前の選挙で366万票を集め、圧倒的な知名度を誇る小池百合子知事との選挙戦には、怖ささえ感じるという。参議院議員の立場を捨てて、蓮舫はなぜそんな戦いに挑むのか。決断の裏側を取材した。【青山和弘/政治ジャーナリスト】 

 

【写真】小池都知事の“緑”に対し、蓮舫氏の勝負服は“真っ白”なジャケット。喜怒哀楽の表情がハッキリした蓮舫氏の秘蔵カットを一挙公開 

 

 5月1日。立憲民主党では衆院補欠選挙で3勝した熱気が冷めやらぬ中、東京都知事選挙の選考委員会が開かれた。特に東京15区で、小池が擁立した乙武洋匡氏が5位に沈み、立憲民主党の候補者が2位に2万票近くの差をつけて圧勝したことは出席者を高揚させていた。 

 

「都知事選は消化試合にできなくなった。立憲民主党として最強の候補者を立てなきゃいけない。ここは蓮舫さんに出てもらえないだろうか」 

 

 出席者の視線は、都連幹事長の手塚仁雄衆議院議員に集中した。手塚は蓮舫とは十代のころからの知り合いで、側近中の側近として知られている。2004年に蓮舫を参議院選挙に担ぎ出したのも手塚だ。手塚は答えた。 

 

「蓮舫さんを説得するのは簡単じゃない。ただ皆さんの総意と言うなら、話はしてみます」 

 

 小池はかつての神通力に翳りがみえても、依然強敵であることは間違いない。過去の都知事選では現職の知事が敗れたことはない。しかも蓮舫には次期衆院選で、東京26区からの鞍替え出馬の計画も進んでいた。手塚は蓮舫に語りかけた。 

 

「蓮舫さんは国会でも活躍の場はある。でも今、都知事選に出馬して、自民党との連携を強める小池知事に挑むことほど、蓮舫さんが持つ力を発揮できる場はないんじゃないか」 

 

 蓮舫の下には、この時すでに各方面から都知事選への出馬要請が届いていた。また2017年に旧民進党の代表を辞任に追い込まれて以降、東京都知事の座も意識してきた。蓮舫の心は揺れていた。 

 

「衆院補欠選挙の結果は、自民党の政治じゃ駄目だという圧倒的な声だった。9月には立憲でも代表選挙がある。新しい代表の下、総選挙では私も国政に打って出て政権交代を目指すという流れは見える。でも、もし都知事になれば都政改革から国政も動かすことができる。ここで都知事選挙に挑む価値はある」 

 

 

 ただ、蓮舫が前に踏み出すには、補選3勝の勢いだけでなく、自分が小池と勝負ができるという根拠が必要だった。岸田政権の支持率がいくら低くても、都知事選挙はあくまで別物だ。手塚は知事選で小池と蓮舫が激突したケースを想定した情勢調査を掛けた。 

 

 調査の結果は、小池知事40に対して蓮舫議員30というものだった。蓮舫は小池に10ポイントの差をつけられている。しかし蓮舫の捉え方は違った。 

 

「出馬表明もしていない私が、現職知事に10ポイント差にまで迫っている。予想よりいい」 

 

 この結果は蓮舫を勇気づけた。一方、国会を去るとなると気がかりなのは、蓮舫が師と仰ぐ野田佳彦元総理のことだ。立憲民主党内にある“野田代表待望論”。その中心的な存在が蓮舫と手塚だ。野田も「悲願の政権交代を実現するために、自分にできることは何でもやりたい」と話している。手塚は都知事選出馬の是非を野田に相談すべきかどうか蓮舫に尋ねた。しかし蓮舫はこう答えた。 

 

「野田さんは優しいから、私がやる気があるなら背中を押すし、やる気がなければ止めてくれる。相談しても仕方ないし、私の決断に責任を持たせたら悪い」 

 

 野田にも一切相談しなかった蓮舫。ただ、最後まで懸念していたのは、立憲民主党が政治資金パーティーの全面禁止法案を国会に提出しているにも関わらず、岡田克也幹事長ら党幹部が自らのパーティーを計画していた問題だ。 

 

 蓮舫は「冗談じゃない。他の仲間に迷惑だ」と激高し、執行部にパーティーの即時中止を申し入れていた。そして、この問題は世論の批判を浴び、5月26日投開票の静岡県知事選挙や目黒区の都議補選で自民党候補の追い上げを許していた。投開票前夜、一連の応援演説が終わった後、手塚は疲れたのどを潤しながら蓮舫に尋ねた。 

 

「岡田幹事長たちのパーティーの影響で、明日の選挙で負けたらどうしようか」 

 

 蓮舫は思い定めたように語った。 

 

「その時は都知事選への出馬はやめましょう。立憲に新しい執行部を作って、政権交代を狙いましょう。でも、もし勝ち切ったら、その勢いで都知事選挙に挑みましょう」 

 

 

 翌26日夜、静岡県知事選挙と都議補選で立憲の候補の勝利が確実になった瞬間、蓮舫はこう悟ったという。 

 

「これは人生の必然だ」 

 

 翌日、蓮舫は都知事選への立候補を表明した。記者会見の司会は、当たり前のように手塚が務めた。 

 

 しかし、これからの選挙戦は厳しいものになるだろう。年間16兆円という中規模国家並みの予算を抱えて、大統領並みの権力を振るってきた現職都知事の実績と知名度を覆すのは容易ではない。また、蓮舫がかつて指摘された、台湾との二重国籍問題が再び問題視される懸念もある。蓮舫は「私は『日本国籍の選択宣言』をして、日本国籍を有して政治家をしている。蒸し返そうとするならどうぞ」と強気な姿勢を見せているが、その影響は未知数だ。また立憲民主党内には、共産党の存在が前に出すぎることを懸念する声もある。立憲幹部はこう語る。 

 

「知事サイドは左翼に都政を任せていいのかなどと攻撃してくるだろう。ただ蓮舫さん自身は元々“中道”の人。選挙戦では政党の推薦は受けずに、共産党色も立憲色も出さずにやるだろう」 

 

 また蓮舫は、小池がかつて掲げた満員電車ゼロなどの「7つのゼロ」はどこへ行ったのかなどと批判するが、一方で自分がどのように東京を変えていくのか。今後、打ち出す具体的なビジョンも大きな焦点となる。小池を支持する都民ファーストの会に所属する都議はこう余裕を見せる。 

 

「蓮舫さんが出馬しても、誰が出ても微動だにしない。こちらは淡々と実績を訴えていくだけですよ」 

 

 東京都民が「小池都政をリセットする」と訴える蓮舫にどこまで期待を寄せるのか。自民党政治への不信が、自民党との連携を進める小池への不信にどこまでつながるのか。東京の暑い夏の戦いは、これからが本番だ。(文中敬称略) 

 

青山和弘(あおやま・かずひろ) 

政治ジャーナリスト。東洋大学非常勤講師、青山学院大学客員研究員。1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。21年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。音声プラットフォーム「voicy」で永田町取材やメディア出演の裏話などを発信している。 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

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