( 182920 )  2024/06/21 02:34:55  
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白バイとトラックが衝突、当時32歳の男性警官が死亡した事故現場(2021年9月、苫小牧市) 

 

 2021年9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…20日午後、検察は禁錮1年2か月を求刑し、結審しました。判決は、8月29日に言い渡されます。 

 

【写真を見る】死亡した警官の白バイや事故当時の現場の様子 

 

 起訴状などによりますと、砂川市の無職、谷口訓(さとし)被告56歳は、2021年9月13日、苫小牧市柏原の道道の信号機のない丁字路交差点で、運転していた大型トラックで右折しようとした際、反対車線を直進してきた白バイと衝突…白バイに乗っていた男性警察官(当時32歳)を死亡させた過失運転致死の罪に問われています。 

 

 この事故をめぐり、検察は、おととし3月、谷口被告を不起訴処分としましたが、検察審査会への申し立てを受けて再捜査した結果、去年5月8日付けで在宅起訴していました。 

 

 これまでの公判で弁護人、被告側は「時速120キロという高速のバイクの接近を予見し、回避することは不可能、被告に過失はない」と無罪を主張。 

 

 これに対し検察は「当時、白バイは警ら中で、赤色灯を点灯させながら118キロで走行していたが、トラックを見つけて88キロまで減速した。トラックは、右折先の反対車線に停止していた車両の内側を進行しようとして安全確認を怠り、事故が起きた」と指摘していました。 

 

 その後、北海道警察が事故防止に向けて、白バイに「最高速度は100キロ」とするよう通達していたことも判明。 

 

 検察は、白バイの速度118キロについて、警ら中であり、法律上は問題ないとしているものの、通達を20キロも超える速度で走行するほどの緊急性が白バイにあったのかなどは、説明していません。 

 

 また、これまでの公判では、事故当時、右から白バイ、左からトラックが走行してくるのが見える位置で一時停止、トラック側の車線に右折で合流しようとしていた男性の証人尋問、谷口被告への被告人質問などが行われ、それぞれ下記のように証言しています。 

 

■事故現場に乗用車で居合わせた男性の証言 

 

・白バイの赤色灯は点いていたが、サイレンの音は聞いていない 

・ドライブレコーダーでは、トラックがウィンカーを点けてたようだが(自分は)見えなかった 

・トラックは、真っ直ぐ行くだろうと思った 

・太陽がトラックの背にあり、白バイを照らしていた 

・衝突の瞬間は見ておらず「バチャーン」という音で気づいた 

・トラック運転手は事故直後「白バイを全く確認できていなかった」と自分に話した 

 

■谷口被告への被告人質問 

 

<弁護人とのやりとり> 

 

・直進の車両を2~3回、確認する中で、遠くに自転車やバイクのような“影”が見えただけ 

・あの距離なら曲がれると思って、右折した 

・(白バイと認識は?)ありません 

・(赤色灯は?)見えません 

・(サイレンは?)聞こえません 

 

・事故直後、気が動転していて、警察に「白バイに気づいてなかった」と話した 

・帰宅して落ち着いたら、遠くに見えていたことを思い出したので、証言を変えた 

・検察からは「見えなかったんだろ?見えた、見えないはどうでもいい」などとまくし立てられたが「最初は見えた」と話した 

・事故直後の状況は、はっきりとは覚えていない 

 

・あの日は仕事で、苫小牧市から雨竜町に向かっていた 

・週に1回ほど通る道、時速60キロほどで走行し、右折時は40キロほど 

・右折先の乗用車が停止線から出ていて、曲がり切れなさそうだと思い、やむなく内回りしたが、不適切だった 

 

<検察とのやりとり> 

 

・(影を確認してから、どれくらい?)4~5秒あった 

・(影を見てから、ずっと影を見続けた?)ずっと見ていたわけではない 

・(影が見えた場所は?)橋があって、カーブがあったところの先 

・(対向車の速度は?)わからない 

・(対向車との距離は?)わからない 

・(実況見分で、白バイが2回見えた旨の説明した?)覚えていない 

・(先に曲がろうとしたのは、なぜ?)影が見えて、あの距離なら曲がれるだろうと思った 

 

<裁判長とのやりとり> 

 

・(影のようなものは、どのように確認?)パッと見ではなく、正面を見て 

・(ハンドル切る直前の確認は?)記憶がないです… 

 

 こうして迎えた20日の公判では、亡くなった白バイ警官の妻も法廷に立ち「事故は、長女の9歳の誕生日の1週間前…夫婦で選んだプレゼントを『パパがくれたカバン』と、今も大切にしています。7歳の次女も七五三のお祝いを『パパが亡くなったことを知られたくない」と、当初は1人で撮るつもりが『やっぱり、4人で撮りたい』と、白バイにまたがるパパの写真と3人で撮りました」などと夫を亡くした後の2人の娘との暮らしについて語りました。 

 

 そして、事故の後「夫は警官である前に一人の人間なのに『金目当てで、検察審査会に申し立てた』などの心ないバッシングを受け、世間の注目を必要以上に浴びた。(その一方で)夫に白バイを見せてもらったという子どもが「白バイ隊員を目指しています。なれたら、一番に報告します」と言ってくれた。被告は事故について『覚えていない』と言って、どこか他人事。たった一度だけ謝罪に来ただけで、反省の態度も感じられない。厳正な処罰をお願いします」と涙ながらに訴えました。 

 

 このあと検察は「被告の『見えた』という表現は信用できず、安全確認を果たしたとは言えない。過失はある。サイレンを鳴らさないまま、118キロ出していたのは、違反車両に白バイの存在を察知させないためとも言えて、違法性なく、責められることもない。被告は誠実に事故に向き合わず、刑事責任は重い」として、禁錮1年2か月を求刑。 

 

 これに対し弁護人は「結果は重大だが、右折車が進行を阻まない義務、制限速度を超えている車を予見することも争いはないが、限界はあって、今回の速度は、通常考えられる速度ではない。今回、サイレンは点いてないし、赤色灯もドラレコでははっきりと確認できない。右折対応には問題あったが、あくまでも交通法規違反にとどまり、道交法違反の刑事罰とは無関係。過失は認められない」として、あらためて無罪を主張しました。 

 

 公判は、谷口被告が「今回の事故で亡くなられた被害者の方、遺族の方に申し訳なく思っております。反省しております、以上です」と陳述して結審し、判決は8月29日に言い渡されます。 

 

北海道放送(株) 

 

 

 
 

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