( 183708 )  2024/06/23 17:07:21  
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ガンプラの需要が増加し、品薄の状況が続いていることが社会問題化している。

バンダイスピリッツは生産能力を増強し、海外需要や転売の影響もあり、新しい工場が稼働することで品薄解消が期待される。

ガンプラは様々な映像作品に基づいた商品であり、その人気や進化が需要拡大の牽引になっている。

高齢化しつつある購入者層に加え、新しいファンも取り込んでおり、今年は「リバイバルキット」を発売する予定。

ただし、転売や高値での中古品販売が問題になっており、新工場の稼働による品薄の解消には不透明な要素もある。

真に購入したい人が適正価格で購入できる環境が求められる。

(要約)

( 183710 )  2024/06/23 17:07:21  
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ガンプラの元祖「144分の1 ガンダム」と、それを現在の技術でリメークした「リバイバルキット」を前に戦略を語るバンダイスピリッツの高橋誠執行役員(高橋寛次撮影) 

 

アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する人型兵器「モビルスーツ」のプラモデル(ガンプラ)の品薄が続いている。製造・販売するバンダイスピリッツはここ数年、年10%の目標を掲げて生産能力増強を続けてきたが、需要増に追いつかず、社会問題化した1980年代以来ともいえる深刻な状況だ。背景には79年の放映開始以来、次々と新たな映像作品が登場し、幅広い世代のファンを獲得してきたことがある。海外での需要増や転売の横行が品薄に拍車をかける。新しい工場が今年度内に稼働する予定で、品薄解消が期待される。 

 

【グラフィック】「ガンプラ」は多様なアニメ作品をベースにした商品群が特徴だ 

 

■製造会社「大変なご迷惑」 

 

「問屋にガンプラを頼んでも、10分の1とか2しか入荷できない。特に人気の商品は全然、入らなくなっちゃった」。東京都内の模型店経営者はこう打ち明ける。 

 

50年以上、地元の模型ファンに愛されてきた店の中には、今は生産されていない「レア」な商品を含め、戦車や自動車、電車などのプラモデルが整然と並ぶ。だが、数えるほどしかないガンプラの周りの棚だけは空きが目立つ。 

 

ガンプラを思うように仕入れられなくなったのは4~5年前。新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる時間が長くなり、「巣ごもり消費」が拡大し、プラモデル作りを楽しむ人が増えたようだ。バンダイスピリッツの高橋誠執行役員は「大変ご迷惑をかけている状況が続いている」と話す。 

 

品薄で想起されるのは80年代だ。82年1月には、千葉県のスーパーでガンプラを購入しようとエスカレーターに殺到した小中学生ら約250人が折り重なって倒れる事故が発生。都内のこの模型店にも、入荷日には店外に300メートルにもなる行列ができて、買いに来た子供の自転車置き場に困ったほどだったという。 

 

■映像作品と「進化」が牽引 

 

品薄の根幹にあるのは、ガンダムの根強い人気だ。第1作と同じ世界での出来事を描き、登場人物も共通する「宇宙世紀」シリーズに関しては今秋、米動画配信サービスのネットフリックスで「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」が始まる。宇宙世紀以外でも、2002年に放映が始まったテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの最新作の映画が、今年1月に公開された。アニメの提供開始に合わせて、登場するモビルスーツのプラモデルを発売することで、新しいファンを取り込んできた。映像作品は現在、第1作を手掛けた日本サンライズをルーツに持つバンダイナムコフィルムワークスが手掛けており、グループ内で連携を強めている。 

 

ガンプラは当初、全ての部品が同じ色で、塗装の必要性が大きかったが、1983年に部品ごとにあらかじめ必要な着色がされている商品が登場。はめ込みで組み立てられ、接着剤を使わなくてもよい商品も出た。造形や可動部分の洗練を含め、技術は進歩してきた。 

 

 

来年、45周年を迎えるが、購入者層は高齢化していないという。バンダイスピリッツの高橋氏は、「30~40代が最も多いが、特定の世代に偏っていないことが強みだ」と説明。「各シリーズにファンがいるほか、ガンプラ自体が進化しているので、かつてのファンがまた戻ってくる。コロナ禍で久々に作って、再びユーザーになってくれた方も多いようだ」と強調する。 

 

今年10月にはガンダム45周年を記念し、1980年に発売された「144分の1 ガンダム」を現在の技術でリメークした「リバイバルキット」(1320円)を発売する予定だ。 

 

■「未組み立て」1万円超も 

 

ガンプラの累計販売は、2023年3月末時点で7億6111万個。もっとも、40年以上の歴史の中で、流通の状況は大きく変わった。ほとんどが国内で製造されているのは当初からだが、輸出が増え、現在の海外売上高比率は50%超。東京・秋葉原の家電量販店の売り場や模型店では外国人観光客の姿が多く、インバウンド(訪日客)需要も大きいとみられる。 

 

背景には動画などで映像作品が世界に広がり、海外にもファンが増えたことがある。ネットフリックスでの新作放映もその流れに沿ったものといえる。 

 

そして、人気ゆえに問題となっているのが高値での転売だ。組み立てることが前提のプラモデルは本来、中古の「未組み立て品」が多く出回ることはないはずだが、インターネットで中古品を売買するフリマサイトでは、メーカー希望小売価格数千円の商品が1万円超で販売されていることが珍しくない。中古品を扱う模型店では棚に多くのガンプラが並ぶが、多くの商品は希望小売価格を上回る値段で販売されている。 

 

ガンプラはほとんどが静岡市の工場で生産されており、今年度内に同市内に設置される新工場は、25年度に本格稼働する予定だ。だが、バンダイスピリッツは新工場の生産能力などを公表しておらず、稼働によりどの程度、品薄が解消されるかは推し量りにくい状況にある。 

 

 

この模型店経営者は「以前は普通に入荷できたものが入らなくなった。これも時代の流れかもしれないが、納得できない感じもする」と語る。周りで高齢の経営者が亡くなると、誰も跡を継がず、閉店する模型店が多いという。 

 

プラモデル文化の重要な一翼を担う「街の模型店」の活性化のためにも、真に買いたい人が順当な価格で購入できる環境の整備が求められる。(高橋寛次) 

 

 

 
 

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