( 177070 )  2024/06/03 16:04:48  
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「百姓は生かさず殺さず」が続いている(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/shihina 

 

国の児童手当には年収1200万円以上の世帯には支給しないという「所得制限」がある。なぜこうした施策が行われているのか。2ちゃんねる創設者のひろゆきさんの著書『税弱な日本人からふんだくるピンハネ国家の不都合な真実』(宝島社)より、一部を紹介する――。 

 

【図表】年収1200万円の家庭に追い打ち 

 

■徳川幕府の「百姓は生かさず殺さず」 

 

 江戸幕府の農業政策を表す象徴的な言葉として「百姓は生かさず殺さず」というものがありました。 

 

 要するに、お百姓さんには贅沢をさせないが、日々の暮らしに困らない程度のお金は残せるくらいにしておくのが、当時の政策としては最良だったということです。 

 

 これは徳川家康の言葉とも、その家臣の本多正信の言葉とも言われていますが、実際こうした政策が功を奏して、江戸幕府は300年(実際は260年くらい)もの長きにわたり続くことになりました。 

 

 もし農民にお金が貯まるような政策を行っていたら、農民が武器を買ったり集団で兵隊を雇ったりして、幕府に歯向かうことになったでしょう。 

 

 そこで徳川幕府は、お百姓さんには財産が残らないようにして、ギリギリのラインで生活が続けられるところまで年貢(今で言う「税金」)を取り立てたわけです。 

 

■現在の日本社会でも同じことが行われている 

 

 この時代の言葉にもう1つ、「百姓と胡麻の油は、絞れば絞るほど出るものなり」というものがありますが、ギリギリまで税を搾り取って政権の安定を保っていたわけです。 

 

 これってまさに、現在の日本の社会でも同じことが行われているのではないでしょうか。 

 

 たとえば、児童手当法が改正されて、2022年10月の支給分から、年収1200万円を目安とする高所得者世帯への児童手当の特例給付が廃止されました(図表1)。 

 

 この改正で、給付対象から外れた子どもの数は全体の約4%の約61万人と言われています。 

 

■年収1200万円が「お金持ち」と位置付けられている 

 

 「年収1200万円」というのは、厳密に言うと、扶養人数などによって、金額が変わります。それよりも僕が疑問に思ったのは「年収1200万円」の人ないしはその家庭が「高所得者世帯」、いわゆる「お金持ち」と位置づけられていることです。 

 

 確かに年収1000万円を超える世帯は、一般的に「高所得」と見なされるのかもしれません。 

 

 だから政府も「お金持ちなんだから児童手当はいらないよね」っていう名目でこういう政策を打ち出し、一般市民もそれに簡単に同意するわけです。 

 

 でも、そもそも年収1200万円の家庭って、そんなにお金持ちなのでしょうか? 

 

■東京都内に住むなら年収1200万円では足りない 

 

 以下は概算ですが、1200万円を12で割ると月収は100万円になります。 

 

 そこから所得税や住民税などの税金を引かれ、社会保険料などを支払うと、手元に残るのは75万円くらいになります。 

 

 月75万円の手取り収入で東京都内に住むのは、正直言って結構ハードです。 

 

 ましてや子どもが2人くらいいると、家もそれなりの面積が必要なので、たとえばお金持ちの多そうな港区あたりに住んだ場合、安い3LDKでも家賃は30~40万円くらいになります。 

 

 子どもがいるので、買い物や学校・幼稚園の送迎などで車が必要になります。 

 

 そこで車の維持費もかかりますし、駐車場も港区あたりだと5万円くらいにはなります。 

 

 

■ほとんどお金は残らない 

 

 さらに2人の子どもを塾に行かせようとすると、1人当たり5万円、2人で10万円くらいかかります。 

 

 結局、手取りが月75万円でも、75万円-35万円(家賃)-6万円(駐車場+維持費)-2万円(車維持費)-10万円(子ども塾費用)で、結局手元に残るのは20万円そこそこです。 

 

 そこからさらに食費・光熱費や、家族で旅行に行ったりする費用などを引くと、ほとんど手元にお金は残りません。 

 

■再エネ賦課金と消費税も取られる 

 

 加えて最近では、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)などという目に見えない負担が課せられているということはご存じでしょうか? 

