( 184285 )  2024/06/25 14:46:22  
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FNNプライムオンライン 

 

通常国会が閉幕した。今国会は、1月の国会開会前に、自民党安倍派の裏金問題が発覚し、実態解明、議員処分、再発防止の三段階の議論が閉幕まで続き、通常国会を通じて「政治とカネ」問題の議論が続いた。 

 

【画像】岸田政権の“通信簿”は? 

 

一方で、国民生活に影響が大きい法案が終盤国会で成立し、世論調査では、政治とカネを含めた政策評価について質問を行った。 

 

まず、「子ども子育て支援制度」を新設する法律が成立した。公的社会保険料を加入者平均で毎月450円上乗せすることを財源として「子ども子育て支援金」を新設し、児童手当を高校生まで拡充、所得制限の撤廃、妊娠・出産時に10万円相当の給付、「こども誰でも通園制度」など支援制度が拡充される。「子ども子育て支援金制度」について少子化対策としての期待を聞いたところ、「大いに期待」8.5%、「ある程度期待」30.4%、「あまり期待しない」36.9%、「全く期待しない」22.6%となった。 

 

【子ども子育て支援金制度への期待】 

大いに期待    8.5% 

ある程度期待   30.4% 

あまり期待しない 36.9% 

全く期待しない  22.6% 

 

出生率をめぐっては、6月に厚労省が、1人の女性が産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」を発表し、過去最低の1.20となったことが大きなニュースとなった。さらに都道府県別の出生率では、東京で0.99と1を割り込んだほか、東京隣接県の、神奈川1.13、千葉1.14、埼玉1.14なったほか、低いところでは、北海道1.06、宮城1.07、秋田1.10、岩手1.16、大阪1.19、京都1.11など地域的に低出生率が深刻化している。 

 

「子ども子育て支援制度」への期待を地域別に見ると、首都圏や北海道など出生率が低い地域での期待が低いことが明らかになった。一方で、同じく出生率が低い東北では、評価が拮抗する形となった。(下記表参照)こうした地域間の評価の濃淡の背景にとして、出産時10万円給付については、出産費用が高い大都市圏では、出産費用が低い地域に比べて恩恵が小さくなることが考えられる。また「保育待機児童」の問題は大都市圏で大きいとされることから、「こども誰でも通園制度」で問題が解決しないとみる傾向が大都市で大きいことなどが考えられる。 

 

また、男女別に見てみると「大いに期待」は男性で9.4%、女性で7.7%、「ある程度期待」男性29.4%、女性31.2%、「あまり期待しない」男性33.5%、女性40.0%、「全く期待しない」男性26.0%、女性19.4%となった。出産育児への男性の参加を進めていく動きの中、「期待する」「期待しない」どちらに置いても、男性で賛否の姿勢が女性に比べて強い傾向が見られた。 

 

「子ども子育て支援金」による給付の充実は、複数のメニューからなるものの、少子化問題の解決は各地域などでの事情が様々なほか、効果が形になるには、一定の年月がかかるため腰を据えた対応の継続が必要となる。 

 

【子ども子育て支援制度への期待 地域別】 

      期待する 期待しない 

北海道   27.5%   72.5% 

東北    47.3%   51.7% 

北関東   40.1%   58.9% 

南関東   34.1%   63.8% 

東京都   35.8%   61.8% 

北陸信越  31.9%   66.8% 

東海    40.7%   57.8% 

近畿    39.4%   59.8% 

中国    46.9%   50.6% 

四国    44.2%   54.0% 

九州沖縄  41.5%   55.4% 

 

【子ども子育て支援制度への期待 性別】 

大いに期待 やや期待 あまり期待しない 全く期待しない 

男性   9.4% 29.4% 33.5% 26.0% 

女性   7.7% 31.2% 40.0% 19.4% 

 

 

続いて、岸田総理が物価高対策としての定額減税への評価について見てみる。 

 

「大いに評価する」5.4%、「ある程度評価する」37.5%、「あまり評価しない」32.8%、「全く評価しない」21.9%との回答で、「ある程度評価」が最も多かったものの、「あまり」「全く」を合わせると、「評価しない」という答えが5割を上回った。 

 

