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アルフレッド・アドラーは子育てにおいて、親が子どもに「信頼できる他者がいる」という経験を与えることが重要だと指摘している。

甘やかしたり罰を与えたりするのではなく、子どもに共同体感覚を育てることが重要であり、子どもの成長にとってバロメーターとなると述べている。

また、体罰や説教は子どもに良くない影響を与えるとし、子どもの行動を変えるためには説明や説得を行うべきだとも主張している。

(要約)

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甘やかしてもダメ、罰や説教もダメ…では、どうすべき?(写真:fizkes/Shutterstock) 

 

 「子どもが言うことを聞かない」「どう子どもに接すればいいかわからない」。そんな子育てに悩む親に知ってほしいのが、心理学三大巨頭の一人・アドラーの言葉だ。子育てにおいて親は何を重視し、何を子どもに伝えるべきなのか。長年、アドラー心理学を研究・普及してきた岩井俊憲氏が、アドラーの言葉をわかりやすく「超訳」してお伝えする。 

 

【顔写真】甘やかしてもダメ、罰や説教もダメ…では、どうすべきだとアドラーは言うのか? 

 

 (*)本稿は『超訳 アドラーの言葉』(アルフレッド・アドラー著、岩井俊憲編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・再編集したものです。 

 

■ 親は「信頼できる他者がいる」ことを示せ 

 

 親の一番初めにする大きな仕事は、自分の子どもに「信頼できる他者がいる」という経験を与えることだ。 

 

 のちに親はこの信頼感を、家族、友人、学校、地域社会、人間社会というように、子どもがいる社会のすべてを包み込むまでに大きく広げていかなければならない。 

 

 もし、親がこの最初の大仕事に失敗してしまったら─すなわち、子どもの関心や愛情、協力を得ることに失敗したなら─その子どもは共同体感覚や仲間とつながっている気持ちをもつことが難しくなるだろう。 

 

 どんな子どもであっても、本来、「他者に関心をもつ能力」はもっている。けれども、この能力は、育てて鍛えていかなければいけない能力だ。それができないと、子どもの成長に大きな弊害が出るだろう。 

 

 『人生の意味の心理学 上』 

 

■ 甘やかされた子どもの特徴 

 

 甘やかされた子どもたちも、憎まれたタイプの子どもたちも、みんな共同体感覚をもっていない。他の人に関心をもっていないのだ。 

 

 甘やかされて育つと、「自分の幸せ」にしか関心をもてなくなる。憎まれて育つと、「仲間がいる」ことを知らない。「仲間の存在」を経験したことがないからだ。その結果、自己中心的な関心だけが育っていく。 

 

 だが、これらの傾向は、けっして生まれつきのものではない。生まれてから数年の経験から学んだことなのだ。 

 

 これらの問題の根底にあるのは、子どもたちが「共同体(社会や家庭)」に属しておらず、受け入れられてないと感じてしまうことから起こりえる。 

 

 「社会の一員である」という意識も、このような状態では子どもの中に育たない。 

 

 『教育困難な子どもたち』 

 

 

■ 甘やかされた子どもは好かれない 

 

 子どもは、いつだって輪(組織や社会)からはずれることで注目を集めようとする。したがって、甘やかされた子どもが学校では同級生から好かれないというのは本当のことだ。 

 

 からかわれたりして、子どもっぽい、自立していないなどと思われる。 

 

 小学校であっても、すでに子どもたちの間には「共同体を求め、結びつきを求める」傾向が見てとれる。これは、見逃すことのできない、絶対的な人間の習性・能力といえる。 

 

 『教育困難な子どもたち』 

 

■ 「社会の一員」であるように育てる 

 

 家庭や学校の役割は、子どもたちが、社会の一員として働くことのできる人間であるよう、人類の一人として貢献できるような人間であるよう教育することである。 

 

 こうした家庭や学校で育ったとき、子どもは勇気をもち続けることができ、人生の課題がふりかかってきたとしても安心感をもって、他者にもメリットがあるような建設的な解決策を見出すことができる人間になるのである。 

 

 『人生の意味の心理学 下』 

 

■ 子どもの成長のバロメーターとは 

 

 「共同体感覚」は、正常な成長を遂げているかどうかをみるのに、重要な手がかりだ。 

 

 共同体感覚を失ってしまう経験は、子どもの精神の成長にとって、恐ろしいほどの悪影響になる。共同体感覚は、子どもの成長にとって、正常であるかどうかのバロメーターなのだ。 

 

 『子どもの教育』 

 

■ 学校は家庭と社会を結ぶ架け橋 

 

 「学校」とは、「家庭」と「社会」を結ぶ架け橋といえる。 

 

 そう考えると、この少年が社会に出たときの姿が想像できるのではないか。 

 

 社会は学校のように甘くない。自分ばかりがチヤホヤされることもない。家では、いい子で学校の成績もよかったとしても、社会に出ると役に立たなくなる人がいる。社会に出て役に立たない人というのは、メンタルを病み、精神疾患で完全に病気になってしまうような人だ。そういう人を見てびっくりする人は多い。 

 

 彼は、家庭や学校で贔屓され、うまくいっていたがために本来の気質やライフスタイルの原型が隠れてしまっていたのだろう。 

 

 それが大人になり、社会に出て、困難にぶつかったときに原型が表に現れ、それが意外な形だったためにまわりの人が驚くにすぎない。 

 

 『生きるために大切なこと』 

 

 

■ 体罰はしてはいけない 

 

 あらゆる体罰に対して、私は反対の立場をとることを知っていただきたい。 

 

 私は、相手に変化を促すときも、その子の児童期初期の状況を知ろうとし、「説明」や「説得」を用いる。私とは逆のやり方、つまり子どもを叩いたりして、どんないい結果が得られるというのか。 

 

 この子が学校で失敗したからといって、それが彼を叩く正当な理由にはけっしてならない。この子が文字を読めなかったのは適切な教育を受けてこなかったからであり、彼を叩いたとしても教育効果は望めない。この子が「失敗したら叩かれる」と学ぶだけで、不快な状況から逃げるために、学校をズル休みするといったような学習しか生まれない。 

 

 「叩く」という状況を、子どもの視点から見てみるといい。そうすれば、これは「つらい、苦しい」という感情を増やすだけだということがわかるだろう。 

 

 『アドラーのケース・セミナー』 

 

■ 罰や説教は子どもにとってよくない 

 

 子どものライフスタイル形成を考えたときに、重要なことを指摘しておきたい。 

 

 「罰を与える」「叱る」「説教する」という方法は、子どもにとっていい影響はないということだ。 

 

 「どこを変える必要があるのか」という点を、子どもはもちろん大人もわかっていないなら、いくら叱っても何も成果はない。 

 

 「なぜ叱られたのか」「どこを変えるべきか」などを理解できない子どもは、ずる賢くなり、臆病になるだけだ。その子のライフスタイルの原型は、罰や叱ることでは変えられない。 

 

 その子の中では、すでに、「ものごとの意味づけ」「どのように受け取るか」といった認識のクセ・方法ができ上がっていて、そのクセ・方法を通して、「罰を受けた」「叱られた」という経験を受け止めるからだ。 

 

 まずは、原型、根底にあるライフスタイルを理解しないと、何も変えることはできない。 

 

 『生きるために大切なこと』 

 

アルフレッド・アドラー/岩井 俊憲 

 

 

 
 

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