( 188133 ) 2024/07/06 16:40:36 0 00 コンビニ各社の巨大おにぎりとは?(提供:ゲッティイメージズ)
コンビニのおにぎりが大型化している。より正確に表現すると、通常のおにぎりに加えて「大きなおにぎり」という新しい分野が成長し、活況を呈しているのだ。
【画像】すごい! ファミマやローソンの巨大おにぎりとその中身、セブンのレアな「山賊むすび」、天丼風のおにぎり、ラーメン風のおにぎり、げんこつおにぎり(全19枚)
大きなおにぎりは各社が近年になって販売し始めたのではなく、2000年ごろにすでに登場していた。当時から一部のファンに愛好されていたが、コロナ禍以降に物価が上がって売れるようになったという意見が、コンビニ各社から出ている。比較的少額で空腹を満たせるコストパフォーマンス(コスパ)意識が、大きなおにぎりにとって追い風になっているのだ。
若年層を中心に根強いタイムパフォーマンス(タイパ)志向も追い風だ。要は「食事にかける時間がもったいない」という意識の下、手早く空腹を満たせる大きなおにぎりが売れている。
大きなおにぎりの特徴として、複数の具材が入ったものが主流になっている点が挙げられる。例えばのり弁当や幕の内弁当といった「弁当のおにぎり化」はトレンドの一つである。
今回は、こうした大きなおにぎりについて、主要コンビニ各社の取り組みをまとめていく。
まずはファミリーマートから。同チェーンで大きなおにぎりを代表する商品は「SPAMむすび」(320円)だ。ファミリーマートでは、スパムを使ったおにぎりを沖縄県の宮古島限定で「ポーク玉子おむすび」として2000年に発売。その後、2007年には沖縄県全域に取り扱いを拡大し、今では定番として親しまれている。
こうした実績を踏まえ2021年8月に登場したSPAMむすびは、首都圏の一部店舗限定で発売したところ好評を博し、再販売を望む声が大きかったという。そこから、全国展開となった。宮古島から小さく展開して、ついには全国的なヒット商品へと出世したまれなケースである。
同商品には、1937年の発売以来、世界中で90億缶以上を販売した米ホーメルフーズ社の「SPAM」を使用。ご飯と具材の量は約160グラムと通常の約1.2倍。SPAMを丸ごと1枚入れているのが特徴だ。
ファミリーマートの広報は「大きなおむすびは若年層から中年層の男性をメインに売れているが、 SPAMむすびは女性の構成比も高い商品」と話し、幅広く売れている。SPAMを使ったおにぎりはハワイや沖縄で親しまれているが、南国リゾートを思わせる商品イメージが、女性からの人気につながっているようだ。
ファミリーマートは2023年7月に「大きなおむすび」シリーズを発売。ご飯と具材の量は、約180グラムと通常の約1.5倍ある。ツナと昆布など、複数の具材を楽しめるのが売りのシリーズだ。その他、ご飯とおかずが一体になったような「サンドおむすび」や「具だくさん!おむすび」というシリーズもあり、かなりラインアップが充実している。
ファミリーマートがこうしたラインアップを強化する背景には、消費者におけるコスト意識の高まりがある。広報は次のように話す。
「サイズの大きなおにぎりの販売構成比は、おにぎり全体の1割くらい。最近の物価高などの影響から、手ごろな価格で食べ応えのある商品の需要が伸長している。利用者にとって、付加価値が分かりやすい点が強みだ」
200~300円台で高価格帯といえる商品群だが、他のおにぎりや総菜、レジカウンター周りのホットスナック類と一緒に購入するケースが多いという。
ローソンでは、以前から大きなおにぎりを地域限定ではなく、一般的な商品として販売してきた。タイパに注目が集まる昨今の風潮を背景に、直近ではラインアップの強化を図っている。例えばもともとあった「具!おにぎり」シリーズから、4月に「具!おにぎり まるで明太のり弁」(322円)を発売した。のり弁のおかずである、白身フライとタルタルソース、玉子焼にちくわの磯辺揚げ、明太子を加え、おにぎりにしては「攻めた」商品だ。のり弁がワンハンドで、いつでもどこでもすぐに食べられる手軽さから、SNSで話題になった。
6月25日には「具!おにぎり まるで鶏めし重」(322円)を発売。だし醤油味のごはんに、鶏つくねとローストチキン、玉子焼、チキンステーキといった鶏づくしの贅沢感がある商品である。
同じシリーズでは、「具!おにぎり ポーク玉子 シーチキンマヨネーズ」(289円)が2022年11月より販売されている。具材は、ポークランチョン、玉子焼、シーチキンマヨネーズだ。沖縄風の商品で、食べ応えがある。
他にも、振るだけでドレッシングと具材が混じり、肉、野菜も取れるパスタサラダや、ながら食べがしやすくぜいたくな気分も感じられるスティック状のケーキ、30種類以上の栄養素が入ったベーカリーなどが、タイパを意識した商品群となっている。
一方、コスパに振った企画もある。6月には49周年を記念して、値段そのままで47%増量した、「盛りすぎチャレンジ」をおにぎり、チーズケーキ、サンドイッチ、カレーパンなどで実施。