「定額減税」は、9月の総裁再選をめざす岸田首相にとって、政権浮揚の切り札の一つとされていたため、定額減税の評価と政権支持の関係を見てみると、定額減税を「評価」する人の中で「政権支持」43.4%にとどまり、「政権支持しない」51.7%を下回り、定額減税を評価した人の中でも、政権を支持しない意見が高く、政権浮揚の下支え効果は大きくなかったと言える。加えて、定額減税を「評価しない」と答えた人の中では「政権支持」21.6%、「政権支持しない」74.8%となった。 

 

【定額減税への評価】 

大いに評価    5.4% 

ある程度評価   37.5% 

あまり評価しない 32.8% 

全く評価しない  21.9% 

 

【定額減税への評価と政権支持】 

      政権支持 政権不支持 

評価する  43.4%   51.7% 

評価しない 21.6%   74.8% 

 

もう一つ、岸田首相が支持率回復に期待をかけた「政治資金規正法改正」については、調査後に自民党案が改正規制法として成立した。「大いに評価」2.7%、「ある程度評価」27.7%、「あまり評価しない」32.6%、「全く評価しない」27.7%となり、総じて「評価」3割、「評価しない」6割との結果となった。 

 

こちらも政権支持への寄与の有無を見てみる。政治資金規正法の改正を「評価する」と答えた中で、「政権支持」との答えは59.9%、「政権支持しない」37.5%となり、改正規制法を「評価する」との答えと、「政権支持」の答えとの相関性が高かった。表裏一体で、改正規制法を「評価しない」と答えた人の中で「政権支持」は17.4%、「政権支持しない」78.8%と高い相関性が見られた。 

 

【政治とカネ 自民党修正案】 

大いに評価    2.7% 

ある程度評価   27.7% 

あまり評価しない 32.6% 

全く評価しない  27.7% 

 

【改正規正法への評価と政権支持】 

      政権支持  政権支持しない 

評価する  59.9%   37.5% 

評価しない 17.4%   78.8% 

 

 

今国会は、6月23日に閉幕した。こうした中、いま政権に実行を望む政策を質問した。国会が閉じ法改正を伴う政策実行はいったん休止となるため、いわば今国会で“積み残された”と有権者が考える政策だとも言える。 

 

最も取り組んで欲しい政策は「物価高対策」47.5%、次いで「賃上げ・雇用・景気」35.4%、「年金・医療・介護」33.9%、「子ども子育て支援」30.5%と続いた。国会の焦点だった「政治資金規正法改正」は14.7%にとどまり、以下「行革・財政再建」9.6%、「外交安保」9.3%、「環境・エネルギー」6.9%、「憲法改正」4.9%と続いた。 

 

5月に行った同質問との比較から、大きな変化があったのが「物価高対策」だった。「物価高対策」への要望は5月36.6%、6月47.5%と急進した。 

 

【岸田首相に取り組んで欲しい政策】 

            6月  5月 

物価高対策      47.5% 36.6% 

賃上げ・雇用・景気  35.4% 36.9% 

年金・医療・介護   33.9% 35.8% 

子ども・子育て    30.5% 29.0% 

政治資金規正法改正  14.7% 17.2% 

行革・財政再建    9.6%   10.6% 

外交安保       9.3%     10.9 % 

環境・エネルギー   6.9%      7.1 % 

憲法改正       4.9%      6.7 % 

 

岸田政権は、国会が事実上閉会となる6月21日、新たな物価高対策を発表した。岸田首相は「二段構えの対応をとる」と表明し、第1段として(1)電気ガス料金補助金を8月、9月、10月に限り限定実施することを「酷暑乗り切り緊急支援」として新たに発表、(2)ガソリン補助金の年内継続もあわせて公表した。 

 

さらに第2段として、年金世帯・低所得者世帯への追加給付金の支援検討を公表した。 

 

今後の詳細は、与党協議も交えた末に具体化する。 

 

ただし、岸田首相の総裁選任期が今年9月に迫っているなか、岸田再選となるのか、新総裁で刷新となるのか、誰が政策実現の舵取りをするのか、総裁選政局に今後突入することになる。 

 

西垣壮一郎 

 

 

 
 

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