( 176785 )  2024/06/02 16:42:08  
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タクシー(画像:写真AC) 

 

 一般ドライバーが自家用車で客を有料で運ぶ「日本版ライドシェア」が解禁され、4月8日に東京でサービスが始まってから、もうすぐ2か月がたつ。ライドシェアに乗客が奪われ、タクシードライバーの営業収入が減少することが懸念されていたが、実際の現場はどうなっているのだろうか。 

 

【画像】「えっ…! 意外!?」これがタクシードライバーの「年収」です(12枚) 

 

 国土交通省は5月10日、ライドシェアについて、5月5日までの東京都や神奈川県など5地域の状況を発表した。それによると、運行回数は1万2628回となり、通常のタクシーと同等以上の頻度で稼働しているという。東京23区などでは、1時間あたりの運行回数が一般タクシーの 

 

「2倍」 

 

に達した。斉藤鉄夫国土交通大臣は同日の記者会見で、タクシー不足の解消に 

 

「一定の効果が発揮されつつある」 

 

との見方を示したが、果たして本当にタクシー不足解消に役立っているのだろうか。現役のタクシードライバーでもある筆者(二階堂運人、物流ライター)が回答する。 

 

タクシー(画像:写真AC) 

 

 ライドシェアに参入したタクシー会社は解禁前に比べて大幅に増えたものの、そのなかには 

 

「現状、想像以上に需要が少ない」 

 

と先行きを不安視する声もある。現場でも、今回の国土交通省の発表に首をかしげる声が上がっている。筆者自身、解禁後、ライドシェア車両を見かけたのは1台だけである。それもタクシー不足が懸念される東京都心ではなく、千葉県との県境に位置し、タクシー不足ともいい切れない 

 

「江戸川区」 

 

でだ。他のドライバーにも聞いてみたが、 

 

「ライドシェア? あまり影響ないよ。影響ないというより、そんな車すら見たことがないね」 

 

との声が。また、営業時間内だけでなく、プライベートな時間でも一度も見たことがないというドライバーが多かった。ちなみに、配車アプリで配車された乗客に直接尋ねてみたところ、 

 

「試しにライドシェアに乗ろうと思っていますが、なかなかマッチングしないんですよ」 

 

とのことだった。利用者は使いたくても使えない現状があるのだ。タクシーの2倍稼働しているはずなのに、なぜマッチングが難しいのだろうか。 

 

 配車アプリのシェアナンバーワンである「GO」のウェブサイトによると、配車時にライドシェア車両を指定することはできないという(ライドシェア車両を希望しない場合はタクシーのみを指定できる)。ようは、ライドシェアに意図的に乗りたくても乗れないのだ。GOだけでなく、他の配車アプリもタクシー配車を“優先”している印象を受ける。 

 

 当然といえば当然だが、日本版ライドシェアはタクシー不足を補うためのものであり、諸外国で展開されているライドシェアとはまったく異なる。タクシー事業者の管理下で運営され、タクシー業界の枠組みのなかで展開されているからだ。 

 

 

タクシー(画像:写真AC) 

 

 ライドシェア解禁が議論される以前から、日本交通は「GOクルー」というアプリ専用のアルバイトタクシーサービスを提供している。車両はタクシー会社の車両を使用している。同社はライドシェアドライバーにも車両を貸し出しており、給与体系はライドシェアドライバーと同等だ。 

 

 なぜ政府はタクシードライバーのアルバイト利用を促進することなく、ライドシェアを解禁したのか不思議でならない。政府はタクシー会社にライドシェアドライバーの雇用に協力するよう求めている。ただ、表面上は政府に協力し、ライドシェアドライバーを募集しているが、裏では出庫時間をずらし、 

 

「ライドシェアが営業している時間帯にあえてタクシーをぶつける」 

 

タクシー会社もあると聞く。 

 

 はっきりいって、タクシー業界はライドシェアドライバーの活躍を望んでいない。ライドシェアを国策として受け入れているが、ライドシェアドライバーに時給を払い、彼らがマナーを守っておとなしくしてくれることを願っているに違いない。 

 

 ライドシェア車両の運行回数がタクシーの2倍であっても、乗客を乗せているとは限らない。つまり、 

 

「運行回数 = 営業回数」 

 

ではないため、発表されているライドシェアの運行回数と、現場で感じる台数には乖離(かいり)がある可能性があるのだ。 

 

タクシー(画像:写真AC) 

 

 繰り返すが、ライドシェアは東京都内でタクシーの2倍運行しているといわれている。現役タクシードライバーである筆者や現場の実感としては、そうは思えない。 

 

 乗る人を幸せにするといわれる日本交通の「ピンク行灯タクシー」は都内を7台しか走っていないが、ライドシェア車両は 

 

「その次にレアな乗り物」 

 

だと、多くの現場関係者は冗談交じりに考えている。 

 

 これから梅雨と猛暑がやってくる。タクシー利用者が増えるこの時期に、ライドシェアサービスが彼らの需要に応えられるかどうかが注目される。筆者もライドシェアドライバーやその利用者に会ってインタビューするのが待ち遠しい。もしかしたら、化けの皮が剥がれるかもしれない。 

 

二階堂運人(物流ライター) 

 

 

 
 

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