 

 これは再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等)の普及を促進するため、再エネによる電力を電力会社が高く買い取り、その費用を電気の利用者が負担する仕組みです。 

 

 電気料金と一緒に電気の使用量に応じて徴収されているのです。 

 

 そして残った可処分所得も、使えば10%の消費税がぶん取られる。 

 

 それでは貯蓄や投資もできないですよね。 

 

 つまり、年収が1200万円あったとしても、実はそれほどお金は貯まらないのです。 

 

■「子育て支援策」になっていない 

 

 児童手当廃止の問題は、このように実はそれほどお金持ちではない年収1200万円の家庭をさらに苦しめることになるということだけではありません。 

 

 実は優秀な子どもを育てるためには、お金のある人がお金をたくさん使って子どもを育てたほうがよいのです。 

 

 なぜならお金があれば塾に行かせることもできるし、普通の公立学校よりはきちんとした私立の学校に入れたほうが、優秀な子どもに育つ確率が上がるからです。 

 

 そして優秀な子どもほど、将来たくさんお金を稼げるようになり、優秀な納税者になる確率が高いのです。 

 

 ところが、児童手当を廃止してしまうと、年収1200万円くらいの家庭では、生活が苦しいので2人目の子どもを作るのをやめようとか、あるいは子どもそのものを作るのをやめようと考えてしまいます。 

 

 つまり年収1200万円くらいの家庭では、政府が「子どもをそれ以上作らなくてもいい」というメッセージを発していると感じてしまうわけです。 

 

 政府としては将来の優秀な納税者を生む芽を摘み、長い目で見れば自分で自分の首を絞めていることになってしまうわけです。 

 

■「億単位の金融資産を持つ人」は絞り取られない 

 

 そもそも年収1200万円を稼いでいる人は、管理職クラスで、残業手当もないけど毎日一生懸命働いて週末も仕事のことを考えているような、頑張っている人たちです。 

 

 本来はそういう人たちが安心してガンガン子どもを作れるくらいのお金を渡さなければいけないのです。 

 

 実際、児童手当の廃止によって削減された公費は、年間で370億円程度と言われています。 

 

 13兆円の財政赤字に比べれば大した金額ではありません。 

 

 今の日本政府の政策に対して国民から不満が出るのは、こういうところにあるのだと思います。 

 

 一生懸命働いて年収1200万円くらい稼いでいる人からは搾り取り、その一方で、億単位の金融資産を持っている人たちは、それほど苦労もせずに稼ぎ、なおかつ政府から搾り取られないという構図が出来上がっているのです。 

 

 

■投資にかかる税金は約20% 

 

 たとえば金融資産1億円を持っている人が、そのお金を米国のインデックス・ファンドに全てぶち込むと、それだけで年間300~400万円くらいの収入になるんです。 

 

 これらのインデックス・ファンドなら年利3~4%は当たり前ですし、全米の株式に投資するファンド(投資信託)や、全世界に投資する通称「オルカン(オール・カントリーの略)」などのファンドなら、年利で軽く10%を超えます(2024年3月末時点)。 

 

 1億円投資して年に1000万円、2億円の投資なら2000万円になります。 

 

 その2000万円の利益に対して、税金はなんと20%ちょっとしかかかりません。したがって1600万円弱が手元に残るわけです。特に働きもせず、全米のインデックス・ファンドに投資しただけで、です。 

 

 さらに金融資産が2億円ある上に、不動産を持っている人は、家賃もゼロになります。 

 

■年収1200万円の人は「高収入世帯」ではない 

 

 だったら、一生懸命働いて年収1200万円を稼いでいる人から搾り取るのではなく、金融資産を持っているお金持ちからたくさん取れよ、と誰もが思うのですが、いかんせん、日本の場合は金融資産を持っている人に対する税率が低いままなのです。 

 

 結局、年収1200万円の人は、一生懸命働いていても金融資産を2億円にすることはできません。先に計算したように、貯金をするにしても、月10万円くらいしかできないからです。年間で120万円、20年間貯めても2400万円です。だから年収1200万円は、決して「高収入世帯」ではないのです。 

 

 それでも65歳とか70歳になって退職するときには、年金も入りますから、そこそこの老後生活は送れるでしょう。 

 

 このように現在の政府の政策は、庶民がお金持ちになる道を閉ざしてしまっているのです。徳川時代から続く伝統で、国民が有産階級になれないように仕向けていると言っても過言ではありません。 

 

 

 

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ひろゆき(ひろゆき) 

2ちゃんねる創設者 

東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。 

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2ちゃんねる創設者 ひろゆき 

 

 

 
 

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