( 178060 )  2024/06/06 18:02:15  
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自動車の「墓場」イメージ(画像:写真AC) 

 

 2024年4月2日、テスラは2024年第1四半期の販売台数が38万6810台で、前四期比20%減、前年同期比9%減であったと発表した。 

 

【画像】えっ…! これが中国の「EV墓場」です(計10枚) 

 

 各メディアは、アナリストが同期の販売台数を45万台程度と予測していたことから、この傾向は電気自動車(EV)需要の軟化を示していると報じた。最近、EV販売の減速傾向は世界的に広がっており、テスラも例外ではなく、販売の減速に直面している。 

 

 テスラの決算によると、同期間の生産台数から販売台数を差し引いた納車前EV台数は初めて4万台を超え、4万6561台となった。これは生産台数の10%程度だが、2023年度は2~4%程度だったので、納車に至らなかった在庫が急増していることがわかる。 

 

 この急激な在庫増にテスラが苦慮している証拠に、大量のテスラEVが放置されているというユーチューブやSNSへの投稿が相次ぎ、注目を集めている。中国で増え続ける“EV墓場”のような光景だが、米国でも新たに“EV墓場”が出現するのか、その真相を探ってみた。 

 

セントルイスの地元メディア「フォックス2」5月1日付け記事の見出し。「チェスターフィールド・モールの外に何百台ものテスラ車が駐車している。なぜか?(Hundreds of Tesla vehicles parked outside Chesterfield Mall. Why?)」(画像:フォックス2) 

 

 最近、米国のSNSユーザーから頻繁に投稿されている内容によると、テスラのEV生産工場やサービスセンター付近に大量のテスラEVが放置されており、そうした光景の写真や動画がSNS上で拡散している。 

 

 EVの販売台数が減少するなか、生産されたものの行き場を失った大量の新車が屋根のない駐車場に放置されている光景は、中国で話題となった“EV墓場”を彷彿とさせる。現場を目の当たりにした人にとっては、異常な光景に映るに違いない。 

 

 SNSへの投稿には、具体的な場所や場所も書かれている。例えば、ミズーリ州セントルイス郊外では、チェスターフィールド・モールという閉鎖されたショッピングモールの駐車場に、約400台のテスラEVが放置されている(このうち58台がサイバートラックであることが確認されているようだ)。この場所から約2.5マイル(約4km)離れた場所にテスラのサービスセンターがあるようだ。 

 

 また、ニュージャージー州ローレンスビルのショッピングモールや、バージニア州リッチモンドの団地の駐車場などでも、大量のテスラEVが放置されているという報告が相次いでいる。 

 

 驚くべきことに、こうした光景は米国外でも確認されている。ドイツの有力紙『ベルリン・ツァイトゥング』によると、テスラ・ギガファクトリーから約37マイル(約60km)離れたベルリン郊外の旧東ドイツ空軍施設があった場所に、大量のテスラEVが放置されているという。 

 

 この施設には約5000台の車両を保管するのに十分なスペースがあり、衛星分析によると、テスラ・ギガファクトリーとこの施設の間を1時間に約40台のトレーラーが移動していたことが確認されている。また、トレーラーは1日に300~400回往復しており、テスラ工場で余剰在庫となったEVが数十km離れた空き地に放置されていたと報じられている。 

 

 

2024年5月23日発表。主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ) 

 

 ミズーリ州セントルイスの場合、大量のEVが放置されているショッピングモールの近くにあるテスラのサービスセンターには、135台を保管できるスペースがあるが、普段は半分程度しか使われていなかったようだ。サービスセンター近くのショッピングモール跡地には約400台が放置されているというから、通常70台程度だった在庫が短期間で数倍に増えたことになる。 

 

 米国市場でのEV販売失速を裏付けるデータとして、在庫の回転日数を見ると、乗用車の平均が78日であるのに対し、EVは136日であり、EVの回転率は 

 

「乗用車の2倍」 

 

近くまで悪化していることがわかる。 

 

 テスラに関しては、すぐに新モデルを投入できる見込みはなく、今後の販売はモデルYとモデル3に頼らざるを得ない。いずれも目新しさに欠け、車両価格を下げる以外に販売台数を飛躍的に伸ばせる要素はなく、見通しは暗い。今後、テスラの“EV墓場”が全米に増殖する可能性が高い。 

 

 世界的にEV販売が失速しているなか、テスラのようなEVメーカーが大量の在庫を抱え続ければ、“EV墓場”のような光景があちこちに出現することも考えられなくはない。EVメーカー各社は、需給を見越して抜本的な生産調整を迫られる局面に差し掛かっているのではないか。 

 

 EVの新型車開発の見直しや延期・中止の可能性も出てくるなか、最新の需給状況を読み解くことは、EV販売の減速に直面する今、喫緊の課題である。SNSに投稿され、世界中に拡散した大量のテスラEVの放置シーンは、こうした問題を端的に示すものであり、一種の警告として受け止めなければならない。 

 

アンリ・ブロッサム(自動車ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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