おにぎりでは、「和風シーチキンマヨネーズ」(149円)、「チャーシューマヨネーズ」(160円)が販売された。
同じような外観の商品に見えても、ローソンではコスパというより、タイパを根底に商品開発しており、競合他社と設計の思想が異なる。今後の商品展開で、互いに全く違ったものになっていく可能性があり楽しみだ。
セブン-イレブンでは「大きめサイズのおにぎりに対する要望が多様化しており、ご飯の量だけでなく、具材もたっぷり食べたいという潜在ニーズに対応できるよう、設備を進化させている」(セブン&アイ・ホールディングス 広報)として、理想的な大きなおにぎりの在り方を探っている状況だ。中でも具材に特化した「新しい形態のおむすび」(同前)を鋭意開発中とのこと。
その一環か、首都圏の一部エリアで「弁当おむすび」と称した大きなおにぎりのテスト販売を始めている。若年層を狙った「ご飯の量」と「具材」を楽しむものに加え、高級な具材で訴求するものの双方を狙っている。
具体的には、現状「弁当おむすび 幕の内」「弁当おむすび チキン南蛮&豚生姜焼肉」(いずれも270円)をテスト販売している。前者は幕の内弁当をイメージし、つくねや焼き鯖、出汁巻き玉子ときんぴらごぼう、梅干しが入っている。重量は200グラムほどある。
チキン南蛮&豚生姜焼肉は、唐揚げを甘酢で味付けしたチキン南蛮と豚生姜焼、タルタルソースに焼きそばと、こちらも具だくさん。おにぎり1個で二度も三度もおいしい、ジャンクなぜいたくさを追求した。4月には「弁当おむすび のり弁」(同)という商品も販売していた。文字通りのり弁当をイメージし、白身フライ、明太子、磯辺揚げ、タルタルソースが具材だ。
その他にはオーソドックスなものとして「大きなおむすび 和風ツナマヨネーズ」(205円)を、かなり広い地域で取り扱っている。さらに山口・広島・島根の3県で販売している「山賊むすび」(340円)のように、地域ですでに好まれている特別なおにぎりを商品化したケースもある。
大きなおにぎり系商品の購入層は年齢を問わず男性が中心で、セブン&アイの広報によれば、やはりカップデリや他の総菜との組み合わせも見受けられるという。間食というよりもご飯としての利用が多いのは、他のコンビニと同様である。
NewDays(ニューデイズ)でも、もともと大きなおにぎりとして「大きなおにぎり」「サンドおむすび」シリーズを長く販売してきた。扱う商品の価格には幅があり、具材によってもさまざま。そのうち人気の商品では、1日に8000個が売れることもある。他チェーン同様に、おにぎり同士の買い合わせや、総菜と一緒に購入されるケースが多い。購買層は中高年男性が中心だが、具材によっては若年層、女性に人気の商品もある。
こうしたジャンルが人気の一方、コロナ禍以降、特に2023年からは原材料価格の高騰もあり、値上がりが顕著だ。運営するJR東日本クロスステーションのリテールカンパニー広報は「消費者のコスパに対する意識が高まっており、商品開発に力を入れている」と話す。
中でも注力するのが、6月に発売から3周年を迎えた「スゴおに」シリーズ。コロナ禍で楽しみの少ない日々に、少しでも明るさや楽しさ、面白さを感じてもらえればといった想いで開発したという。
スゴおにシリーズは既に70種類の商品を開発。SNSで反響があった商品、テレビで紹介された商品も多いという。ご当地フェアに合わせて、地域の名産品などをイメージした商品を開発することで、ニューデイズに新しく興味を持つ人が増えるきっかけになっている。
のり弁をおにぎり化した「のり弁にぎりました」、チキン照り焼きを使った「照りチキ ライスバーガー」、煮ホタテを3つ使用した「ホタテトリプル(ホタテ煮おにぎり)」、つけ麺のおにぎり化に挑んだ「とんこつ醤油つけ麺風おにぎり」など、スゴおにシリーズの発想は自由だ。他にも、たこ焼きやベーコンエッグをおにぎりにした、アバンギャルドな商品であふれている。
四角い手軽なミニ弁当風の「箱おに」というシリーズもあり「天丼風」「チキンカツ&タルタルソース」などをこれまでに発売している。2024年からは新しく、複数の具材を包んだ「げんこつおにぎり」を販売。「ツナマヨ・昆布・野沢菜」「豚の生姜焼き・野沢菜・マヨネーズ」といった組み合わせを展開している。
コンビニ各社の大きなおにぎりはコロナ禍で進化し、消費者のコスパ・タイパ志向に対応しながら、楽しさと新しさを追求したラインアップを拡充している。複数の具材を入れたり、サンドや箱型にしたり、弁当をワンハンドで食べられるように握ったりと、従来のおにぎりの常識を超越しつつある。
もちろん、従来型のおにぎりも健在だ。欧州、特にフランスではおにぎりブームが起きており、インバウンドのニーズも期待できるだろう。従来型に加え、成長軌道に乗る大きなおにぎりを中心に、コンビニおにぎりのさらなる成長に期待したい。
(長浜淳之介)
ITmedia ビジネスオンライン
|
![]() |