( 187376 ) 2024/07/04 15:32:56 0 00 小池百合子都知事
小池百合子都知事(71)が先行し、前参議院議員の蓮舫氏(56)が追う展開となっている東京都知事選。劣勢を挽回したいなら、蓮舫氏は公約に“天下り撲滅”を加えたらどうか。何しろそれは、小池都知事がついぞメスを入れられなかった都の「暗部」なのだから――。【前後編の後編】
【写真を見る】天下りで多額の報酬を手にする元側近・野田数氏
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前編「『小池都知事は天下りを黙認、利用してきた』 元側近が外郭団体社長に就任…『誰もが疑問に思う人事』」では、小池氏の元特別秘書で、地域政党「都民ファーストの会」の代表を務めたこともある野田数(かずさ)氏(50)が、2019年に東京都の外郭団体の一つである「東京水道サービス株式会社」(当時)の社長に就任した件を紹介。
さらに、「ヤフージャパン」の社長、会長を務めた後、19年に東京都の副知事に就任した宮坂学氏(56)が、23年に新たに設立された外郭団体、一般財団法人「GovTech東京」の理事長に就任しており、小池氏の身内が「天下り天国」を享受していると報じた。
東京都には無数の外郭団体が存在し、それらが都幹部の天下り先になっていることは散々批判されてきた。そうした声に対して都はこれまで、
「東京都には天下りはありません。一人ひとりが能力に応じて再就職をしているだけです」
といった趣旨の主張をしてきた。
しかし、
「都の幹部が持っている経験やノウハウと、実際に天下っているポストの専門分野はほぼ関係ありません」
と、『築地と豊洲』(都政新報社)などの著書で小池都政を批判してきた元都庁幹部の澤章氏は言う。
「都庁には何十年にもわたって裏の掟のようなものがあり、局長級で定年退職すると、必ず外郭団体に天下り先が用意されます。局長でなくとも、各局の総務部長など、ある程度より上のランクで辞めた方もその対象です。誰がどこに行くかを決めているのは、総務局人事部です」
「天下りだ」と批判されるのを避けるために用意されている「建前」としては、
「まず、各外郭団体側から“次の理事長や社長にふさわしい人はいませんか”と都に照会が来る。それに対して総務局人事部が“こんないい人が今度定年退職します”と回答する。それを受けて外郭団体がポストを決め、その人と個人的にやり取りして理事長や社長に就任してもらう。都側も外郭団体側もそう説明するわけです」(同)
しかし、それはあくまでも表向きの話。
「毎年年度末になると、10人以上の局長さんがお辞めになりますが、その人たちが数カ月後には計算したように全員きっちりと天下りポストにはまっている。個別に対応しているだけで、そんなにぴったりポストが決まるはずがないですよね。実際は、人事部が事前に外郭団体側に人選を伝えるなど、裏で全て手を回しているのです」(同)
天下り先の役員報酬の支給状況
都幹部の中で最も優遇されるのが副知事。局長よりさらに上、最高ランクの天下り先が用意されるという。
「代々副知事を辞めた人が天下る“副知事ポスト”がいくつかあり、例えば『東京都競馬株式会社』や『株式会社東京臨海ホールディングス』、『東京地下鉄株式会社』(東京メトロ)などがそれにあたります」(同)
「東京都競馬」の役員の平均報酬支給額は約1895万円、「東京メトロ」は約1568万円となっている。
また、あの「はとバス」も東京都の外郭団体で、都交通局幹部の天下り先である。
実際に都の外郭団体に天下っている東京都OBは何と言うか。
「『再就職=悪』と言われればそれまでですが、だからといって再就職をゼロにすればいいのでしょうか」
そう話すのは、東京都元副知事で現在は「東京都競馬」社長を務めている多羅尾光睦(たらおみつちか)氏である。
「国家公務員や全国の自治体など、ものすごい数の人が再就職して社会が回り、世の中が動いているのも事実です。再就職先のポストにはそれなりのスキルと経験がいるわけで、長い間、公務の生活をしてきた中で蓄積したスキルと経験を生かすことは合理的なのではないか。それでも現役時代に蓄積したスキルと経験を生かすことが悪だと言われれば議論はできません」
さる外郭団体の社長を務めている元局長に聞いても、
「われわれのような行政での経験がある人間が、外郭団体で仕事をすることで、その団体の業務の実現達成度は高まっていると思います」
その言い分が多羅尾氏とほとんど一致しているのは奇妙という他ない。
「小池さんがこの状態(天下り)を放置している、というよりもこのやり方に何ら問題がないから特に手を打たないのでしょう。一般企業でも、定年後は子会社の役員になったりすることはある。都庁もそういうのと一緒で、私自身、都庁という大企業の子会社で社長として働いている、と認識しています」(同)
澤氏(前出)が言う。
「外郭団体に天下った人たちが“自分たちは天下りではない”と言うのは、もしかしたら本気でそう思っているのかもしれませんが、それは通りません。なぜなら、その人事の主導権を都庁が握っているからです。だからどう考えてもこれは天下りなのです」
そう話す澤氏自身も東京都で選挙管理委員会事務局長を務めた後、「東京都環境公社」という外郭団体の理事長として「天下って」いた。
「環境公社の理事長なんて肩書を見ると、すごいことをやっていそうに思うかもしれませんが、基本的にそれほどやることはありません。会議や理事会に出席したり、決裁の判を押したり。率直に言ってしまえば、理事長室で一日中ボケッとしていてもいいのです」
それで年収は1500万円だった。
「一般の感覚で言うと、どう考えても“都庁の役人て、いいよな”という数字ですよね。小池さんに尽くせば局長、副知事と出世でき、辞めた後の天下り先も用意される、となれば庁内で誰も彼女を批判できなくなるのは当然です」
前編「『小池都知事は天下りを黙認、利用してきた』 元側近が外郭団体社長に就任…『誰もが疑問に思う人事』」では、小池都知事の“身内”が天下り天国を享受している問題について、詳しく報じている。
「週刊新潮」2024年7月4日号 掲載
新潮社
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